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9話 怒りのハルト その2
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「シグマ・ブリーテン」
「は、はいい……」
「シエル・アクアマイトに対する公の場での婚約破棄、加えて今回の土下座の強要による嫌がらせ行為。これらは決して許されるものではない。当主であるアグマ・ブリーテン侯爵にも報告の上……」
「お、お待ちください殿下! ち、父上は関係のない話のはず……! これはあくまでも、僕とシエルとの間での出来事なんですから……!」
「何を今さら言っている? このような事態を巻き越しておいて、個人的な問題だけで済むと考えていたのか?」
ハルト王太子殿下の剣幕はとても恐ろしいものだった。本当に、ここまで怒っているハルト様を見たことはない。それだけ、私に対するシグマとアンナの嫌がらせを怒っているってことよね? そうだとしたら、こんなに喜ばしいことはないわ。また、ご迷惑をお掛けしたことは申し訳ないけれど。
それにしても、シグマは本当に個人的な問題で済むって思っていたのかしら? それだったら平和ボケにも程があるわ。ますます、こんな人と婚約関係にあったことが信じられないっていうか……。婚約破棄をした時点で、必ず両家に話は向かうのに。まあ、侯爵令息の権力でアクアマイト家には何も言わせない予定だったんだろうけど。
私がそんなことを考えている間にも、ハルト王太子殿下の声は貴族街に響いていた。シグマとアンナの二人からすれば公開処刑のようなものね。前のパーティ会場では公開処刑になるのは躊躇したけど、さすがに今回は何も思わないわ。
「今後しばらくの間、お前たち二人は自らの領地から出ることを禁ずる。これを破ればどうなるか……慎重に考えて行動せよ」
「か、畏まりました……」
シグマとアンナの二人は生気を完全に吸われた抜け殻のようになっていた。それだけ、ハルト様の罵声が効いたってことでしょうね。ハルト様の最後の言葉は、おそらく私に近づけさせない為のもの……それを破れば、家系ごと王家に潰されるか、追放される可能性もあるんでしょうね。
実際の罰が二人に下るのは少し先のことだけど、どんな風になるのかしら……今から気になってしまうわ。
「シエル、身体は大丈夫か?」
「はい、問題ございません。ハルト様……あの、なんてお礼を申し上げていいのか………」
振り向いたハルト様の顔を見て、私は嬉しさの余り言葉が出て来なかった。本当は言い尽くせないくらいの感謝をしたいんだけれど。
「君には今後、安全を保障するよ。これは王太子からの約束だ」
「ハルト様……その、お言葉はとても嬉しいのですが……他の貴族も見ている状況でして……」
私は一介の伯爵令嬢……ハルト様は次期国王が確実の国家のトップになられるお方だ。私の感情とは別に、貴族街の庭園で派手な演出は控えた方がいいのは確かだった。しかし……
「そんなことは関係ないさ、シエル。最終的には当人同士の問題なんだから」
「……えっ? ハルト様……?」
その瞬間、何が起きたのかわからなかった……ただ、遠くに立っていたメイドのメルレーンが「あらあら」と笑っていたことは覚えている。
……私はハルト様に唇を奪われていた。
「は、はいい……」
「シエル・アクアマイトに対する公の場での婚約破棄、加えて今回の土下座の強要による嫌がらせ行為。これらは決して許されるものではない。当主であるアグマ・ブリーテン侯爵にも報告の上……」
「お、お待ちください殿下! ち、父上は関係のない話のはず……! これはあくまでも、僕とシエルとの間での出来事なんですから……!」
「何を今さら言っている? このような事態を巻き越しておいて、個人的な問題だけで済むと考えていたのか?」
ハルト王太子殿下の剣幕はとても恐ろしいものだった。本当に、ここまで怒っているハルト様を見たことはない。それだけ、私に対するシグマとアンナの嫌がらせを怒っているってことよね? そうだとしたら、こんなに喜ばしいことはないわ。また、ご迷惑をお掛けしたことは申し訳ないけれど。
それにしても、シグマは本当に個人的な問題で済むって思っていたのかしら? それだったら平和ボケにも程があるわ。ますます、こんな人と婚約関係にあったことが信じられないっていうか……。婚約破棄をした時点で、必ず両家に話は向かうのに。まあ、侯爵令息の権力でアクアマイト家には何も言わせない予定だったんだろうけど。
私がそんなことを考えている間にも、ハルト王太子殿下の声は貴族街に響いていた。シグマとアンナの二人からすれば公開処刑のようなものね。前のパーティ会場では公開処刑になるのは躊躇したけど、さすがに今回は何も思わないわ。
「今後しばらくの間、お前たち二人は自らの領地から出ることを禁ずる。これを破ればどうなるか……慎重に考えて行動せよ」
「か、畏まりました……」
シグマとアンナの二人は生気を完全に吸われた抜け殻のようになっていた。それだけ、ハルト様の罵声が効いたってことでしょうね。ハルト様の最後の言葉は、おそらく私に近づけさせない為のもの……それを破れば、家系ごと王家に潰されるか、追放される可能性もあるんでしょうね。
実際の罰が二人に下るのは少し先のことだけど、どんな風になるのかしら……今から気になってしまうわ。
「シエル、身体は大丈夫か?」
「はい、問題ございません。ハルト様……あの、なんてお礼を申し上げていいのか………」
振り向いたハルト様の顔を見て、私は嬉しさの余り言葉が出て来なかった。本当は言い尽くせないくらいの感謝をしたいんだけれど。
「君には今後、安全を保障するよ。これは王太子からの約束だ」
「ハルト様……その、お言葉はとても嬉しいのですが……他の貴族も見ている状況でして……」
私は一介の伯爵令嬢……ハルト様は次期国王が確実の国家のトップになられるお方だ。私の感情とは別に、貴族街の庭園で派手な演出は控えた方がいいのは確かだった。しかし……
「そんなことは関係ないさ、シエル。最終的には当人同士の問題なんだから」
「……えっ? ハルト様……?」
その瞬間、何が起きたのかわからなかった……ただ、遠くに立っていたメイドのメルレーンが「あらあら」と笑っていたことは覚えている。
……私はハルト様に唇を奪われていた。
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