ドラゴン観察日記

早瀬 竜子

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迎え?

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 キューちゃんを拾ってから二ヶ月が過ぎた頃。

 森に大きな竜が舞い降りた。

 それに気付いた人が声を上げ、村は一気に騒がしくなった。
 私と家族も家から飛び出し、竜がいるという方向を見た。
 しかし、セイジさんの一言ですぐに騒ぎは収まった。

「大丈夫だ! あれは騎獣だ!」

 竜には人が乗っていたらしい。
 よく分かったなぁ、さすがセイジさんだと皆が感心していると、森から二人の男が現れた。
 揃いの服を着ている、見たことのない人達だ。きっとあの竜に乗って来たのだろう。

「ライド!」

 セイジさんが声を上げた。そして二人の男に駆け寄って、その片方に話しかけた。

「急に、どうしたんだ?」
「どうしたじゃないだろう!」

 ライドと呼ばれた男が言うと、もう一人が前に出て言った。

「竜の子供はどこだ?」

 その言葉にドキッとする。

 キューちゃんのことだ!
 まさかもう、迎えに来たのだろうか。まだ大きくなってもいないのに。
 嫌な予感に青ざめながら、私はセイジさん達を見つめていた。


 セイジさんは、彼等は自分の知人だと言って、二人の男を連れて帰った。
 その姿を眺めていると、母が「家に戻りましょう」と言って、私と姉を押して家へと戻った。

「キューちゃん、連れてかれちゃうの?」

 姉が心配そうに言った。

「小さいうちは、家で育てていいはずだよ」

 私が言うと、姉も「そうだよね」と言って、少し元気が戻った。
 キューちゃんはもう、家族の一員になっている。誰も手放したがっていない。



 しばらくして、セイジさん達が家にやって来た。
 やっぱり二人の男は、キューちゃんのことで王都から来たのだった。

「もう引き取りに来たんですか?」

 母が訊くと、セイジさんは首を振った。

「いや、まだ引き取るわけじゃない」

 その言葉にホッとした。
 しかし、それなら何の用だろう。

「まずは竜の子を確認したいのだが」

 グレイスと名乗った男が言った。なんだか怖い感じの人だ。
 私は「連れて来ます」と言って、逃げるようにその場を離れた。

 自分の部屋に戻ると、キューちゃんが嬉しそうに「キュウ」と鳴いて飛んで来た。
 私の胸元に着地して、甘えるように頭を擦り付けてくる。

「キューちゃん、私と離れるの、嫌だよね?」
「キュ」

 キューちゃんの身体を撫でながら、絶対手放さないぞと決意した。
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