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幼なじみたち6
しおりを挟む「さて、早速だが第三回ルーファスを応援する会を始める」
いつもの生徒会室でいつものソファーに座ったローラントと幼なじみたちは、ルーファスを囲んでいつもよりかなり真剣な表情を浮かべていた。そしていつも元気なアンドリューが勢い込んで手を上げた。
「はいはいはいはい――っ!」
「はい、アンドリュー」
「昼食の時も、授業の時もルーファスの様子がおかしかったです!」
「わかってる。だからそれを話し合うために今集まってるんだろ」
「でも、あんなルーファス見たことない! 『下民が』って、今までのルーファスじゃ考えられないような言動! もしかして……」
「もしかして?」
「こいつ、ルーファスの偽物?」
期待して聞いていたローラントと幼なじみたちは、アンドリューの言葉にがっくりして肩を落とす。
「こんな人間国宝みたいな顔面の男が二人もいてたまるか!」
「そうだよねー。こんな顔、滅多にいないよね」
「後光が差してるんじゃないかと思うくらい綺麗ですからねえ」
「確かに。顔は綺麗だよね。見慣れるまでは大変だったけど」
「顔……」
顔のことしか言われないルーファスは、顎あたりを手で撫でている。そんな何気ない仕草でも、目を奪われるくらい美麗だ。
「それでも、昼のあの三文芝居はなんだったんだ?」
「あ、確かに。下民って何? ルーファス、何か悪いものでも食べた?」
「転びそうになったサッシャ君を心配したんだろうけど、言い方があるだろう言い方が」
「全くだ。初恋に戸惑っているのはわかるが、サッシャ君と上手く行きたいなら、わたしたちの助言を聞いてちゃんと考えろ。前の二回の会について何も覚えていないのかい? リース、見本を」
「へ? 俺? えーっと、転んだりしたら危ないから俺の腕に掴まってくれないか。出来れば永遠に」
「まずまずだな。次タルベット」
「まずまずって褒め言葉じゃななくね?」
「では、見本を聞かせてやろうか、リース」
「うるせー、頭でっかちの癖に!」
「二人とも喧嘩をしない! さあ、タルベット、見本を聞かせて貰おうか」
「んん、……愛しい人、ちゃんと足元を見てないと危ないよ。ん? 私だけを見ていたい? それじゃ仕方ないから、いつだって私が抱え上げて運んであげるよ」
クイッとメガネを押し上げ、どうだと言わんばかりのタルベットの態度に、リースが悪態をつく。
「はっ……安っぽい口説き文句だな」
「なんだと!」
向かい合って睨んでいる二人を、ローラントはやんわりと止めた。
「二人ともやめないか。これはルーファスに教えるためのものであって、どれが素晴らしいか勝負しているわけではないだろう。リースのはいつも一緒にいたいって感情が出ていて良かったし、タルベットのはいつだって触れ合いたいって伝えていてこちらも良かったよ」
「ローラント……ごめん、つい」
「俺も……」
「いいんだよ」
「じゃあ、真打登場だね! マイ・スウィートハート、俺以外に触れないで。嫉妬でどうにかなりそうなんだ。きみの意識を奪うものは、なんだって許せない。それくらい激しい嫉妬さ。こんなのおかしいだろう? でも本当なんだ。きみに近づく男は全て排除したいっていつも考えてる。なーんてどう?」
自信満々に言い切ったアンドリューに、タルベットもリースも怖いものを見たような視線を向けている。
「……少し、狂気を感じるが、まあルーファスよりマシだな」
「こっわ……っ」
「嫉妬心に身を焦がしているのがよくわかる言葉だったな。ルーファス、サッシャ君はただ石に躓いてわたしの方によろけただけだよ。それをあんな風に言うなんて、きっと傷ついている。保健室に行った時にちゃんと謝ったのかい?」
ちゃんと謝ったので、ルーファスは頷く。それを見て四人は安心したように「そうか!」「良かった!」と言い合っている。
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