14 / 46
14話 お出かけ その1
しおりを挟む
突然現れた王太子殿下。あの貴族街の庭園での婚約宣言以来、1週間ぶりに対面した形になってる。うわ……顔が赤くなってハルト様のお顔をまともに見れない。
「いきなり訪ねてしまって申し訳なかった」
「いえ……とんでもないことでございます、ハルト様」
「そう言ってもらえると助かる。そこで突然なんだがシエル……すまないが少し散歩をしないか?」
「散歩……でございますか?」
1週間ぶりの再会……ハルト様から散歩のご依頼が来た。もちろん断るつもりなんてないけれど、これは単純なデートと捉えてもいいのかしら? さすがにまだデートは早いかな?
「畏まりました。私でよろしければ、ご一緒いたします」
「ああ、ありがとう。では、早速参ろうか」
「いってらっしゃいませ。シエル様、ハルト様」
メルレーンは一切の淀みなく私とハルト様を見送った。なんだか最初から、こうなることを予期していたみたいに……。
──────
「あの、ハルト様……」
「なんだ、シエル?」
「アクアマイトの領地ではありますが……私とその……並んで歩いても大丈夫なのでしょうか?」
既に婚約宣言も出ているんだから、今更といえば今更ではあるんだけど……。それでもなぜか、ハルト様の隣を歩くのは緊張してしまう。
「問題はないと思うぞ。護衛だって万全の準備をしてくれている。君が嫌ではないのなら」
「嫌だなんて……そんなことあるはずがありません」
「それならよかった」
ハルト様は私の本心からの言葉を聞いて、とても喜んでいるようだった。こういうハルト様のお顔を見てしまうと、よからぬ噂が立ってしまっても仕方ないで済ませられてしまうのよね。なんていうのか、心が大きくなるというか。
ハルト様がおっしゃってる護衛の方々も、姿は一切見えないけれど、きっと影の如く周囲に展開してるんでしょうね。おそらくその内の一人はメルレーンなんだろうけど、王太子殿下の護衛は正体も知られたら駄目だろうから、ここは敢えて聞かないでおくわ。
「この1週間はそれなりに忙しかった」
「やはりそうでしたか……」
伯爵令嬢との婚約……各方面の貴族たちもそうだけど、なんと言ってもランパード家の交渉が大変なように思うし。私も国王陛下へのご挨拶をしなくちゃならないんだろうし……。あ、眩暈が……。
「だが、シエルと一緒になれることを考えると、それだけで全てが楽に思えてくるから不思議だ。君は本当にかけがえのない女性だよ」
「ハルト様……うれしいです」
貴族街の庭園以来の接吻……彼の言葉に感動した私は、今度は自分から行っていた。
「いきなり訪ねてしまって申し訳なかった」
「いえ……とんでもないことでございます、ハルト様」
「そう言ってもらえると助かる。そこで突然なんだがシエル……すまないが少し散歩をしないか?」
「散歩……でございますか?」
1週間ぶりの再会……ハルト様から散歩のご依頼が来た。もちろん断るつもりなんてないけれど、これは単純なデートと捉えてもいいのかしら? さすがにまだデートは早いかな?
「畏まりました。私でよろしければ、ご一緒いたします」
「ああ、ありがとう。では、早速参ろうか」
「いってらっしゃいませ。シエル様、ハルト様」
メルレーンは一切の淀みなく私とハルト様を見送った。なんだか最初から、こうなることを予期していたみたいに……。
──────
「あの、ハルト様……」
「なんだ、シエル?」
「アクアマイトの領地ではありますが……私とその……並んで歩いても大丈夫なのでしょうか?」
既に婚約宣言も出ているんだから、今更といえば今更ではあるんだけど……。それでもなぜか、ハルト様の隣を歩くのは緊張してしまう。
「問題はないと思うぞ。護衛だって万全の準備をしてくれている。君が嫌ではないのなら」
「嫌だなんて……そんなことあるはずがありません」
「それならよかった」
ハルト様は私の本心からの言葉を聞いて、とても喜んでいるようだった。こういうハルト様のお顔を見てしまうと、よからぬ噂が立ってしまっても仕方ないで済ませられてしまうのよね。なんていうのか、心が大きくなるというか。
ハルト様がおっしゃってる護衛の方々も、姿は一切見えないけれど、きっと影の如く周囲に展開してるんでしょうね。おそらくその内の一人はメルレーンなんだろうけど、王太子殿下の護衛は正体も知られたら駄目だろうから、ここは敢えて聞かないでおくわ。
「この1週間はそれなりに忙しかった」
「やはりそうでしたか……」
伯爵令嬢との婚約……各方面の貴族たちもそうだけど、なんと言ってもランパード家の交渉が大変なように思うし。私も国王陛下へのご挨拶をしなくちゃならないんだろうし……。あ、眩暈が……。
「だが、シエルと一緒になれることを考えると、それだけで全てが楽に思えてくるから不思議だ。君は本当にかけがえのない女性だよ」
「ハルト様……うれしいです」
貴族街の庭園以来の接吻……彼の言葉に感動した私は、今度は自分から行っていた。
0
お気に入りに追加
3,423
あなたにおすすめの小説
【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ
水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。
ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。
なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。
アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。
※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います
☆HOTランキング20位(2021.6.21)
感謝です*.*
HOTランキング5位(2021.6.22)
これで最後ですから覚悟してくださいませ、旦那様!
矢野りと
恋愛
『離縁しましょう、旦那様』
『なぜいきなりそんな事を言うんだっ!今まで上手くやっていたのに、』
『違いますよ、私が我慢していただけですから』
私は愛する夫にさらりと離縁を申し出る。目を見開き固まっている夫にとっては青天の霹靂だったに違いない。
良き妻であろうとしてずっと我慢していた。急な仕事という遊びも、騎士の妻なら笑って見過ごすことも必要だと周囲から言われていたから。それに悔しいけれど愛しているからこそ……見ないふりをしていた。
でも、時代は変わりつつある。もう妻だけが耐え忍ぶ時代はいつか終わるだろう。
だから、私は未来のために動くことを決めた。
……愛しているからこそ変わって欲しい。
妻を心から愛しているのに悪さをしてしまった夫と、ある日突然に最終通告を突きつける妻のお話です。
※この作品の設定・世界観は架空のものです。
※話の内容が無理だなと思ったらご自衛のほどよろしくお願い致します。
※ネタバレ配慮は連載中のみ。
国外脱出を計画していた侯爵令嬢は大嫌いな王子に断罪されたので予定を前倒しして修道院(の傍の隣国)へと旅立った。見物の為に半年で帰国しましたが
竹井ゴールド
恋愛
卒業パーティーで婚約破棄された侯爵令嬢は心の中で婚約者を奪ってくれた男爵令嬢に感謝した。
婚約者の王子の事を心の中でナルシストクズと呼ぶくらい大嫌いだったからだ。
だが、重要なのはここからだ。
何故なら、この婚約破棄は王子の独断なのだから。
国王がひっくり返すに決まってる。
なので侯爵令嬢は国王が帰国する前に・・・
【2022/10/26、出版申請、11/11、慰めメール】
【2022/10/28、24hポイント1万2400pt突破】
【2023/3/17、しおり数110突破】
幸せなのでお構いなく!
棗
恋愛
侯爵令嬢ロリーナ=カラーには愛する婚約者グレン=シュタインがいる。だが、彼が愛しているのは天使と呼ばれる儚く美しい王女。
初対面の時からグレンに嫌われているロリーナは、このまま愛の無い結婚をして不幸な生活を送るよりも、最後に思い出を貰って婚約解消をすることにした。
※なろうさんにも公開中
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
妹がいるからお前は用済みだ、と婚約破棄されたので、婚約の見直しをさせていただきます。
あお
恋愛
「やっと来たか、リリア。お前との婚約は破棄する。エリーゼがいれば、お前などいらない」
セシル・ベイリー侯爵令息は、リリアの家に居候しているエリーゼを片手に抱きながらそう告げた。
え? その子、うちの子じゃないけど大丈夫?
いや。私が心配する事じゃないけど。
多分、ご愁傷様なことになるけど、頑張ってね。
伯爵令嬢のリリアはそんな風には思わなかったが、オーガス家に利はないとして婚約を破棄する事にした。
リリアに新しい恋は訪れるのか?!
※内容とテイストが違います
凡庸で取り柄のない令嬢は国母に相応しくないので婚約破棄ですか? 別に構いませんが呪われてる王子を隣で癒やしてた私を手放して大丈夫なんですか?
竹井ゴールド
恋愛
卒業パーティーで高スペックの王太子は伯爵令嬢に婚約破棄を突き付ける。
理由は伯爵令嬢が凡庸で、何を取っても平均点だからだ。
こうして婚約破棄された伯爵令嬢は自ら修道院へと旅立ったが、凡庸な伯爵令嬢が王太子の婚約者になったのには理由があり・・・
【2022/9/12、出版申請、9/28、慰めメール】
【2022/9/14、24hポイント1万5200pt突破】
【2022/11/13、出版申請(2回目)、12/5、慰めメール】
回帰令嬢ローゼリアの楽しい復讐計画 ~拝啓、私の元親友。こまめに悔しがらせつつ、あなたの悪行を暴いてみせます~
星名こころ
恋愛
ルビーノ公爵令嬢ローゼリアは、死に瀕していた。親友であり星獣の契約者であるアンジェラをバルコニーから突き落としたとして断罪され、その場から逃げ去って馬車に轢かれてしまったのだ。
瀕死のローゼリアを見舞ったアンジェラは、笑っていた。「ごめんね、ローズ。私、ずっとあなたが嫌いだったのよ」「あなたがみんなに嫌われるよう、私が仕向けたの。さようならローズ」
そうしてローゼリアは絶望と後悔のうちに人生を終えた――はずだったが。気づけば、ローゼリアは二年生になったばかりの頃に回帰していた。
今回の人生はアンジェラにやられっぱなしになどしない、必ず彼女の悪行を暴いてみせると心に誓うローゼリア。アンジェラをこまめに悔しがらせつつ、前回の生の反省をいかして言動を改めたところ、周囲の見る目も変わってきて……?
婚約者候補リアムの協力を得ながら、徐々にアンジェラを追い詰めていくローゼリア。彼女は復讐を果たすことはできるのか。
※一応復讐が主題ではありますがコメディ寄りです。残虐・凄惨なざまぁはありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる