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13話 各地の反応 その2

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 メイドのメルレーンは、おおよそその立場の者ではない振る舞いをしながら話していた。なんだろう……ぱっと見はどこかの諜報員とか、裏稼業の人みたいに隙がないように見えちゃう。


「お嬢様とハルト王太子殿下の婚約話は、アクアマイト家にゆかりのある方々以外からは、受け入れられていないのが現状です」

「ああ……やっぱりね……そうだとは思っていたけれど……」


 古株のアクアマイト家系とはいえ、貴族称号は伯爵。その上には侯爵や公爵といった上級貴族だって居るんだから……その人達を差し置いての婚約となれば、快く思われなくても仕方ないわね。

「仕方ないわね。アンネリーズ様とかミオナ様……色々な方々がハルト王太子殿下との婚約を望んでいたから」

「お嬢様、その方々に挨拶をしに行かれては如何でしょうか? 申し訳ございませんでした、と」

「考えてはみるけれど、あんまり良い顔はされないでしょうね……」

「そうですね。しかし、シエルお嬢様がお気に病む必要は全くない事態です。なにせ、ハルト王太子殿下がお嬢様との結婚を望んでいるのですから」


 確かに……言ってしまえばそうなんだけれど。


「シグマとアンナの二人に関しては、表立って何かを表明していることはありませんでした。これ以上、お嬢様に対して何かをすれば、ハルト様の逆鱗に触れますので、当然のことではありますが」


「そうなんだ、そっちは上手く収束してくれそうね。となると、やっぱりハルト様との婚約についてか~」


 とても嬉しい事柄のはずなんだけど、簡単には行かない問題が見えて来ているのは明白。メルレーンが提案した色々な方々への挨拶回りは必要になってきそうね……。


────


 そんなことを考えていた矢先、玄関のベルが大きく鳴り響いた。誰かが来たみたい。執事が対応に当たっているけれど、とても恐縮した雰囲気になっていた。


「どうしたのかしら?」

「お嬢様は意外にも洞察力に乏しいご様子。この状況では、一人しか居られないでしょう」

 とても失礼な一言を飛ばしてきたメルレーン。どうせ洞察力に乏しいですよ~だ。わざと大袈裟に口を尖らせた私を見て、メルレーンは保護者のようにクスクスと笑っていた。それから玄関から中へと入ってくる人物を確認する。


「やあ、シエル。突然、訪問してしまって済まない」

「ハルト王太子殿下……!?」


 神出鬼没と言えばいいのかしら……いきなりの王太子のご訪問に、私は度肝を抜かされた。それから、メルレーンの正体に関しても少し分かった気がした……。

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