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リアが目覚めたとき、まだ辺りは暗闇に包まれていた。
(私、どうしたのかしら……)
記憶が混沌としていて、思考が定まらない。
起き上がろうとしたけれど、頭痛がして頭を抑える。
ふと隣をみればいつもいるはずのグリードがいなくて、シーツも冷たい。
ドレスもいつのまにかネグリジェに着替えさせられていたらしい。それすらも気づかないほど熟睡をしていたのだろうか。
寝惚け眼のまま記憶を探り、はっと数時刻前の出来事を思い出した。
「わ、私……そ、そうだ、グリード様と、お、お父様はっ……」
痛みも忘れ、慌てて寝台から起き上がろうとして足を踏み外し、派手に転んでしまった。
「い、たた……」
思い切り尻餅をついて自分の情けなさに涙がでてくる。
妻として、夫の父と会うーという大事なときに酔っ払って、寝てしまうなんてー。
(きっと、グリード様にもお父様にも呆れられたわ)
まだお酒が残っているのか、情緒不安定になっているのか、絨毯の上に座り込みながらしやくり上げるようにして泣く。
「リアー? どうした?」
突然扉が開いてグリードが慌てて駆け寄ってきた。
「グリード、様……」
グリードが戻ってきてくれて安堵するのと同時に、恥ずかしさが込み上げてきて顔を上げることができない。
「あ、あの……お、お父様は?」
「帰ったよ。楽しかった、リアによろしくと」
呆れた嫁だと、罵ってくれてもいいのにーフロンタンの優しさが嬉しくてまた涙がこみ上げた。
「リア、どうした? まだ気分が悪いのかー?」
グリードが心配そうな顔で覗き込んできて、リアは顔を上げた。
「ごめんなさいっ! グリード様っ!!」
「……」
いきなり頭を下げたリアに、グリードは困惑の表情をみせる。
「私、とんだ失態を……大事な席なのに、お酒を飲んで、酔っ払ってしまって……、私……」
「リア、落ち着いてー」
嗚咽を漏らすリアを抱きしめ、グリードが優しい手つきで撫でてくるから、また涙が出る。
「お前が謝ることは何もない。それだけ、お前に緊張させていたんだろう。気づいてやれなくてすまなかった」
「グリード様は、優しすぎます、もっと、叱ってください……」
グリードと一緒になってからリアは甘やかされっぱなしだ。
このままではどんどん自分に甘くなって、駄目な女性になってしまうー。
「リア、正直に言うと俺とリアの結婚を父上は許していなかった。 父上は今夜もそのことを伝えにきたんだと思う」
「え……」
グリードの告白にリアは戸惑いの色を見せる。
確かにグリードと結婚した流れは唐突だった。
流されるままに結婚したけれど、今は幸せでなんの問題もないと思っていたー。
リアの父には手紙をだして報告し喜んでくれたけれど、フロンタンは激怒したらしい。
「父上は、仕事で懇意にしている侯爵の令嬢と俺を結婚させようとしていた。父上は頑固な人でな。何としても俺とその女性を結婚させようとしていた。でも……」
ふとグリードの視線が甘い色味を帯びて、リアの頬に手を添える。
「そのとき俺の中にはすでにリアしかいなかった。ずっと、初めて会った時からー。だから俺は無理矢理にでもリアを抱いて、強硬手段をとって先に結婚した」
改めてグリードの想いを聞かされて、胸が熱くなった。
「父上はリアに会って、ようやく諦める決心がついたらしい。俺のことよりも、リアのことを悲しませることはしたくないそうだ」
「お父様に、認めてもらえたって、ことですか?」
震える声で聞くとグリードも嬉しそうに微笑んで頷いた。
「よ、よかったー……、私、お父様に、失望させて、私を選んだグリード様のことも悪く思われるんじゃないかって、思って……」
リアは緊張の糸が切れて、子供のようにしゃくりあげて泣いた。
グリードは泣きじゃくるリアを力一杯抱きしめる。
「リア、これからは堂々と、俺の妻として俺の隣にいてほしい」
「はい、はい……、グリード様」
笑顔で頷いたリアにグリードは思い出したように付け足した。
「……夫として、お前に一つだけ忠告する」
