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幼なじみたち3
しおりを挟む午後の授業が終わり、サッシャに寮に帰るように促した後、五人は生徒会室に移動する。生徒会室に入った王子と幼なじみたちはドアを閉めた途端、テーブルに集まっていた。
生徒会の仕事をするつもりではない、今日は他に大事な案件があるからだ。
「第二回ルーファスを応援する会を始める」
テーブルについたローラントが、重々しい表情を浮かべて宣言をする。そしてぼんやりと立っていたルーファスを、自分の隣に座らせた。幼なじみたちもそれぞれソファーに座る。
「はい、ローラント議長!」
「リース、発言を許可する」
手を上げて発言の許可を貰ったリースも、ローラントと同じように厳しい表情をしていた。
「ルーファスが昼食の時にバイトしてる暇があるなら、勉強しろって言ってたけど言い方って大事だと思います」
「そうだな」
今度はアンドリューが手を上げて発言する。
「もっと他に言いようがあったと思いまーす!」
「はい、アンドリュー、例えば?」
「成績を落とさないため、きみがとても努力しているのは知っている。だから、クッキーを焼く時間があれば休んで欲しい。きみが大切なんだ。……なんてどーですかー?」
「採用。ルーファス、今のアンドリューの言葉を心に刻んでおけ。では次にいく」
ローラントは次にタルベットを指差す。タルベットはうむむ……と考えてからメガネを押し上げ、発言した。
「特待生という待遇で学園に通っている生徒は、日々寝る間も惜しんで勉強しているのが普通と聞く。そんな忙しい日々の中、バイトなんかしたら体を壊すんじゃないかと心配だ。……なんてどうだろう?」
「模範解答にしたいくらいの答えだな。ルーファス、お前がサッシャ君に言った言葉は、相手を心配したから出た言葉だろう。わたしたちはつき合いが長いからそれがわかる。が、あれじゃサッシャ君には通じない。いいか、心配ならそれを素直に言葉にするんだ。あれはない」
あれはない、ともう一度ローラントは言い、幼なじみたちも同じように深く頷いている。幼なじみたちに囲まれてソファーに座っていたルーファスは、昼間のサッシャとの会話にダメ出しされていることに気づくが四人の会話に口を挟むようなことはしなかった。
「それに、すごく棒読みだったけど、貧乏人はこんなケーキなど食したことがないだろうってあれなに? 美味しそうに食べる姿見て和んだらなんて言うか知ってる? はい、タルベット!」
指名されたタルベットが、もう一度メガネをくいっと上げながらすぐに答える。
「ケーキが好きなのか? 良かったらこれもどうぞ」
「はい、次リース」
「甘いものは苦手なんだ。代わりに食べてくれる?」
甘えっ子末っ子のリースは、ウインクしながら答えた。
「はい、次アンドリュー」
「ケーキをどうぞ。え? 俺の分? それならきみを食べるから平気さ」
アンドリューが答えると、タルベットとリースが負けた! と悔しがっている。ローラントは満足そうに頷くと、ルーファスに視線を向ける。
「百点満点の答えだ。いいか、ルーファス、今三人が話してくれた見本の言葉をよーく覚えておくんだ」
サッシャには褒められた悪役令息ぽい行動と言動は、ローラントたちには不評らしい。それに気づいても止めることは出来ない。自分が悪役令息をやらないと、サッシャが泣いてしまうかもしれないからだ。サッシャの涙はなにより重い。もう二度流させたくないし、避けたい事態だ。
けれどあの行動が幼なじみたちにこんなにダメ出しされるとは思わなかった。
そんなことを考えているとは知らない幼なじみたちは、話を聞いているのかいないのか、ぼんやりしているルーファスにローラントが声をかける。
「ルーファス?」
「サッシャが……」
「んん? サッシャ君がどうした。今日は寮の部屋にこもっているように伝えたんだろう?」
確かに伝えたのでルーファスは頷く。そしてローラントの王子様然とした容姿を見て、サッシャの言葉を思い出す。
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