31 / 43
31話 ラウドとマリアンヌ その2
しおりを挟む
厳格な印象を持ちながらも、「お前は運が良い!」などという言葉でお茶目な一面もあるラウド大臣。彼とマリアンヌ様が親子だと知ったのはつい先ほどのこと……。
ラウド大臣ほどのお方がマリアンヌ様を商品として扱っていたというのは、私にとっては信じられないことであった。だから、この話は非常に興味があるわ。
「ラウド大臣は、当時は確かに、わたくしをヨハン陛下にお渡しすることを最優先にしておりましたわね」
「マリアンヌ様、ラウド大臣とお呼びするのに違和感を感じるんですが……」
普段であれば、特に何も感じなかったと思うけど、ラウド大臣と親子であることを知った後は、違和感がすごい。
「お父様……と呼ぶのは少しね。やはり、わたくしも正妃という立場になったのだし……ラウド大臣、と呼ぶことにしたのよ」
「あ、なるほど……そういうことですか」
「ええ、それでは本題に戻しましょうか……」
マリアンヌ様はどこかニヤけた雰囲気を醸し出しながら、ラウド大臣を見ている。ラウド大臣はそんなマリアンヌ様の態度に少し困っているようだった。ラウド大臣がここまで追い詰められるなんてめずらしい気もするわね。まあ、追い詰められるという言葉は適切ではないと思うけれど。
「ラウド……あの時の其方は、公爵家としての立場を優先させていたな」
「陛下……確かにそうなります。今から考えれば、とても愚かな考えであったかと存じます。マリアンヌのことを全く見ようとせずに……」
ヨハン様の問いかけから始まり、ラウド大臣はやや沈んだ口調になっていた。先ほどのマリアンヌ様の表情からも、今では笑えるネタとして使えるけれど、当時としては切実だったのでしょうね。ラウド大臣の態度からそれは感じ取ることが出来た。
そんなラウド大臣にマリアンヌ様はフォローを開始する。
「当時は仕方ない部分もありますわ……私は正室に入る身でしたし」
「確かにそうかもしれぬが、あの時の私がマリアンヌのことを人として見ていなかった事実は変わらんよ」
「ラウド大臣……いえ、お父様……」
それからも少し、ヨハン様やラウド大臣、マリアンヌ様のお話は続いた。結果的に、ラウド大臣はその後から、なるべく人を見る努力をしたのだという。大切な娘を真剣に見直し、子供の時の思い出に涙する……そんな考えを反復させたのかもしれない。
そして、現在のラウド大臣が誕生した……「其方は運が良い!」というような言葉遣いも、その頃から生まれたんだってさ。私は予期せずして聞けたラウド大臣の過去を胸の奥へとしまうことにした。おそらくラウド大臣からしたら思い出したくない過去だろうから……いざとなったら取り出して、使用するくらいに留めていた方が良いわ。
ラウド大臣ほどのお方がマリアンヌ様を商品として扱っていたというのは、私にとっては信じられないことであった。だから、この話は非常に興味があるわ。
「ラウド大臣は、当時は確かに、わたくしをヨハン陛下にお渡しすることを最優先にしておりましたわね」
「マリアンヌ様、ラウド大臣とお呼びするのに違和感を感じるんですが……」
普段であれば、特に何も感じなかったと思うけど、ラウド大臣と親子であることを知った後は、違和感がすごい。
「お父様……と呼ぶのは少しね。やはり、わたくしも正妃という立場になったのだし……ラウド大臣、と呼ぶことにしたのよ」
「あ、なるほど……そういうことですか」
「ええ、それでは本題に戻しましょうか……」
マリアンヌ様はどこかニヤけた雰囲気を醸し出しながら、ラウド大臣を見ている。ラウド大臣はそんなマリアンヌ様の態度に少し困っているようだった。ラウド大臣がここまで追い詰められるなんてめずらしい気もするわね。まあ、追い詰められるという言葉は適切ではないと思うけれど。
「ラウド……あの時の其方は、公爵家としての立場を優先させていたな」
「陛下……確かにそうなります。今から考えれば、とても愚かな考えであったかと存じます。マリアンヌのことを全く見ようとせずに……」
ヨハン様の問いかけから始まり、ラウド大臣はやや沈んだ口調になっていた。先ほどのマリアンヌ様の表情からも、今では笑えるネタとして使えるけれど、当時としては切実だったのでしょうね。ラウド大臣の態度からそれは感じ取ることが出来た。
そんなラウド大臣にマリアンヌ様はフォローを開始する。
「当時は仕方ない部分もありますわ……私は正室に入る身でしたし」
「確かにそうかもしれぬが、あの時の私がマリアンヌのことを人として見ていなかった事実は変わらんよ」
「ラウド大臣……いえ、お父様……」
それからも少し、ヨハン様やラウド大臣、マリアンヌ様のお話は続いた。結果的に、ラウド大臣はその後から、なるべく人を見る努力をしたのだという。大切な娘を真剣に見直し、子供の時の思い出に涙する……そんな考えを反復させたのかもしれない。
そして、現在のラウド大臣が誕生した……「其方は運が良い!」というような言葉遣いも、その頃から生まれたんだってさ。私は予期せずして聞けたラウド大臣の過去を胸の奥へとしまうことにした。おそらくラウド大臣からしたら思い出したくない過去だろうから……いざとなったら取り出して、使用するくらいに留めていた方が良いわ。
1
お気に入りに追加
3,851
あなたにおすすめの小説
婚約破棄って、貴方誰ですか?
