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第四章 ハチ公ラーメンを食す。
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第四章 ハチ公拉麺を食す。
雨が降って寒い日であった。そんな日はなかなか外へ出るのも嫌になってしまう日であるが、それでも双葉社の人たちは、忘れずに練習にやってきていた。演奏技術はなくても、練習の出席率の良いところが、双葉社マンドリンクラブの良いところとも言える。
その日の練習は午前中であった。だからみんなどこかでお昼を食べることになる。近くに住んでいる人は、自宅で昼職を食べても良いのだが、大体の人は電車やバスで来る人が多いので、バスに乗る前にレストランなどによって、食事をしていく人が多いのであった。
「ねえハチ公さん、ちょっとご飯を食べていきませんか?」
不意に、マンドラテノーレ担当の、江口友美さんが言った。
「忙しくなかったら、ぜひよっていただきたい店があるの。とてもおしゃれでかわいい店なんだけど。」
江口友美さんと仲の良い、藤井フミさんが言う。
「それともハチ公さんは、直ぐに帰ってしまわれるかしら?」
江口さんに言われてヌルハチさんは、
「いえ大丈夫です。そんなところがあるのだったら、いってみたいですね。」
とにこやかに言った。
「やった、ありがとう。じゃあいつも迎えに来てくれる侍従長さんには、ちょっと遅くなると言っておいて。」
江口さんに言われて、ヌルハチさんはわかりましたといった。そして江口さんに車椅子を押してもらいながら、市民文化会館を出て、商店街へ向かった。二三分移動すると、
「江口さんここへ入るの?えーと、白河屋だっけ?」
藤井さんが、ある店の前で車椅子を止めた。
「ええ、その予定だけど?」
江口さんが言うが、その店は中に人がたくさんいた。待っている人も多く、それを統制しようとしている店員さんもテンテコンマイといった感じであった。
「まあお昼時だから、そうなっても仕方ないですよ。多少のことは大丈夫ですから、入りましょう。」
と、ヌルハチさんは言った。
「いやでもねえ。こんなに人がいっぱいじゃ、ちょっと入りづらいわよ。」
と、藤井さんが言った。
「そうねえ確かにこんなぎゅうぎゅうじゃ仕方ないか。じゃあ他の店を探しましょうか?」
江口友美さんがそう言うと、リヤカーを引っ張りながら、一人のおじいさんが近づいてきた。どうやら布の行商をしているおじいさんらしい。
「おう友美ちゃん、元気だね。最近は雨ばっかり降って大変だけど、体調崩さないようにね。」
おじいさんは友美さんに言った。
「ありがとうございます。本当に寒い日々ですね。」
友美さんが言うと、
「それで今日は、どうしたの?何をしに来たの?」
「今お昼を食べるところを探しているのです。ですが、みんなどこも一杯で、困ってます。」
江口さんがそう言うと、
「なら、簡単じゃないか。友美ちゃんの家で食べれば良いんだ。二人もお客が来てくれると言うんだったら、お母ちゃん、大いに喜ぶよ。」
おじいさんはそういった。それを聞いたヌルハチさんが、
「なにかご家族が飲食店でもされているのですか?」
と江口さんに聞く。
「いえ、とても恥ずかしいところなんですけど、うちはラーメン屋をやっています。」
江口さんはとても嫌そうに言った。
「じゃあそこへ入りましょうか?私達も、食事はしなければなりませんし。」
ヌルハチさんはそう言うが、江口さんは嫌そうである。
「そういうことならどっかの中華料理屋へいきましょうよ。あたしの母の店なんて、全然うまくないし、味も良くないわよ。」
江口さんはそういうのであるが、どこの店も混んでいて、いっぱいなので、仕方なく江口さんのお母さんがやっている、ラーメン屋さんに行くことになった。
江口さんのラーメン屋さんは、商店街から少し離れたところにあった。店の入口には、「安富ラーメン」という小さな看板が置かれているのみで、それ以外の飾り物はなにもない店であった。
「こんにちは。」
三人が中に入ると、
「いらっしゃいませ。」
と、一人の女性が出迎えた。彼女こそ、江口友美さんのお母さんの、江口友香さんである。なんだかとてもつかれたような、儚い感じがする女性という雰囲気があった。
「はじめまして、江口友美さんのお母様ですね。今日はラーメンを頂きにまいりました。よろしくお願いします。」
ヌルハチさんが頭を下げると、
「何も無い店ですが、それでも良いなら食べていってください。」
と、友香さんは申し訳無さそうに言った。
「全くそんなふうに。」
江口友美さんは嫌そうな顔をした。
「メニューは壁に貼ってありますから、どうぞご覧になってください。」
友香さんはそう言って、壁に貼ってあるメニューを指さした。三人はそれを読んで、ヌルハチさんはとんこつラーメンを、藤井フミさんはチャーシュー麺を注文した。友美さんも、とにかくなにか食べたかったので、味噌ラーメンをいっぱい頼んだ。
「私は、一度もラーメンを食べたことがありません。一般的なそばならあるのですが、ラーメンというのは中々食べる機会が無いのです。」
ヌルハチさんが皇族らしい逸話を口にすると、
「そうなんですか。そういうことならぜひ、うちのラーメンを食べていってください。あの、もし足りないようでしたら、替え玉もできますから。」
友香さんはにこやかに言った。
「それならそうさせていただこうかな。あたしはこう見えてもラーメン通だからさ。どうしても気になっちゃう。」
藤井フミさんがそう言うと、
「はいはい、たくさん食べてくださいね。じゃあまずは、とんこつラーメンと、チャーシュー麺です。」
友香さんは、ラーメン丼を、フミさんとヌルハチさんの前においた。
「じゃあいただきます!」
二人はにこやかに笑ってラーメンを食べた。スープは、一般的な和風の豚骨スープでとえもあっさりして美味しそうであった。味噌ラーメンを注文した友美さんも、いやいやながら食べていた。
「それでは、おばちゃん。替え玉して良いかしら?」
フミさんが言うと、友香さんは直ぐに新しい麺を入れてくれた。
「藤井さんもよく食べるんですね。」
ヌルハチさんがそう言うと、
「食い意地のはった女ですからね。」
と藤井さんは答えた。
「まあ良いじゃないですか。食べられるということは健康的てとても良いことですよ。それに食べられるということは幸せなことでもあるじゃないですか。」
ヌルハチさんが言うと、
「そうなんでしょうね!」
と江口友美さんが言った。
「幸せな人はみなそう言うわ。食べものを食べることは一番幸せだって。でも私は、そういうのに、全然魅力を感じないのよ。」
「なんで。友美ちゃん幸せじゃない。こんなラーメン食べられてさあ。」
とフミさんが言うと、
「そうかも知れないけど、あたしにはそうは思えないな。」
友美さんはとても悲しそうに言った。
「それはどういうことでしょうか?」
ヌルハチさんが聞くと、
「いやあ。母の前ではちょっといいにくいわ。」
友美さんは申し訳無く言った。
「いや、そういうことは、いってしまったほうが良いです。いつまでも隠してしまっていては、お母様もお嬢様も困るというものだ。かくして置かないで、今話してしまったほうが良いのではありませんか?」
ヌルハチさんがそう言うと、
「そうよねえ。それは確かに、黙ってたら辛いことなのかもしれないけれど。でもハチ公さん。あたしたちは、隠しておかなくちゃ生活できないのよ。お母さんは、ラーメン屋をやらなくちゃ生活していけないし、あたしの思いなんて、かくして平和な生活をしていかなければ行けないのよ。そのほうがずっと良いのよ。生きてるってそういうものでしょう?人に言えない、悩みを抱えて。」
友美さんは、そういった。
「いえいえ友美さん。あたしは言っちゃったほうが良いと思うな。ここにはハチ公さんもいることだし。辛いことがあるんだったら、溜め込んで置かないで、言ってしまったほうが良いわよ。少なくとも、高尚な身分の人の前では、何も怒らないと思うわ。」
フミさんが友美さんに言った。
「そうですよ。こじれたままでは、何も毎日が楽しくないでしょう?」
ヌルハチさんがそういった。
「楽しくないけど、あたしたちは、問題が解決するのではなくて、問題といっしょに暮らしていかなくちゃいけないんです。それが一般人の生活と言うものではないですか?それにあたしは母しか身内がいないんです。だから出ていくとか、どこかへ行ってしまうとか、そういうことはできなくて。それができない気持ちわかりますか?ハチ公さんはそんなこと思ったこと無いでしょう。あたしたちは、問題と共存しなければ生きていけないという辛さなのに、ハチ公さんは何も苦労しないで、生きていらっしゃる。本当に世の中不公平というか、なんというか。」
「そうかも知れませんね。」
ヌルハチさんは静かに言った。
「私も、話をしていたのは侍従長だけですから、それはとても悲しいです。それだって、問題の一つになると思うのですけれども、それも不公平というものでしょうか?私も、みなさんと話ができて、皆さんの役に立つことができて嬉しいと思っていたのに。」
「そうなんだ、認めてくださるんですね。信じられませんわ。ハチ公さんが役に立てて嬉しいなんて。」
友美さんはまだそう言っている。
「ええ。でも、人に話せば楽になると言うものです。役に立てても立てなくても、誰かに話すということは、大事なのではないでしょうか。体や心を保つためにも。」
ヌルハチさんは優しく言った。
「そうですね。ハチ公さんの言う通りかもしれない。そういうことなら、私、言ってみますわ。どうしても母がラーメン屋をやっていることが、私は劣等感を感じてしまっていて。」
友美さんは申し訳無さそうに言った。
「そうなんですか。それではどうして劣等感を持ってしまうのですか?」
ヌルハチさんは、直ぐ彼女に言った。
「だって周りの人達は、すごく良いもの平気で食べているのに、あたしの家では、ラーメンばかりなんですもの。それは辛いじゃないですか。だって、周りの人達は欲しいものを買ってもらっているのに、あたしは、そういうものを何も入手できないんですよ。」
友美さんがそういうと、
「友美ちゃんそんな事思ってたの!」
不意に厨房からお母さんの江口友香さんが言った。
「だから嫌だったのよ。お母さんの前でこんな事言うの。」
友美さんも負けじと言う。
「だってお母さんは、一生懸命ラーメンを作って、あたしのためになんとかしているっていう自負心があるんでしょうけど、それが息苦しいのよ。あたしは見ての通り何もしていない。できない人間よ。それなのにみんな口を揃えて言うわ。お母さん一人に苦労させて、自分だけ楽をしているのはダメだとか、早く自立してどうのこうのとか。みんな答えは同じ。だから私はどこにも居場所がないのよ。寂しいのよ。死にたいのよ。もう二度と生きていたくなんか無いのよ!」
「そうですか。わかりました。」
ヌルハチさんは静かに言った。
「どんなに人がそうではないと助言したとしても、世界がそう言っているように見えてしまうのですね。」
「そんな事無いわよ、友美ちゃん。お母さんはただ、友美ちゃんが、マンドリンの仲間と楽しくやってくれればそれで良いのよ。お母さんがラーメン屋をしているのは、本当に好きだからやっているのであって、友美ちゃんのせいじゃないのよ。だから友美ちゃんが悪いとか、そんなことは一度も思ったことはないわ。だから友美ちゃんは友美ちゃんで、大好きなマンドリンをやっていればそれで良いから!」
友香さんはそういったのであるが、
「お母さんはそう言うかもしれないけど、世間は私を許してはくれない。働けない人間は働ける人間に土下座して謝って暮らすのが当たり前なのよ。そうでないと、頭がおかしくなって犯罪者になるわ。事実働けないから楽しいことなんて一度もなかった。働けないから楽しむことなんてできやしないのよ。だから私はダメな人間なの。死んだほうが良いのよ!」
と、江口友美さんは泣きはらした。
「そうですね。私も確かに、みなさんが収めてくれた税金で生活しているようなものだし、皇族の後継者からも除外されてしまっているので、おそらくこのまま暮らしても進展は無いでしょうから、同じようなものでしょう。でも命だけは落としては行けないと思います。私の肉親でも、自殺で命を落としたものがいましたが、そうしたからと言って、世の中は良くはなりませんでした。邪魔な人がいなくなって清々したという気持ちには絶対になりません。どうかそれだけは忘れないでいただけますよう。」
ヌルハチさんはそう友美さんに言った。
「本当に良くはならないのですか?あたしは働かない人間がいなくなったら、世の中は、もっと効率良くなると思ったのに。」
友美さんが言うと、
「いいえ、そんなことはありませんよ。」
ヌルハチさんは言った。
「決して、自殺は問題解決にはならないのです。私の肉親のときもそうでした。当事者にしてみれば最高の慰めになるのかもしれませんが、周りの人間には大きな悲しみを残すだけのことです。誰でも同じです。どんな人間でも今まで話していた相手を失うことほど、悲しいことはありませんから。」
「そうなんでしょうか。私は家族以外誰も話せる人もいないし、それなら消えたほうが良いってずっと言われてきているので、もう生きている必要もないと思うんです。だって母だけが唯一の家族ですし、その母も私が理想とする母とは偉い違いで。そんな私がどうして幸せになれるものですか。間違いなく明るい未来も、楽しい将来も、私にはありませんから。」
友美さんはとてもつらそうに言った。
「確かに生きるのは辛いことではあります。それも確かです。おそらく今の貴方には何を言っても通用しないでしょうね。しかし、あなたを愛してくれる人物はここにいます。」
ヌルハチさんはそう言って、友香さんを顎で示した。
「たった一人とか、言わないでくださいね。私なぞ、いろんな人から批判はされますが、愛されたことは一度もないでしょう。それは国民の態度を見れば直ぐわかる。」
「そうなんですね。ハチ公さんみたいな人は、すごい支持率があって、幸せなのかと思っていたけどそうじゃないんだ。」
友美さんは意外そうに言った。
「誰でも一人では人を動かす力など無いのです。私自身も、大勢の人を動かす力は持っていないのですよ。だから、一人の人間に愛してもらえるということがいかに幸せか、それを考えてみてください。そうですね、友香さん。」
「ありがとうございます。」
母の友香さんも涙をこぼした。
「私がいつもいいたくても言えないことを、あなたは全部言ってくれました。私は、何回も何回も友美には伝えたつもりです。ですがこの子は何度言っても死にたいばかり。どうしたら伝わるものなのか、わからなくて困っていたところです。」
「意外にご家族の言うことってみんなそうなのかもしれませんよ。誰か他の人に言ってもらって、初めて頭に入るというのはよくあることです。要は、伝わってくれればそれでいいのではありませんか?それで良いとしてしまえばいいのですよ。誰が言ったかなんて関係ないのですよ。」
ヌルハチさんが、そう言うと友香さんはそうですねといった。
「伝わればそれでいい、誰が言ったかなんて関係ないですか。そう思ってしまえばいいのですね。」
友香さんは、大人らしくそう言葉を切った。
「そう思ってしまえばいいって、私はまだまだそれができません。それでもいいのでしょうか?」
友美さんはとてもつらそうに言った。
「それでいいのですよ。そう思えないのであれば、いつか思えるときが来ます。それを待てば良いのです。」
と、ヌルハチさんは言った。
「いつの時代にも変わらない定義みたいなものはかならずあるはずです。それが変わってしまうということは、どんなに文明が発達したとしても無いというものが必ずあります。それがきっと、愛情とか、そういうものなのではないですか?」
「そうなんですね。あたしはまだ、そこら辺がまだ理解できていないけど、わかるときが来るでしょうか?それともあたし、そんなこともわからないから、やっぱりダメな人間なのでしょうか?」
友美さんがまた聞くと、
「いいえ、今はお母様に対して、にくいとか、嫌だとか、そういう感情を持っていると思いますが、でも、それもきっと変わってくるときが来ると思います。人間には常というものは無いのですから。それは、いつの時代も代わりませんよ。それを、ゆっくり待つこともまた生きることの楽しさなのではないかなって思うんですけどね。」
と、ヌルハチさんは答えた。
「そうかそうか。ハチ公さんはやっぱり違うわね。あたしたちは、ありふれた幸せしか知らないけれど、ハチ公さんは、もっと大きな意味での幸せを知っていらっしゃるんだわ。あたしも全然知らなかった。」
藤井フミさんがそう言うと、ヌルハチさんは、にこやかに笑って、
「私も実はありふれた幸せしか、知らないと思いますよ。」
というのであった。
「じゃあ、ラーメン食べましょう。伸びてしまったけれど、きっと美味しいですよ。」
ヌルハチさんがそう言うと、
「そうですね。」
と、他の二人もそう言ってラーメンを食べ始めた。
