33 / 102
正声
十拍・知音(弐)
しおりを挟む
夢のような一夜。
それも、人によっては悪夢であることもある。
四辻内大臣殿の場合、まさに悪夢だった。常陸の経実からの文に。
「何と言ってきました?」
縦目の法真が身を乗り出していた。
四辻殿の邸である。法真と二人きりの寝殿には御簾が垂らされていて、月は見えない。
法真の顔に向かい合っているだけでも、悪夢の中のようなのに。
法真は言った。
「官位を要求しているので?」
「いや」
「では大臣の荘園を?寂意入道にかわって領主になりたいと?」
「いや」
そこで法真、いよいよ縦目を出す。
「亡き羽林殿は桁違いな御方でございましたなあ。もし拙僧、かの人と知遇を得ていたならと、今更ながら残念でなりませぬ。ご子息もその血を引いて?」
「……」
「六の宮即位を言って参りましたか?」
「……なんという圧力を……」
妹と所領とを失ってまで、取り返してやった四辻殿の荘園だ。その見返りに、要求があっても当然だ。
だが、六の宮を即位させろとの圧力は、どうか。
法真はのっぺりとした薄ら笑いを浮かべている。流石は羽林殿の子だと。
春日の君とて、時有・信時の母儀は、子息達の招きに応じて都を出て、上野に下向していた。牧邸に着いたのは、つい最近のことである。
この人、まことに面倒見のよい女性で、牧邸に来てまだ間もないというのに、時有の新しい臣下達に、早速あれやこれやと世話を焼いていた。もうすっかり家臣達の信頼を得ている。
「大上(おおうえ)、大上」と皆から慕われていた。
当然ながら、この春日の大上は、法化党の捕虜の貴姫君や三亥御前に同情した。
「私ができる限り、お世話をして差し上げたいわ。捕虜という扱いは望ましくない。客としてもてなしたい」
春日の大上はそう言って、貴姫君と三亥御前とを自分の側に置き、毎日のように二人を訪ねて、色々慰めていたのであった。
貴姫君も三亥御前も、心を開いている様子はない。だが、大上の来訪や好意を拒みはしなかった。
ただ、大上が気がかりなのは、ほとんど口もきかず、食も進まぬのか、臥せっていることも多い三亥御前のことである。怨んでいるのだろうと思った。
貴姫君の方はそういうこともなく、時折笑顔を見せることもある。
ただ、心の底から笑っているわけではないのだろう。
その貴姫君が、一度だけ心底嬉しそうな表情を見せたことがあった。
大上は嗜みとして、琵琶や箏などは一通り学んでいる。上野にも箏や琵琶を持って来ていた。
ある時、たまには楽遊びもよい慰めになるのではないかと考え、琵琶一面持って、貴姫君を訪ねたことがある。
すると、その日ばかりは姫の笑顔が本物と確信できた。
「かの七絃七賢・伊賀守の姪御ですから。それは楽がお好きな筈です」
姫が喜んでくれたとはしゃいだ大上に、安友はそう言った。
大上は、息子の親友であるこの安友のことも、まるでもう一人息子が増えたみたいに可愛がっている。琵琶が特別上手い安友は、格別に可愛いのだそうだ。信時にそんなことを言っては、
「おことには、そこまでの才が、ねえ」
と溜め息をついている。
姫が琵琶に喜んだという話をした時も、信時もその場にいたが、信時そっちのけで、大上は安友と楽しげに話していた。
「そういえば、伊賀守は政任朝臣から法化なる琴を授けられたそうですが、その琴はどうなったかな」
安友がそう言った時、ふと信時には思い当たることがあった。
信時は早速従者に問い合わせさせた。桜町館から押収してきた物の中に、確か琴が一張あった筈だ。
数日後、信時のもとにその琴が届けられた。
第六徽の辺りに傷があるそれには、牛毛紋が幾つも見える。裏返してみると、法化の刻字があった。
「これだ!」
信時は飛び上がって喜び、母のもとへ急いだ。
その時、大上は安友に自分の琵琶を預けて、修理の相談などしていた。
「首を削って少し細くすると、もっと鳴るようになりますよ。この琵琶は、少し首が太い」
「そうなの?」
楽しそうである。
だから信時が、
「母上。姫君にこれをお渡し下さい」
と頼んでも、目の隅で法化を見ながら面倒そうに、
「自分で持って行ったらよいでしょうに。何でも母任せなのだから、この子は」
と、取り合ってもらえない。
「なんで私が!」
信時は口を尖らせた。
実は信時は、あの業経処刑の日以来、貴姫君には会っていない。
訪ねたい気持ちはあったが、できなかった。あの時の姫の様子、言葉。自分が姫の誇りを傷つけてしまったのだと思うと。
彼は、姫に貰った巻物を抱きしめるだけで、堪えていた。