やノゆ
恋愛
ーーーその優秀さを認められ、隣国への特別留学生として名門魔法学校に出向く事になった、パール・カクルックは、学園で行われた歓迎パーティーで突然婚約破棄を言い渡される。
何故かドヤ顔のその男のとなりには、同じく勝ち誇ったような顔の少女がいて、パールは思わず口にした。
「いや、婚約破棄って、貴方誰ですか?」
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
政略結婚相手に本命がいるようなので婚約解消しようと思います。
ゆいまる
恋愛
公爵令嬢ミュランは王太子ハスライトの政略結婚の相手として選ばれた。
義務的なお茶会でしか会うこともない。
そして最近王太子に幼少期から好いている令嬢がいるという話を偶然聞いた。
それならその令嬢と婚約したらいいと思い、身を引くため婚約解消を申し出る。
二人の間に愛はないはずだったのに…。
本編は完結してますが、ハスライトSideのお話も完結まで予約投稿してます。
良ければそちらもご覧ください。
6/28 HOTランキング4位ありがとうございます
国王陛下に激怒されたから、戻って来てくれと言われても困ります
ルイス
恋愛
伯爵令嬢のアンナ・イグマリオはルード・フィクス公爵から婚約破棄をされる。
理由は婚約状態で身体を差し出さないなら必要ないという身勝手極まりないもの。
アンナは彼の屋敷から追放されてしまうが、その後はとんでもないことが起きるのだった。
アンナに片想いをしていた、若き国王陛下はルードに激怒した。ルードは恐怖し、少しでも国王陛下からの怒りを抑える為に、アンナに謝罪しながら戻って来て欲しいと言うが……。
運命の歯車はこの辺りから正常に動作しなくなっていく。
リリーの幸せ
トモ
恋愛
リリーは小さい頃から、両親に可愛がられず、姉の影のように暮らしていた。近所に住んでいた、ダンだけが自分を大切にしてくれる存在だった。
リリーが7歳の時、ダンは引越してしまう。
大泣きしたリリーに、ダンは大人になったら迎えに来るよ。そう言って別れた。
それから10年が経ち、リリーは相変わらず姉の引き立て役のような存在のまま。
戻ってきたダンは…
リリーは幸せになれるのか
公爵令嬢の白銀の指輪
夜桜
恋愛
公爵令嬢エリザは幸せな日々を送っていたはずだった。
婚約者の伯爵ヘイズは婚約指輪をエリザに渡した。けれど、その指輪には猛毒が塗布されていたのだ。
違和感を感じたエリザ。
彼女には貴金属の目利きスキルがあった。
直ちに猛毒のことを訴えると、伯爵は全てを失うことになった。しかし、これは始まりに過ぎなかった……。
婚約者様は連れ子の妹に夢中なようなので別れる事にした。〜連れ子とは知らなかったと言い訳をされましても〜
おしゃれスナイプ
恋愛
事あるごとに婚約者の実家に金の無心をしてくる碌でなし。それが、侯爵令嬢アルカ・ハヴェルの婚約者であるドルク・メルアを正しくあらわす言葉であった。
落ち目の危機に瀕しているメルア侯爵家であったが、これまでの付き合いから見捨てられなかった父が縁談を纏めてしまったのが全ての始まり。
しかし、ある日転機が訪れる。
アルカの父の再婚相手の連れ子、妹にあたるユーミスがドルクの婚約者の地位をアルカから奪おうと試みたのだ。
そして、ドルクもアルカではなく、過剰に持ち上げ、常にご機嫌を取るユーミスを気に入ってゆき、果てにはアルカへ婚約の破談を突きつけてしまう事になる。
お飾り王妃は愛されたい
神崎葵
恋愛
誰も愛せないはずの男のもとに嫁いだはずなのに、彼は愛を得た。
私とは違う人との間に。
愛されたいと願ったお飾り王妃は自らの人生に終止符を打ち――次の瞬間、嫁ぐ直前で目を覚ました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる