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12話 各地の反応 その1
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貴族街でのハルト王太子殿下による、まさかの婚約宣言。その事実は、とてつもない大事件として、一夜の内に王国中に知れ渡ったらしい。実際には、情報が錯綜しており、相手は誰なのかとか色々と混乱も多かったみたいだけど。
ハルト様からの告白と言う、夢のような時間が過ぎてから1週間が経過した。私はアクアマイト家が収める領地、サクサール地方の本邸に帰還している。本邸へ帰還するときもハルト様は一緒に付いて来てくださった。それから、父さんと母さんに同時に挨拶まで済ませるという芸当を行ったの。
……なんというか、とても手際が良かったのだけは覚えているわ。
「シエル! シグマ様からの婚約破棄はとても残念だけれど、あのハルト王太子殿下からの婚約なんですよ? もっと喜びなさい!」
「お母様……喜んでいるから……」
「いやはや、我が娘ながら、まさかこのようなことになろうとは」
私よりも両親の二人の方が信じられないという態度を見せていたわね。まあ、アクアマイト家は古くからある名家の一つではあるけれど、いくらなんでも次期国王の方と付き合うなんてできるわけないし。そういうこともあってか、父さんも母さんも非常に取り乱していたのは覚えている。
「はあ~~~、なんか信じられないけど、私、ハルト様と婚約締結するのよね」
「左様でございますね。とても喜ばしいことですわ」
私はロビーのソファで考え事をしていたけれど、いつの間にか隣にはメルレーンの姿があった。
「メルレーンさんは冷静よね。この屋敷のほとんどの人が取り乱している中でも」
ハルト様を私と一つ屋根の下に配置したのも彼女だし、メルレーンは色々と謎な人物ね。一介のメイドって感じがしないわ。私とハルト様の婚約を心から喜んでいるのは分かるけど、あんまり焦っている様子はないし。
「冷静だなんて、そんなことはありませんよ。私も喜びで、今にも涙が出て来そうになります」
「それは本当なんだろうけど、どこか余裕があるのよね。まあいいわ、それよりも……」
メルレーンのことは気になるけれど、考えることは他にもあったりする。それは周囲の反応だ。両親やメルレーンを含めて、アクアマイト家の者は喜んでくれているみたいだけれど、その他の反応は見るのが怖かったりする。なんせ、何年も婚約を断ってきた王太子を私が奪った形になっているんだし……。
「ねえ、メルレーンさん。私と王太子殿下の婚約が決まったわけだけど……他の人たちの反応って聞いている?」
「はい、聞いております。お知りになりたいですか?」
メルレーンは一瞬、躊躇うような素振りを見せていた。あんまりよくない情報もありそうね。でも、それは王太子の婚約者として聞いておかなくちゃ。
「聞かせて。それが私の使命だと思うし」
「畏まりました」
メルレーンは静かに頷くと、ゆっくりとした動作で口を開き始めた。
ハルト様からの告白と言う、夢のような時間が過ぎてから1週間が経過した。私はアクアマイト家が収める領地、サクサール地方の本邸に帰還している。本邸へ帰還するときもハルト様は一緒に付いて来てくださった。それから、父さんと母さんに同時に挨拶まで済ませるという芸当を行ったの。
……なんというか、とても手際が良かったのだけは覚えているわ。
「シエル! シグマ様からの婚約破棄はとても残念だけれど、あのハルト王太子殿下からの婚約なんですよ? もっと喜びなさい!」
「お母様……喜んでいるから……」
「いやはや、我が娘ながら、まさかこのようなことになろうとは」
私よりも両親の二人の方が信じられないという態度を見せていたわね。まあ、アクアマイト家は古くからある名家の一つではあるけれど、いくらなんでも次期国王の方と付き合うなんてできるわけないし。そういうこともあってか、父さんも母さんも非常に取り乱していたのは覚えている。
「はあ~~~、なんか信じられないけど、私、ハルト様と婚約締結するのよね」
「左様でございますね。とても喜ばしいことですわ」
私はロビーのソファで考え事をしていたけれど、いつの間にか隣にはメルレーンの姿があった。
「メルレーンさんは冷静よね。この屋敷のほとんどの人が取り乱している中でも」
ハルト様を私と一つ屋根の下に配置したのも彼女だし、メルレーンは色々と謎な人物ね。一介のメイドって感じがしないわ。私とハルト様の婚約を心から喜んでいるのは分かるけど、あんまり焦っている様子はないし。
「冷静だなんて、そんなことはありませんよ。私も喜びで、今にも涙が出て来そうになります」
「それは本当なんだろうけど、どこか余裕があるのよね。まあいいわ、それよりも……」
メルレーンのことは気になるけれど、考えることは他にもあったりする。それは周囲の反応だ。両親やメルレーンを含めて、アクアマイト家の者は喜んでくれているみたいだけれど、その他の反応は見るのが怖かったりする。なんせ、何年も婚約を断ってきた王太子を私が奪った形になっているんだし……。
「ねえ、メルレーンさん。私と王太子殿下の婚約が決まったわけだけど……他の人たちの反応って聞いている?」
「はい、聞いております。お知りになりたいですか?」
メルレーンは一瞬、躊躇うような素振りを見せていた。あんまりよくない情報もありそうね。でも、それは王太子の婚約者として聞いておかなくちゃ。
「聞かせて。それが私の使命だと思うし」
「畏まりました」
メルレーンは静かに頷くと、ゆっくりとした動作で口を開き始めた。
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