ドラゴン観察日記

早瀬 竜子

文字の大きさ
上 下
1 / 60

トカゲ?

しおりを挟む
 森に薬草採りに行った帰り、私は何かに躓いて転んだ。
 足元を見たら、卵が一つ転がっていた。
 何の卵だろうと手を伸ばしたら、卵が揺れた。

「!」

 私は驚いて手を引っ込めた。それからジッと観察する。
 卵にはヒビが入っていた。私が蹴飛ばしたせいかもしれない。
 もしかして、このままじゃ死んじゃうかも。
 割れた所を糊でくっつけたらどうだろう? それともこのまま見なかったことに……。
 迷っていると卵が大きく揺れて、中からコツコツ音がした。

「生まれる……?」

 どうしよう。変なものが出てきたら。
 とりあえず隠れよう。

 木の陰に移動してから様子を見る。
 あ、そうだ!
 思いついて、大きめの石を拾う。ヤツが攻撃してきた時のために、撃退する準備もしておこう。
 準備万端、さあいつでもいいぞと見ていたら、ようやく卵が割れ始めた。

 ……トカゲ?

 割れた卵から顔を出したのは、角の生えた真っ白なトカゲだった。

 そのまま見ていると、トカゲがバランスを崩しながら卵から飛び出てきた。
 ……飛んだのだ。すぐに落ちたが。

 ――そのトカゲには羽が生えていた……。




「珍しいトカゲ……」

 トカゲなら危険はないだろうと近づいてみる。
 すぐそばにしゃがんで見ていると、トカゲは私の足元の匂いを嗅ぐような仕草をしてから顔を上げた。

 あ、可愛い……!

 縦長の瞳孔の黄色い目が、不思議そうに見つめている。そのキョトンとした様子が愛らしかった。

「お前、親はどうしたの?」

 話しかけると、トカゲはキュ? と鳴いて首を傾げた。

「~~可愛い……!」

 あまりの可愛さに指で小さな角を撫でると、トカゲは猫のように頭を擦りつけてきた。

「可愛い!」
「キュ」

 トカゲが返事をするように鳴く。それがまた可愛かった。
 ゆっくりと手で掬って抱き上げると、トカゲは甘えるように体を擦りつけてきた。

「キューちゃん家に帰ろうね」

 トカゲの頭を撫でながら立ち上がって、私は家に帰るべく歩き出した。
 頭の中は、母に何と言ってこのトカゲを飼う許可を貰おうかと、それだけでいっぱいだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

毒はお好きですか? 浸毒の令嬢と公爵様の結婚まで

屋月 トム伽
恋愛
産まれる前から、ライアス・ノルディス公爵との結婚が決まっていたローズ・ベラルド男爵令嬢。 結婚式には、いつも死んでしまい、何度も繰り返されるループを終わらせたくて、薬作りに没頭していた今回のループ。 それなのに、いつもと違いライアス様が毎日森の薬屋に通ってくる。その上、自分が婚約者だと知らないはずなのに、何故かデートに誘ってくる始末。 いつもと違うループに、戸惑いながらも、結婚式は近づいていき……。 ※あらすじは書き直すことがあります。 ※小説家になろう様にも投稿してます。

美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する

くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。 世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。 意味がわからなかったが悲観はしなかった。 花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。 そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。 奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。 麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。 周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。 それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。 お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。 全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【R-18】【完結】皇帝と犬

雲走もそそ
恋愛
ハレムに複数の妻子を抱える皇帝ファルハードと、片足の悪い女官長シュルーク。 皇帝はかつて敵国の捕虜にされ、惨い扱いを受けた。女官長は彼を捕らえていた敵国の将軍の娘。 彼女の足が悪いのは、敵国を攻め滅ぼした際に報復として皇帝に片足の腱を切られたからだ。 皇帝が女官長を日々虐げながら傍に置く理由は愛か復讐か――。 ・執着マシマシなヒーローがヒロインに屈辱的な行為を強要(さして反応なし)したり煮詰まったりする愛憎劇です。 ・ヒーロー以外との性交描写や凌辱描写があります。 ・オスマン・トルコをモチーフにした世界観ですが、現実の国、宗教等とは関係のないフィクションです。 ・他サイトにも掲載しています。

公爵家の半端者~悪役令嬢なんてやるよりも、隣国で冒険する方がいい~

石動なつめ
ファンタジー
半端者の公爵令嬢ベリル・ミスリルハンドは、王立学院の休日を利用して隣国のダンジョンに潜ったりと冒険者生活を満喫していた。 しかしある日、王様から『悪役令嬢役』を押し付けられる。何でも王妃様が最近悪役令嬢を主人公とした小説にはまっているのだとか。 冗談ではないと断りたいが権力には逆らえず、残念な演技力と棒読みで悪役令嬢役をこなしていく。 自分からは率先して何もする気はないベリルだったが、その『役』のせいでだんだんとおかしな状況になっていき……。 ※小説家になろうにも掲載しています。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...