ふいに厳しい視線を向けられて、リアは身を固くする。
「俺のいないところで二度と酒は飲むな」
「……ごめんなさい」
もっともな忠告を受けてリアは神妙に謝った。
「酔ったリアが可愛すぎて困った。あんな姿、誰にも見せたくないんだー」
「え……」
予想を覆す言葉にリアは不意打ちを突かれる。
「確かにお前のことを甘やかしすぎているという自覚はあるが、こればかりは仕方がない。自分でも抑えられないくらいお前のことを愛してるんだ」
「グリード様……」
どこまでも甘いグリードにリアは戸惑ってしまう。
「こんなところに座り込んでいたら風邪を引く」
「え、グ、グリード様っ!?」
グリードがいきなりリアの膝裏を持ち上げ、抱き上げた。
お姫様だっこをされながら寝台の上にそっと下ろされる。
「一日張り詰めていて疲れただろ? 今からたっぷりとお前のことを癒してやる」
「グリード様‥‥‥」
軽い口づけを繰り返すうちに、じんわりと身体が熱くなってくる。
「私、もうお酒飲みません‥‥‥」
後悔を滲ませて宣言すると、グリードは苦笑して言った。
「お前は酒を飲んだことなかったんだろ? あの酒は父上の好みの酒で度数はかなり強いんだ。いきなりあんな酒を飲めばああなるのは仕方ない。倒れなかっただけよかったよ」
「口の中が熱かったです」
そんなに強い酒だとは知らなかった。自分の不注意にリアはまた落ち込みそうになる。
「まあ、少しは酒に免疫があった方がいいのは確かだな。今度から少しずつ俺と飲もう」
「はい」
しゅんとして頷くリアの頭を、グリードはやさしく撫でた。
「キスしたくなるくらい、酔っているお前が可愛かった。二人きりのときは思う存分酔っぱらっていいからな?」
「も、もうっ。また、グリード様ってばっ」
恥ずかしくなって照れ隠しに顔を背けるけれど、グリードに顎を持ち上げられて熱い視線が交差する。
「今からは違う意味で酔わせてやる」
意味深に微笑んだグリードの唇が近づいてきて、キスをされる。
やっぱりグリードは甘いと思いながらも、甘い口づけにリアは身体が熱くなっていくのを感じたー。
(私、どうしたのかしら……)
記憶が混沌としていて、思考が定まらない。
起き上がろうとしたけれど、頭痛がして頭を抑える。
ふと隣をみればいつもいるはずのグリードがいなくて、シーツも冷たい。
ドレスもいつのまにかネグリジェに着替えさせられていたらしい。それすらも気づかないほど熟睡をしていたのだろうか。
寝惚け眼のまま記憶を探り、はっと数時刻前の出来事を思い出した。
「わ、私……そ、そうだ、グリード様と、お、お父様はっ……」
痛みも忘れ、慌てて寝台から起き上がろうとして足を踏み外し、派手に転んでしまった。
「い、たた……」
思い切り尻餅をついて自分の情けなさに涙がでてくる。
妻として、夫の父と会うーという大事なときに酔っ払って、寝てしまうなんてー。
(きっと、グリード様にもお父様にも呆れられたわ)
まだお酒が残っているのか、情緒不安定になっているのか、絨毯の上に座り込みながらしやくり上げるようにして泣く。
「リアー? どうした?」
突然扉が開いてグリードが慌てて駆け寄ってきた。
「グリード、様……」
グリードが戻ってきてくれて安堵するのと同時に、恥ずかしさが込み上げてきて顔を上げることができない。
「あ、あの……お、お父様は?」
「帰ったよ。楽しかった、リアによろしくと」
呆れた嫁だと、罵ってくれてもいいのにーフロンタンの優しさが嬉しくてまた涙がこみ上げた。
「リア、どうした? まだ気分が悪いのかー?」
グリードが心配そうな顔で覗き込んできて、リアは顔を上げた。
「ごめんなさいっ! グリード様っ!!」
「……」
いきなり頭を下げたリアに、グリードは困惑の表情をみせる。
「私、とんだ失態を……大事な席なのに、お酒を飲んで、酔っ払ってしまって……、私……」
「リア、落ち着いてー」
嗚咽を漏らすリアを抱きしめ、グリードが優しい手つきで撫でてくるから、また涙が出る。
「お前が謝ることは何もない。それだけ、お前に緊張させていたんだろう。気づいてやれなくてすまなかった」