雨が降って寒い日であった。そんな日はなかなか外へ出るのも嫌になってしまう日であるが、それでも双葉社の人たちは、忘れずに練習にやってきていた。演奏技術はなくても、練習の出席率の良いところが、双葉社マンドリンクラブの良いところとも言える。
その日の練習は午前中であった。だからみんなどこかでお昼を食べることになる。近くに住んでいる人は、自宅で昼職を食べても良いのだが、大体の人は電車やバスで来る人が多いので、バスに乗る前にレストランなどによって、食事をしていく人が多いのであった。
「ねえハチ公さん、ちょっとご飯を食べていきませんか?」
不意に、マンドラテノーレ担当の、江口友美さんが言った。
「忙しくなかったら、ぜひよっていただきたい店があるの。とてもおしゃれでかわいい店なんだけど。」
江口友美さんと仲の良い、藤井フミさんが言う。
「それともハチ公さんは、直ぐに帰ってしまわれるかしら?」
江口さんに言われてヌルハチさんは、
「いえ大丈夫です。そんなところがあるのだったら、いってみたいですね。」
とにこやかに言った。
「やった、ありがとう。じゃあいつも迎えに来てくれる侍従長さんには、ちょっと遅くなると言っておいて。」
江口さんに言われて、ヌルハチさんはわかりましたといった。そして江口さんに車椅子を押してもらいながら、市民文化会館を出て、商店街へ向かった。二三分移動すると、
「江口さんここへ入るの?えーと、白河屋だっけ?」
藤井さんが、ある店の前で車椅子を止めた。
「ええ、その予定だけど?」
江口さんが言うが、その店は中に人がたくさんいた。待っている人も多く、それを統制しようとしている店員さんもテンテコンマイといった感じであった。
「まあお昼時だから、そうなっても仕方ないですよ。多少のことは大丈夫ですから、入りましょう。」
と、ヌルハチさんは言った。
「いやでもねえ。こんなに人がいっぱいじゃ、ちょっと入りづらいわよ。」
と、藤井さんが言った。
「そうねえ確かにこんなぎゅうぎゅうじゃ仕方ないか。じゃあ他の店を探しましょうか?」
江口友美さんがそう言うと、リヤカーを引っ張りながら、一人のおじいさんが近づいてきた。どうやら布の行商をしているおじいさんらしい。
「おう友美ちゃん、元気だね。最近は雨ばっかり降って大変だけど、体調崩さないようにね。」
おじいさんは友美さんに言った。
「ありがとうございます。本当に寒い日々ですね。」
友美さんが言うと、
「それで今日は、どうしたの?何をしに来たの?」
「今お昼を食べるところを探しているのです。ですが、みんなどこも一杯で、困ってます。」
江口さんがそう言うと、
「なら、簡単じゃないか。友美ちゃんの家で食べれば良いんだ。二人もお客が来てくれると言うんだったら、お母ちゃん、大いに喜ぶよ。」
おじいさんはそういった。それを聞いたヌルハチさんが、
「なにかご家族が飲食店でもされているのですか?」
と江口さんに聞く。
「いえ、とても恥ずかしいところなんですけど、うちはラーメン屋をやっています。」
江口さんはとても嫌そうに言った。
「じゃあそこへ入りましょうか?私達も、食事はしなければなりませんし。」
ヌルハチさんはそう言うが、江口さんは嫌そうである。
「そういうことならどっかの中華料理屋へいきましょうよ。あたしの母の店なんて、全然うまくないし、味も良くないわよ。」
江口さんはそういうのであるが、どこの店も混んでいて、いっぱいなので、仕方なく江口さんのお母さんがやっている、ラーメン屋さんに行くことになった。
江口さんのラーメン屋さんは、商店街から少し離れたところにあった。店の入口には、「安富ラーメン」という小さな看板が置かれているのみで、それ以外の飾り物はなにもない店であった。
「こんにちは。」
三人が中に入ると、
「いらっしゃいませ。」
と、一人の女性が出迎えた。彼女こそ、江口友美さんのお母さんの、江口友香さんである。なんだかとてもつかれたような、儚い感じがする女性という雰囲気があった。
「はじめまして、江口友美さんのお母様ですね。今日はラーメンを頂きにまいりました。よろしくお願いします。」
ヌルハチさんが頭を下げると、
「何も無い店ですが、それでも良いなら食べていってください。」
と、友香さんは申し訳無さそうに言った。
「全くそんなふうに。」
