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14話 お出かけ その1
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突然現れた王太子殿下。あの貴族街の庭園での婚約宣言以来、1週間ぶりに対面した形になってる。うわ……顔が赤くなってハルト様のお顔をまともに見れない。
「いきなり訪ねてしまって申し訳なかった」
「いえ……とんでもないことでございます、ハルト様」
「そう言ってもらえると助かる。そこで突然なんだがシエル……すまないが少し散歩をしないか?」
「散歩……でございますか?」
1週間ぶりの再会……ハルト様から散歩のご依頼が来た。もちろん断るつもりなんてないけれど、これは単純なデートと捉えてもいいのかしら? さすがにまだデートは早いかな?
「畏まりました。私でよろしければ、ご一緒いたします」
「ああ、ありがとう。では、早速参ろうか」
「いってらっしゃいませ。シエル様、ハルト様」
メルレーンは一切の淀みなく私とハルト様を見送った。なんだか最初から、こうなることを予期していたみたいに……。
──────
「あの、ハルト様……」
「なんだ、シエル?」
「アクアマイトの領地ではありますが……私とその……並んで歩いても大丈夫なのでしょうか?」
既に婚約宣言も出ているんだから、今更といえば今更ではあるんだけど……。それでもなぜか、ハルト様の隣を歩くのは緊張してしまう。
「問題はないと思うぞ。護衛だって万全の準備をしてくれている。君が嫌ではないのなら」
「嫌だなんて……そんなことあるはずがありません」
「それならよかった」
ハルト様は私の本心からの言葉を聞いて、とても喜んでいるようだった。こういうハルト様のお顔を見てしまうと、よからぬ噂が立ってしまっても仕方ないで済ませられてしまうのよね。なんていうのか、心が大きくなるというか。
ハルト様がおっしゃってる護衛の方々も、姿は一切見えないけれど、きっと影の如く周囲に展開してるんでしょうね。おそらくその内の一人はメルレーンなんだろうけど、王太子殿下の護衛は正体も知られたら駄目だろうから、ここは敢えて聞かないでおくわ。
「この1週間はそれなりに忙しかった」
「やはりそうでしたか……」
伯爵令嬢との婚約……各方面の貴族たちもそうだけど、なんと言ってもランパード家の交渉が大変なように思うし。私も国王陛下へのご挨拶をしなくちゃならないんだろうし……。あ、眩暈が……。
「だが、シエルと一緒になれることを考えると、それだけで全てが楽に思えてくるから不思議だ。君は本当にかけがえのない女性だよ」
「ハルト様……うれしいです」
貴族街の庭園以来の接吻……彼の言葉に感動した私は、今度は自分から行っていた。
「いきなり訪ねてしまって申し訳なかった」
「いえ……とんでもないことでございます、ハルト様」
「そう言ってもらえると助かる。そこで突然なんだがシエル……すまないが少し散歩をしないか?」
「散歩……でございますか?」
1週間ぶりの再会……ハルト様から散歩のご依頼が来た。もちろん断るつもりなんてないけれど、これは単純なデートと捉えてもいいのかしら? さすがにまだデートは早いかな?
「畏まりました。私でよろしければ、ご一緒いたします」
「ああ、ありがとう。では、早速参ろうか」
「いってらっしゃいませ。シエル様、ハルト様」
メルレーンは一切の淀みなく私とハルト様を見送った。なんだか最初から、こうなることを予期していたみたいに……。
──────
「あの、ハルト様……」
「なんだ、シエル?」
「アクアマイトの領地ではありますが……私とその……並んで歩いても大丈夫なのでしょうか?」
既に婚約宣言も出ているんだから、今更といえば今更ではあるんだけど……。それでもなぜか、ハルト様の隣を歩くのは緊張してしまう。
「問題はないと思うぞ。護衛だって万全の準備をしてくれている。君が嫌ではないのなら」
「嫌だなんて……そんなことあるはずがありません」
「それならよかった」
ハルト様は私の本心からの言葉を聞いて、とても喜んでいるようだった。こういうハルト様のお顔を見てしまうと、よからぬ噂が立ってしまっても仕方ないで済ませられてしまうのよね。なんていうのか、心が大きくなるというか。
ハルト様がおっしゃってる護衛の方々も、姿は一切見えないけれど、きっと影の如く周囲に展開してるんでしょうね。おそらくその内の一人はメルレーンなんだろうけど、王太子殿下の護衛は正体も知られたら駄目だろうから、ここは敢えて聞かないでおくわ。
「この1週間はそれなりに忙しかった」
「やはりそうでしたか……」
伯爵令嬢との婚約……各方面の貴族たちもそうだけど、なんと言ってもランパード家の交渉が大変なように思うし。私も国王陛下へのご挨拶をしなくちゃならないんだろうし……。あ、眩暈が……。
「だが、シエルと一緒になれることを考えると、それだけで全てが楽に思えてくるから不思議だ。君は本当にかけがえのない女性だよ」
「ハルト様……うれしいです」
貴族街の庭園以来の接吻……彼の言葉に感動した私は、今度は自分から行っていた。
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