「グリード様は、優しすぎます、もっと、叱ってください……」
グリードと一緒になってからリアは甘やかされっぱなしだ。
このままではどんどん自分に甘くなって、駄目な女性になってしまうー。
「リア、正直に言うと俺とリアの結婚を父上は許していなかった。 父上は今夜もそのことを伝えにきたんだと思う」
「え……」
グリードの告白にリアは戸惑いの色を見せる。
確かにグリードと結婚した流れは唐突だった。
流されるままに結婚したけれど、今は幸せでなんの問題もないと思っていたー。
リアの父には手紙をだして報告し喜んでくれたけれど、フロンタンは激怒したらしい。
「父上は、仕事で懇意にしている侯爵の令嬢と俺を結婚させようとしていた。父上は頑固な人でな。何としても俺とその女性を結婚させようとしていた。でも……」
ふとグリードの視線が甘い色味を帯びて、リアの頬に手を添える。
「そのとき俺の中にはすでにリアしかいなかった。ずっと、初めて会った時からー。だから俺は無理矢理にでもリアを抱いて、強硬手段をとって先に結婚した」
改めてグリードの想いを聞かされて、胸が熱くなった。
「父上はリアに会って、ようやく諦める決心がついたらしい。俺のことよりも、リアのことを悲しませることはしたくないそうだ」
「お父様に、認めてもらえたって、ことですか?」
震える声で聞くとグリードも嬉しそうに微笑んで頷いた。
「よ、よかったー……、私、お父様に、失望させて、私を選んだグリード様のことも悪く思われるんじゃないかって、思って……」
リアは緊張の糸が切れて、子供のようにしゃくりあげて泣いた。
グリードは泣きじゃくるリアを力一杯抱きしめる。
「リア、これからは堂々と、俺の妻として俺の隣にいてほしい」
「はい、はい……、グリード様」
笑顔で頷いたリアにグリードは思い出したように付け足した。
「……夫として、お前に一つだけ忠告する」
ふいに厳しい視線を向けられて、リアは身を固くする。
「俺のいないところで二度と酒は飲むな」
「……ごめんなさい」
もっともな忠告を受けてリアは神妙に謝った。
「酔ったリアが可愛すぎて困った。あんな姿、誰にも見せたくないんだー」
「え……」
予想を覆す言葉にリアは不意打ちを突かれる。
「確かにお前のことを甘やかしすぎているという自覚はあるが、こればかりは仕方がない。自分でも抑えられないくらいお前のことを愛してるんだ」
「グリード様……」
どこまでも甘いグリードにリアは戸惑ってしまう。
「こんなところに座り込んでいたら風邪を引く」
「え、グ、グリード様っ!?」
グリードがいきなりリアの膝裏を持ち上げ、抱き上げた。
お姫様だっこをされながら寝台の上にそっと下ろされる。
「一日張り詰めていて疲れただろ? 今からたっぷりとお前のことを癒してやる」
「グリード様‥‥‥」
軽い口づけを繰り返すうちに、じんわりと身体が熱くなってくる。
「私、もうお酒飲みません‥‥‥」
後悔を滲ませて宣言すると、グリードは苦笑して言った。
「お前は酒を飲んだことなかったんだろ? あの酒は父上の好みの酒で度数はかなり強いんだ。いきなりあんな酒を飲めばああなるのは仕方ない。倒れなかっただけよかったよ」
「口の中が熱かったです」
そんなに強い酒だとは知らなかった。自分の不注意にリアはまた落ち込みそうになる。
「まあ、少しは酒に免疫があった方がいいのは確かだな。今度から少しずつ俺と飲もう」
「はい」
しゅんとして頷くリアの頭を、グリードはやさしく撫でた。
「キスしたくなるくらい、酔っているお前が可愛かった。二人きりのときは思う存分酔っぱらっていいからな?」
「も、もうっ。また、グリード様ってばっ」
恥ずかしくなって照れ隠しに顔を背けるけれど、グリードに顎を持ち上げられて熱い視線が交差する。
「今からは違う意味で酔わせてやる」
意味深に微笑んだグリードの唇が近づいてきて、キスをされる。
やっぱりグリードは甘いと思いながらも、甘い口づけにリアは身体が熱くなっていくのを感じたー。
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