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村から村へと走りました。
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翌朝、飲み屋のお姉さんが納屋に起こしに来てくれた。
「おはよう。朝食は店で食べるかい?」
「あ、はい」
夢の名残りで少しぼんやりしながら、私はお姉さんに返事をした。
お姉さんは笑って、「井戸は裏にあるから、顔を洗っといで」と言ってくれた。
私は言われた通りに井戸に行き、顔を洗った。
レイのことは気になるけど、現実では会えないのだし、これからは夢の中で思いっきり甘やかそうと思う。
そう考えて頭をすっきりさせてから、私はレオンと一緒にお店に向かったのだった。
朝食の後、お姉さんにお礼を言ってから村を出た。
街道を走ってしばらくすると、商隊が列を成していたので、私は街道から逸れて商隊から見えない所まで行った。
そして走って彼らを追い越した。
今日はレオンは抱えている。本気で走って少し距離を稼ごうと思ったのだ。
しばらく走ってから街道に戻り、また人が見えるとスピードを緩めて追い越し、見えなくなった所で本気で走った。
そして村が見えて来ると走るのをやめて歩いた。
村に入り食堂を見つけたので、ちょっと休憩しようと思ってレオンを抱いたまま入った。
「いらっしゃいませ!」
店の従業員が元気よく迎えてくれる。
私はレオンが一緒でも大丈夫か訊いてから、果汁と水を注文し代金を払った。
「はい、どうぞ」
注文した品はすぐに運ばれて来て、私は席に着きレオンに水を与えた。
レオンは美味しそうに飲んでいる。
私も果汁をひと口飲んだ。乾いた喉にレモンに似た味が心地いい。
果汁を少しずつ飲んでいると、レオンを見つめる熱い視線に気がついた。
見ると、扉の影から小さな女の子が覗いている。
私は苦笑すると果汁を飲み干し、レオンと共に扉に向かった。
女の子はサッと隠れてしまったけど、私達が食堂から出ると陰から顔を出してこっちを見ていた。
私が女の子を手招きすると、おずおずと近づいて来た。
そして私とレオンを交互に見て「触ってもいい?」と小さな声で言った。
「どうぞ。この子はレオンというの」
「レオン……」
女の子はそっと手を伸ばしてレオンの背中の毛に触れた。
そのうち触り方は大胆になり、しまいには抱きついてわしゃわしゃと撫で回していた。
レオンは困惑したように私を見ている。
しばらくすると満足したのか、女の子はレオンから離れた。
「おねーさん、ありがとう」
「……どういたしまして」
どうして女だってわかったんだろう?
内心首を傾げながら、ぺこりとお辞儀して去って行く女の子を見送った。
そして私は村を出て、再び走り出すのだった。
「おはよう。朝食は店で食べるかい?」
「あ、はい」
夢の名残りで少しぼんやりしながら、私はお姉さんに返事をした。
お姉さんは笑って、「井戸は裏にあるから、顔を洗っといで」と言ってくれた。
私は言われた通りに井戸に行き、顔を洗った。
レイのことは気になるけど、現実では会えないのだし、これからは夢の中で思いっきり甘やかそうと思う。
そう考えて頭をすっきりさせてから、私はレオンと一緒にお店に向かったのだった。
朝食の後、お姉さんにお礼を言ってから村を出た。
街道を走ってしばらくすると、商隊が列を成していたので、私は街道から逸れて商隊から見えない所まで行った。
そして走って彼らを追い越した。
今日はレオンは抱えている。本気で走って少し距離を稼ごうと思ったのだ。
しばらく走ってから街道に戻り、また人が見えるとスピードを緩めて追い越し、見えなくなった所で本気で走った。
そして村が見えて来ると走るのをやめて歩いた。
村に入り食堂を見つけたので、ちょっと休憩しようと思ってレオンを抱いたまま入った。
「いらっしゃいませ!」
店の従業員が元気よく迎えてくれる。
私はレオンが一緒でも大丈夫か訊いてから、果汁と水を注文し代金を払った。
「はい、どうぞ」
注文した品はすぐに運ばれて来て、私は席に着きレオンに水を与えた。
レオンは美味しそうに飲んでいる。
私も果汁をひと口飲んだ。乾いた喉にレモンに似た味が心地いい。
果汁を少しずつ飲んでいると、レオンを見つめる熱い視線に気がついた。
見ると、扉の影から小さな女の子が覗いている。
私は苦笑すると果汁を飲み干し、レオンと共に扉に向かった。
女の子はサッと隠れてしまったけど、私達が食堂から出ると陰から顔を出してこっちを見ていた。
私が女の子を手招きすると、おずおずと近づいて来た。
そして私とレオンを交互に見て「触ってもいい?」と小さな声で言った。
「どうぞ。この子はレオンというの」
「レオン……」
女の子はそっと手を伸ばしてレオンの背中の毛に触れた。
そのうち触り方は大胆になり、しまいには抱きついてわしゃわしゃと撫で回していた。
レオンは困惑したように私を見ている。
しばらくすると満足したのか、女の子はレオンから離れた。
「おねーさん、ありがとう」
「……どういたしまして」
どうして女だってわかったんだろう?
内心首を傾げながら、ぺこりとお辞儀して去って行く女の子を見送った。
そして私は村を出て、再び走り出すのだった。
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