会うのはとても恐ろしかったが、信時は姫と面会した。
御簾越しではあるが、姫は会ってくれた。
ただ、信時は何と言ったらよいのかわからない。
「……お変わりは、ございませぬか?」
そんなありきたりのことを訊いてみた。
「はい」
機嫌の悪くなさそうな声である。
「……さ、桜は全て残しました。来年の春には、咲くことでしょう」
「おそれいります」
「……はあ。お約束ですから」
「あれは御身に差し上げました。御身の御物です」
「は……」
信時はうまく話せない。
人と人として出会った時にはなかった隔てが、あの戦場での再会以来、この目の前の御簾のようにできてしまった。
敵というだけで、会った事のない、どのような人間なのかも知らない相手を憎む。その不思議。だが、それは相手の人となりを知っていても、敵という理由だけで成り立つものなのだ。
信時が今、以前姫を助けたのは自分だと、懐から巻物を取り出したら、姫は何と思うだろうか。
「いつも色々お気遣い頂き、感謝申し上げます」
信時が考えていると、姫がそう言った。
「……え?」
「大上にも。御身にも」
思いもかけぬ言葉であった。
「私の思いを尊重し、私を望み通り殺そうと、そう仰せ下さったのは、御身だけですから。大上の、日々のお優しいお心遣いも、有難く思っております」
「それは」
信時は恨まれてはいないのだろうか。貴姫君の心は読めない。
わからないながらも、敵意はないらしい姫の言葉に、信時はとりあえずほっとして、法化の琴を差し出した。
「これは、散位政任という方が、叔父君に贈られた琴の名器だそうですね。姫君にお返し致しましょう」
「それ!」
中で動く気配が感じられた。膝で立ち上がり、そのまま絶句、立ち尽くしているようである。
彼女は泣いているのかもしれない。
やがて、
「有難うございます」
心からの喜びと感謝が感じられる声で、やっとそれだけ言った。
その夕、やはり三亥御前はろくに食事を口にしなかった。その幽鬼のような顔を姫は案じ、
「少しは召し上がったらいかがです?」
と言う。
だが、三亥御前は弱々しく首を横に振った。
この人、大上の来訪を煩わしく思っている。
「このままでは死んでしまいます」
「それでいい。私は敵の施しを受けながら、こうして生きている。生きるために敵の施しを受けなければならないのは、恥。施しを拒めば死ぬのなら、それも構わない」
「では何故、戦に負けた時、自害なさらなかったのです?生きてしまったなら、今更死んでも仕方ないでしょう」
「でも恥ずかしいのです。敵から慰められ、優しい言葉をかけられ、着物も食物も与えられて生きているのが。姫君はそう思わないのですか?」
そう問われて、姫は逆に問い返した。
「恨んでいますか?復讐したいですか?」
「それは無論のこと!」
「でしたら、そのような態度はお改め下さい。従順を装わなければ、本懐を遂げることなどできませぬ」
「え」
「施しを嫌がる、大上に反抗的である──それは敵意あるものと、皆に警戒されましょう。越王の呉王への恭順を思い出して下さい」
亡き羽林殿は、希姫君にも貴姫君にも、男と同様の教育をした。
女は和歌を学び、仮名文字を美しく書けばよいとされ、漢籍なぞを学ぶと不幸になると言われていた。けれど、羽林殿は女にも学問は必要だと言った。
今、その理由がわかったように三亥御前には思われた。
「臥薪嘗胆、その恨みの心さえ忘れずにいれば、従順が装いから誠に変わることはありません。いえ、恨みを覚え続けていればこそ、従順でもいられるというもの」
姫のその言葉に、三亥御前はただ頷くばかりだった。
「わかりました。全くもって姫君の仰せの通り。私のような態度では、とても復讐など成し遂げられないでしょう。姫君の仰せに従います。ただ、私は弱い人間です。衣食住に困らぬ暮らしを営むうちに、今の暮らしが快適になり、恨みを忘れ、従順が装いでなくなるかもしれませぬ。そのようなことなきよう、姫君が私を見張っていて下さい」
それも、人によっては悪夢であることもある。
四辻内大臣殿の場合、まさに悪夢だった。常陸の経実からの文に。
「何と言ってきました?」
縦目の法真が身を乗り出していた。
四辻殿の邸である。法真と二人きりの寝殿には御簾が垂らされていて、月は見えない。
法真の顔に向かい合っているだけでも、悪夢の中のようなのに。
法真は言った。
「官位を要求しているので?」
「いや」
「では大臣の荘園を?寂意入道にかわって領主になりたいと?」
「いや」
そこで法真、いよいよ縦目を出す。
「亡き羽林殿は桁違いな御方でございましたなあ。もし拙僧、かの人と知遇を得ていたならと、今更ながら残念でなりませぬ。ご子息もその血を引いて?」
「……」
「六の宮即位を言って参りましたか?」
「……なんという圧力を……」
妹と所領とを失ってまで、取り返してやった四辻殿の荘園だ。その見返りに、要求があっても当然だ。
だが、六の宮を即位させろとの圧力は、どうか。
法真はのっぺりとした薄ら笑いを浮かべている。流石は羽林殿の子だと。
春日の君とて、時有・信時の母儀は、子息達の招きに応じて都を出て、上野に下向していた。牧邸に着いたのは、つい最近のことである。
この人、まことに面倒見のよい女性で、牧邸に来てまだ間もないというのに、時有の新しい臣下達に、早速あれやこれやと世話を焼いていた。もうすっかり家臣達の信頼を得ている。
「大上(おおうえ)、大上」と皆から慕われていた。
当然ながら、この春日の大上は、法化党の捕虜の貴姫君や三亥御前に同情した。
「私ができる限り、お世話をして差し上げたいわ。捕虜という扱いは望ましくない。客としてもてなしたい」
春日の大上はそう言って、貴姫君と三亥御前とを自分の側に置き、毎日のように二人を訪ねて、色々慰めていたのであった。
貴姫君も三亥御前も、心を開いている様子はない。だが、大上の来訪や好意を拒みはしなかった。
ただ、大上が気がかりなのは、ほとんど口もきかず、食も進まぬのか、臥せっていることも多い三亥御前のことである。怨んでいるのだろうと思った。
貴姫君の方はそういうこともなく、時折笑顔を見せることもある。
ただ、心の底から笑っているわけではないのだろう。
その貴姫君が、一度だけ心底嬉しそうな表情を見せたことがあった。
大上は嗜みとして、琵琶や箏などは一通り学んでいる。上野にも箏や琵琶を持って来ていた。
ある時、たまには楽遊びもよい慰めになるのではないかと考え、琵琶一面持って、貴姫君を訪ねたことがある。
すると、その日ばかりは姫の笑顔が本物と確信できた。
「かの七絃七賢・伊賀守の姪御ですから。それは楽がお好きな筈です」
姫が喜んでくれたとはしゃいだ大上に、安友はそう言った。
大上は、息子の親友であるこの安友のことも、まるでもう一人息子が増えたみたいに可愛がっている。琵琶が特別上手い安友は、格別に可愛いのだそうだ。信時にそんなことを言っては、
「おことには、そこまでの才が、ねえ」
と溜め息をついている。
姫が琵琶に喜んだという話をした時も、信時もその場にいたが、信時そっちのけで、大上は安友と楽しげに話していた。
「そういえば、伊賀守は政任朝臣から法化なる琴を授けられたそうですが、その琴はどうなったかな」
安友がそう言った時、ふと信時には思い当たることがあった。
信時は早速従者に問い合わせさせた。桜町館から押収してきた物の中に、確か琴が一張あった筈だ。
数日後、信時のもとにその琴が届けられた。
第六徽の辺りに傷があるそれには、牛毛紋が幾つも見える。裏返してみると、法化の刻字があった。
「これだ!」
信時は飛び上がって喜び、母のもとへ急いだ。
その時、大上は安友に自分の琵琶を預けて、修理の相談などしていた。
「首を削って少し細くすると、もっと鳴るようになりますよ。この琵琶は、少し首が太い」
「そうなの?」
楽しそうである。
だから信時が、
「母上。姫君にこれをお渡し下さい」
と頼んでも、目の隅で法化を見ながら面倒そうに、
「自分で持って行ったらよいでしょうに。何でも母任せなのだから、この子は」
と、取り合ってもらえない。
「なんで私が!」
信時は口を尖らせた。
実は信時は、あの業経処刑の日以来、貴姫君には会っていない。
訪ねたい気持ちはあったが、できなかった。あの時の姫の様子、言葉。自分が姫の誇りを傷つけてしまったのだと思うと。
彼は、姫に貰った巻物を抱きしめるだけで、堪えていた。
会うのはとても恐ろしかったが、信時は姫と面会した。
御簾越しではあるが、姫は会ってくれた。
ただ、信時は何と言ったらよいのかわからない。
「……お変わりは、ございませぬか?」
そんなありきたりのことを訊いてみた。
「はい」
機嫌の悪くなさそうな声である。
「……さ、桜は全て残しました。来年の春には、咲くことでしょう」
「おそれいります」
「……はあ。お約束ですから」
「あれは御身に差し上げました。御身の御物です」
「は……」
信時はうまく話せない。