江口友美さんは嫌そうな顔をした。
「メニューは壁に貼ってありますから、どうぞご覧になってください。」
友香さんはそう言って、壁に貼ってあるメニューを指さした。三人はそれを読んで、ヌルハチさんはとんこつラーメンを、藤井フミさんはチャーシュー麺を注文した。友美さんも、とにかくなにか食べたかったので、味噌ラーメンをいっぱい頼んだ。
「私は、一度もラーメンを食べたことがありません。一般的なそばならあるのですが、ラーメンというのは中々食べる機会が無いのです。」
ヌルハチさんが皇族らしい逸話を口にすると、
「そうなんですか。そういうことならぜひ、うちのラーメンを食べていってください。あの、もし足りないようでしたら、替え玉もできますから。」
友香さんはにこやかに言った。
「それならそうさせていただこうかな。あたしはこう見えてもラーメン通だからさ。どうしても気になっちゃう。」
藤井フミさんがそう言うと、
「はいはい、たくさん食べてくださいね。じゃあまずは、とんこつラーメンと、チャーシュー麺です。」
友香さんは、ラーメン丼を、フミさんとヌルハチさんの前においた。
「じゃあいただきます!」
二人はにこやかに笑ってラーメンを食べた。スープは、一般的な和風の豚骨スープでとえもあっさりして美味しそうであった。味噌ラーメンを注文した友美さんも、いやいやながら食べていた。
「それでは、おばちゃん。替え玉して良いかしら?」
フミさんが言うと、友香さんは直ぐに新しい麺を入れてくれた。
「藤井さんもよく食べるんですね。」
ヌルハチさんがそう言うと、
「食い意地のはった女ですからね。」
と藤井さんは答えた。
「まあ良いじゃないですか。食べられるということは健康的てとても良いことですよ。それに食べられるということは幸せなことでもあるじゃないですか。」
ヌルハチさんが言うと、
「そうなんでしょうね!」
と江口友美さんが言った。
「幸せな人はみなそう言うわ。食べものを食べることは一番幸せだって。でも私は、そういうのに、全然魅力を感じないのよ。」
「なんで。友美ちゃん幸せじゃない。こんなラーメン食べられてさあ。」
とフミさんが言うと、
「そうかも知れないけど、あたしにはそうは思えないな。」
友美さんはとても悲しそうに言った。
「それはどういうことでしょうか?」
ヌルハチさんが聞くと、
「いやあ。母の前ではちょっといいにくいわ。」
友美さんは申し訳無く言った。
「いや、そういうことは、いってしまったほうが良いです。いつまでも隠してしまっていては、お母様もお嬢様も困るというものだ。かくして置かないで、今話してしまったほうが良いのではありませんか?」
ヌルハチさんがそう言うと、
「そうよねえ。それは確かに、黙ってたら辛いことなのかもしれないけれど。でもハチ公さん。あたしたちは、隠しておかなくちゃ生活できないのよ。お母さんは、ラーメン屋をやらなくちゃ生活していけないし、あたしの思いなんて、かくして平和な生活をしていかなければ行けないのよ。そのほうがずっと良いのよ。生きてるってそういうものでしょう?人に言えない、悩みを抱えて。」
友美さんは、そういった。
「いえいえ友美さん。あたしは言っちゃったほうが良いと思うな。ここにはハチ公さんもいることだし。辛いことがあるんだったら、溜め込んで置かないで、言ってしまったほうが良いわよ。少なくとも、高尚な身分の人の前では、何も怒らないと思うわ。」
フミさんが友美さんに言った。
「そうですよ。こじれたままでは、何も毎日が楽しくないでしょう?」
ヌルハチさんがそういった。
「楽しくないけど、あたしたちは、問題が解決するのではなくて、問題といっしょに暮らしていかなくちゃいけないんです。それが一般人の生活と言うものではないですか?それにあたしは母しか身内がいないんです。だから出ていくとか、どこかへ行ってしまうとか、そういうことはできなくて。それができない気持ちわかりますか?ハチ公さんはそんなこと思ったこと無いでしょう。あたしたちは、問題と共存しなければ生きていけないという辛さなのに、ハチ公さんは何も苦労しないで、生きていらっしゃる。本当に世の中不公平というか、なんというか。」
「そうかも知れませんね。」
ヌルハチさんは静かに言った。
「私も、話をしていたのは侍従長だけですから、それはとても悲しいです。それだって、問題の一つになると思うのですけれども、それも不公平というものでしょうか?私も、みなさんと話ができて、皆さんの役に立つことができて嬉しいと思っていたのに。」
「そうなんだ、認めてくださるんですね。信じられませんわ。ハチ公さんが役に立てて嬉しいなんて。」
友美さんはまだそう言っている。
「ええ。でも、人に話せば楽になると言うものです。役に立てても立てなくても、誰かに話すということは、大事なのではないでしょうか。体や心を保つためにも。」
ヌルハチさんは優しく言った。
「そうですね。ハチ公さんの言う通りかもしれない。そういうことなら、私、言ってみますわ。どうしても母がラーメン屋をやっていることが、私は劣等感を感じてしまっていて。」
友美さんは申し訳無さそうに言った。
「そうなんですか。それではどうして劣等感を持ってしまうのですか?」
ヌルハチさんは、直ぐ彼女に言った。
「だって周りの人達は、すごく良いもの平気で食べているのに、あたしの家では、ラーメンばかりなんですもの。それは辛いじゃないですか。だって、周りの人達は欲しいものを買ってもらっているのに、あたしは、そういうものを何も入手できないんですよ。」
友美さんがそういうと、
「友美ちゃんそんな事思ってたの!」
不意に厨房からお母さんの江口友香さんが言った。
「だから嫌だったのよ。お母さんの前でこんな事言うの。」
友美さんも負けじと言う。
「だってお母さんは、一生懸命ラーメンを作って、あたしのためになんとかしているっていう自負心があるんでしょうけど、それが息苦しいのよ。あたしは見ての通り何もしていない。できない人間よ。それなのにみんな口を揃えて言うわ。お母さん一人に苦労させて、自分だけ楽をしているのはダメだとか、早く自立してどうのこうのとか。みんな答えは同じ。だから私はどこにも居場所がないのよ。寂しいのよ。死にたいのよ。もう二度と生きていたくなんか無いのよ!」
「そうですか。わかりました。」
ヌルハチさんは静かに言った。
「どんなに人がそうではないと助言したとしても、世界がそう言っているように見えてしまうのですね。」
「そんな事無いわよ、友美ちゃん。お母さんはただ、友美ちゃんが、マンドリンの仲間と楽しくやってくれればそれで良いのよ。お母さんがラーメン屋をしているのは、本当に好きだからやっているのであって、友美ちゃんのせいじゃないのよ。だから友美ちゃんが悪いとか、そんなことは一度も思ったことはないわ。だから友美ちゃんは友美ちゃんで、大好きなマンドリンをやっていればそれで良いから!」
友香さんはそういったのであるが、
「お母さんはそう言うかもしれないけど、世間は私を許してはくれない。働けない人間は働ける人間に土下座して謝って暮らすのが当たり前なのよ。そうでないと、頭がおかしくなって犯罪者になるわ。事実働けないから楽しいことなんて一度もなかった。働けないから楽しむことなんてできやしないのよ。だから私はダメな人間なの。死んだほうが良いのよ!」
と、江口友美さんは泣きはらした。
「そうですね。私も確かに、みなさんが収めてくれた税金で生活しているようなものだし、皇族の後継者からも除外されてしまっているので、おそらくこのまま暮らしても進展は無いでしょうから、同じようなものでしょう。でも命だけは落としては行けないと思います。私の肉親でも、自殺で命を落としたものがいましたが、そうしたからと言って、世の中は良くはなりませんでした。邪魔な人がいなくなって清々したという気持ちには絶対になりません。どうかそれだけは忘れないでいただけますよう。」
ヌルハチさんはそう友美さんに言った。
「本当に良くはならないのですか?あたしは働かない人間がいなくなったら、世の中は、もっと効率良くなると思ったのに。」
友美さんが言うと、
「いいえ、そんなことはありませんよ。」
ヌルハチさんは言った。
「決して、自殺は問題解決にはならないのです。私の肉親のときもそうでした。当事者にしてみれば最高の慰めになるのかもしれませんが、周りの人間には大きな悲しみを残すだけのことです。誰でも同じです。どんな人間でも今まで話していた相手を失うことほど、悲しいことはありませんから。」
「そうなんでしょうか。私は家族以外誰も話せる人もいないし、それなら消えたほうが良いってずっと言われてきているので、もう生きている必要もないと思うんです。だって母だけが唯一の家族ですし、その母も私が理想とする母とは偉い違いで。そんな私がどうして幸せになれるものですか。間違いなく明るい未来も、楽しい将来も、私にはありませんから。」
友美さんはとてもつらそうに言った。
「確かに生きるのは辛いことではあります。それも確かです。おそらく今の貴方には何を言っても通用しないでしょうね。しかし、あなたを愛してくれる人物はここにいます。」
ヌルハチさんはそう言って、友香さんを顎で示した。
「たった一人とか、言わないでくださいね。私なぞ、いろんな人から批判はされますが、愛されたことは一度もないでしょう。それは国民の態度を見れば直ぐわかる。」
「そうなんですね。ハチ公さんみたいな人は、すごい支持率があって、幸せなのかと思っていたけどそうじゃないんだ。」
友美さんは意外そうに言った。
「誰でも一人では人を動かす力など無いのです。私自身も、大勢の人を動かす力は持っていないのですよ。だから、一人の人間に愛してもらえるということがいかに幸せか、それを考えてみてください。そうですね、友香さん。」
「ありがとうございます。」
母の友香さんも涙をこぼした。
「私がいつもいいたくても言えないことを、あなたは全部言ってくれました。私は、何回も何回も友美には伝えたつもりです。ですがこの子は何度言っても死にたいばかり。どうしたら伝わるものなのか、わからなくて困っていたところです。」
「意外にご家族の言うことってみんなそうなのかもしれませんよ。誰か他の人に言ってもらって、初めて頭に入るというのはよくあることです。要は、伝わってくれればそれでいいのではありませんか?それで良いとしてしまえばいいのですよ。誰が言ったかなんて関係ないのですよ。」
ヌルハチさんが、そう言うと友香さんはそうですねといった。
「伝わればそれでいい、誰が言ったかなんて関係ないですか。そう思ってしまえばいいのですね。」
友香さんは、大人らしくそう言葉を切った。
「そう思ってしまえばいいって、私はまだまだそれができません。それでもいいのでしょうか?」
友美さんはとてもつらそうに言った。
「それでいいのですよ。そう思えないのであれば、いつか思えるときが来ます。それを待てば良いのです。」
と、ヌルハチさんは言った。
「いつの時代にも変わらない定義みたいなものはかならずあるはずです。それが変わってしまうということは、どんなに文明が発達したとしても無いというものが必ずあります。それがきっと、愛情とか、そういうものなのではないですか?」
「そうなんですね。あたしはまだ、そこら辺がまだ理解できていないけど、わかるときが来るでしょうか?それともあたし、そんなこともわからないから、やっぱりダメな人間なのでしょうか?」
友美さんがまた聞くと、
「いいえ、今はお母様に対して、にくいとか、嫌だとか、そういう感情を持っていると思いますが、でも、それもきっと変わってくるときが来ると思います。人間には常というものは無いのですから。それは、いつの時代も代わりませんよ。それを、ゆっくり待つこともまた生きることの楽しさなのではないかなって思うんですけどね。」
と、ヌルハチさんは答えた。
「そうかそうか。ハチ公さんはやっぱり違うわね。あたしたちは、ありふれた幸せしか知らないけれど、ハチ公さんは、もっと大きな意味での幸せを知っていらっしゃるんだわ。あたしも全然知らなかった。」
藤井フミさんがそう言うと、ヌルハチさんは、にこやかに笑って、
「私も実はありふれた幸せしか、知らないと思いますよ。」
というのであった。
「じゃあ、ラーメン食べましょう。伸びてしまったけれど、きっと美味しいですよ。」
ヌルハチさんがそう言うと、
「そうですね。」
と、他の二人もそう言ってラーメンを食べ始めた。
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※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
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