人と人として出会った時にはなかった隔てが、あの戦場での再会以来、この目の前の御簾のようにできてしまった。
敵というだけで、会った事のない、どのような人間なのかも知らない相手を憎む。その不思議。だが、それは相手の人となりを知っていても、敵という理由だけで成り立つものなのだ。
信時が今、以前姫を助けたのは自分だと、懐から巻物を取り出したら、姫は何と思うだろうか。
「いつも色々お気遣い頂き、感謝申し上げます」
信時が考えていると、姫がそう言った。
「……え?」
「大上にも。御身にも」
思いもかけぬ言葉であった。
「私の思いを尊重し、私を望み通り殺そうと、そう仰せ下さったのは、御身だけですから。大上の、日々のお優しいお心遣いも、有難く思っております」
「それは」
信時は恨まれてはいないのだろうか。貴姫君の心は読めない。
わからないながらも、敵意はないらしい姫の言葉に、信時はとりあえずほっとして、法化の琴を差し出した。
「これは、散位政任という方が、叔父君に贈られた琴の名器だそうですね。姫君にお返し致しましょう」
「それ!」
中で動く気配が感じられた。膝で立ち上がり、そのまま絶句、立ち尽くしているようである。
彼女は泣いているのかもしれない。
やがて、
「有難うございます」
心からの喜びと感謝が感じられる声で、やっとそれだけ言った。
その夕、やはり三亥御前はろくに食事を口にしなかった。その幽鬼のような顔を姫は案じ、
「少しは召し上がったらいかがです?」
と言う。
だが、三亥御前は弱々しく首を横に振った。
この人、大上の来訪を煩わしく思っている。
「このままでは死んでしまいます」
「それでいい。私は敵の施しを受けながら、こうして生きている。生きるために敵の施しを受けなければならないのは、恥。施しを拒めば死ぬのなら、それも構わない」
「では何故、戦に負けた時、自害なさらなかったのです?生きてしまったなら、今更死んでも仕方ないでしょう」
「でも恥ずかしいのです。敵から慰められ、優しい言葉をかけられ、着物も食物も与えられて生きているのが。姫君はそう思わないのですか?」
そう問われて、姫は逆に問い返した。
「恨んでいますか?復讐したいですか?」
「それは無論のこと!」
「でしたら、そのような態度はお改め下さい。従順を装わなければ、本懐を遂げることなどできませぬ」
「え」
「施しを嫌がる、大上に反抗的である──それは敵意あるものと、皆に警戒されましょう。越王の呉王への恭順を思い出して下さい」
亡き羽林殿は、希姫君にも貴姫君にも、男と同様の教育をした。
女は和歌を学び、仮名文字を美しく書けばよいとされ、漢籍なぞを学ぶと不幸になると言われていた。けれど、羽林殿は女にも学問は必要だと言った。
今、その理由がわかったように三亥御前には思われた。
「臥薪嘗胆、その恨みの心さえ忘れずにいれば、従順が装いから誠に変わることはありません。いえ、恨みを覚え続けていればこそ、従順でもいられるというもの」
姫のその言葉に、三亥御前はただ頷くばかりだった。
「わかりました。全くもって姫君の仰せの通り。私のような態度では、とても復讐など成し遂げられないでしょう。姫君の仰せに従います。ただ、私は弱い人間です。衣食住に困らぬ暮らしを営むうちに、今の暮らしが快適になり、恨みを忘れ、従順が装いでなくなるかもしれませぬ。そのようなことなきよう、姫君が私を見張っていて下さい」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
戦国の華と徒花
三田村優希(または南雲天音)
歴史・時代
武田信玄の命令によって、織田信長の妹であるお市の侍女として潜入した忍びの於小夜(おさよ)。
付き従う内にお市に心酔し、武田家を裏切る形となってしまう。
そんな彼女は人並みに恋をし、同じ武田の忍びである小十郎と夫婦になる。
二人を裏切り者と見做し、刺客が送られてくる。小十郎も柴田勝家の足軽頭となっており、刺客に怯えつつも何とか女児を出産し於奈津(おなつ)と命名する。
しかし頭領であり於小夜の叔父でもある新井庄助の命令で、於奈津は母親から引き離され忍びとしての英才教育を受けるために真田家へと送られてしまう。
悲嘆に暮れる於小夜だが、お市と共に悲運へと呑まれていく。
※拙作「異郷の残菊」と繋がりがありますが、単独で読んでも問題がございません
【他サイト掲載:NOVEL DAYS】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる