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ドクドクと自分の左胸から鼓動が全身に響いている。
肩で息をしていて身体はまだ自由が利かないが、頭は射精後の賢者タイムで冷えている。
俺は自分の状態を省みて、益々死にたくなってきた。
「むぅ…。ふっ。」
身体の下で美玲がもがいている。
ヤバい。
忘れていた。
慌てて手を退けて美玲を見る。
酸欠で顔を真っ赤にし惚けてはいるが、意識はしっかりとしていそうで一安心した。
「美玲?大丈夫か?」
「源くん…。」
俺の目を見て弱く微笑む。
「今日の源くん…。凄かった。」
そうか。
それは良かったな。
ウットリとした顔で先程の行為を反芻している美玲。
対照的に俺は先程の情事を早く忘れたいと思っているというのに。
「なんか、今日はいつもより…。愛を感じた…。」
はーっと幸せそうにため息を吐いて浸っている。
愛とは何だろう…。
俺は今日はじめてお前のことを一切考えないでお前を抱いたんだよ。
お前は一体、誰から誰への愛を感じてたんだよ。
ちょっと怖ぇよ。
もう意味わかんねぇな。
虚しくて、惨めで、そんな自分にウンザリする。
俺はどうしたら良かったんだろう。
どこから間違っていたのだろう。
もし俺がもっと早く一花への気持ちを自覚して、海がしたように一花を守っていたなら、俺の隣に一花がいる世界線もあったのかな。
なんて有り得ねぇか。
あの二人が付き合わなきゃ、俺は一生自分の気持ちに気付くことはなかっただろう。
それに、海は一花への好意を自覚する前から無意識に一花を守っていた。
海には絶対に敵わない。
「ねぇ、源くん。もっと優しくなくても良いんだよ?口押さえ付けられたのも苦しくてゾクゾクしたけど…。ちゃんと首絞めて欲しいよ。」
まだ言っているのか。
ちゃんと首絞めるっていうパワーワード何なんだよ。
「美玲。いつも言ってるけど、ミスコン近いだろ?跡残ったら大変だぞ。」
俺は美玲の肩に両手を置き、顔を覗き込むと、心にもないことを言ってやり過ごす。
「そっか。そこまで考えてくれてたんだね。源くんは本当に優しいね。」
美玲は笑顔で言うと抱きついてきた。
「ほら、風邪ひくぞ。」
そう言いながら、背中に回した手でブラのホックを嵌め、ワンピースのチャックを閉めてやる。
「美玲、俺もそろそろパンツ履きたいよ。」
成る可く優しく言って、自然な感じで美玲を身体から剥がす。
ティッシュで使用済みのゴムを包みながらボーッと放心していると、いつもなら事後すぐにスマホを弄り出す美玲が、珍しく横にピッタリとくっ付いて甘えてくる。
「源くん。」
「ん?どうした?」
うぜぇな。と思いつつ、それを悟られないように返す。
「ミスコン終わったら首絞めて中出ししてね。」
瞬間、背中に冷たい汗が流れた。
暑いくらいなのに寒気がする。
「ああ…。そうだな。ミスコンが…終わったらなー…。」
何とか笑顔で答えたが、きっと顔は引き攣っていただろう。
「約束だよ。」
無邪気に笑う美玲。
ミスコンが終わる前に別れよう。
そう固く決心した。
バイクで美玲を送った後、部屋で一人考える。
俺は一花が好きだ。
もう、誤魔化し様がないくらいに。
だけど海と別れさせたいとは思っていない。
気持ちを伝えるつもりも勿論ない。
さっきは血迷ってハレンチな妄想をしたけど、この先一花の身体に触れることは絶対にしない。
そして一花のこととは関係なく、美玲とはもう一緒にいられない。
今はもう全く好きじゃない。
もともと最初から好きだったのかも怪しいが、少なくとも今よりは魅力的には思っていた。
自信に満ちていて輝いていた美玲は本当に可愛くて、俺は夢中になって数多の候補達が参加する彼氏の座争奪戦に挑んだんだ。
見事その地位を手に入れた時は本当に嬉しかった。
だけど付き合っていくうちに、周囲を貶めて自分の地位を相対的に上げるやり方を目にし、ウンザリすることが増えていった。
俺のことだって、我儘を聞く男の中で一番条件が良く見えたから選んだんだろう。
そういう薄っぺらい女なんだよ。と心の中で罵倒しながら気付いてしまった。
それは俺だ。
マウントを取っていないと精神が保てないし、最初から美玲の容姿しか見ていなかった。
自覚がなかったとはいえ、海や一花にも随分と失礼なことをした。
話で聞いていただけの汐ちゃんが俺を嫌うくらい、よっぽど自分勝手なことをしていたのだろう。
薄っぺらいのは俺だ。
情けなくて涙が出てきた。
美玲は心が綺麗ではない。
かなりのクソ女だと思う。
それは事実だけど、だからといって俺が美玲に気持ちがないままに不誠実をしていいことの免罪符にはならない。
美玲が俺を本当に好きな訳ではないことは明白だが、今日突然にあの性癖を開示してきた時点で、彼氏として一定の信頼を寄せていることは確かだろう。
美玲をマウントの道具にし、性欲処理に使っておきながらも、全く信用していない俺の方が不健全だ。
「本当に…。何やってんだろうな…。」
今日はこのまま寝てしまおう。
明日、朝起きたらこれからのことをじっくり考えよう。
肩で息をしていて身体はまだ自由が利かないが、頭は射精後の賢者タイムで冷えている。
俺は自分の状態を省みて、益々死にたくなってきた。
「むぅ…。ふっ。」
身体の下で美玲がもがいている。
ヤバい。
忘れていた。
慌てて手を退けて美玲を見る。
酸欠で顔を真っ赤にし惚けてはいるが、意識はしっかりとしていそうで一安心した。
「美玲?大丈夫か?」
「源くん…。」
俺の目を見て弱く微笑む。
「今日の源くん…。凄かった。」
そうか。
それは良かったな。
ウットリとした顔で先程の行為を反芻している美玲。
対照的に俺は先程の情事を早く忘れたいと思っているというのに。
「なんか、今日はいつもより…。愛を感じた…。」
はーっと幸せそうにため息を吐いて浸っている。
愛とは何だろう…。
俺は今日はじめてお前のことを一切考えないでお前を抱いたんだよ。
お前は一体、誰から誰への愛を感じてたんだよ。
ちょっと怖ぇよ。
もう意味わかんねぇな。
虚しくて、惨めで、そんな自分にウンザリする。
俺はどうしたら良かったんだろう。
どこから間違っていたのだろう。
もし俺がもっと早く一花への気持ちを自覚して、海がしたように一花を守っていたなら、俺の隣に一花がいる世界線もあったのかな。
なんて有り得ねぇか。
あの二人が付き合わなきゃ、俺は一生自分の気持ちに気付くことはなかっただろう。
それに、海は一花への好意を自覚する前から無意識に一花を守っていた。
海には絶対に敵わない。
「ねぇ、源くん。もっと優しくなくても良いんだよ?口押さえ付けられたのも苦しくてゾクゾクしたけど…。ちゃんと首絞めて欲しいよ。」
まだ言っているのか。
ちゃんと首絞めるっていうパワーワード何なんだよ。
「美玲。いつも言ってるけど、ミスコン近いだろ?跡残ったら大変だぞ。」
俺は美玲の肩に両手を置き、顔を覗き込むと、心にもないことを言ってやり過ごす。
「そっか。そこまで考えてくれてたんだね。源くんは本当に優しいね。」
美玲は笑顔で言うと抱きついてきた。
「ほら、風邪ひくぞ。」
そう言いながら、背中に回した手でブラのホックを嵌め、ワンピースのチャックを閉めてやる。
「美玲、俺もそろそろパンツ履きたいよ。」
成る可く優しく言って、自然な感じで美玲を身体から剥がす。
ティッシュで使用済みのゴムを包みながらボーッと放心していると、いつもなら事後すぐにスマホを弄り出す美玲が、珍しく横にピッタリとくっ付いて甘えてくる。
「源くん。」
「ん?どうした?」
うぜぇな。と思いつつ、それを悟られないように返す。
「ミスコン終わったら首絞めて中出ししてね。」
瞬間、背中に冷たい汗が流れた。
暑いくらいなのに寒気がする。
「ああ…。そうだな。ミスコンが…終わったらなー…。」
何とか笑顔で答えたが、きっと顔は引き攣っていただろう。
「約束だよ。」
無邪気に笑う美玲。
ミスコンが終わる前に別れよう。
そう固く決心した。
バイクで美玲を送った後、部屋で一人考える。
俺は一花が好きだ。
もう、誤魔化し様がないくらいに。
だけど海と別れさせたいとは思っていない。
気持ちを伝えるつもりも勿論ない。
さっきは血迷ってハレンチな妄想をしたけど、この先一花の身体に触れることは絶対にしない。
そして一花のこととは関係なく、美玲とはもう一緒にいられない。
今はもう全く好きじゃない。
もともと最初から好きだったのかも怪しいが、少なくとも今よりは魅力的には思っていた。
自信に満ちていて輝いていた美玲は本当に可愛くて、俺は夢中になって数多の候補達が参加する彼氏の座争奪戦に挑んだんだ。
見事その地位を手に入れた時は本当に嬉しかった。
だけど付き合っていくうちに、周囲を貶めて自分の地位を相対的に上げるやり方を目にし、ウンザリすることが増えていった。
俺のことだって、我儘を聞く男の中で一番条件が良く見えたから選んだんだろう。
そういう薄っぺらい女なんだよ。と心の中で罵倒しながら気付いてしまった。
それは俺だ。
マウントを取っていないと精神が保てないし、最初から美玲の容姿しか見ていなかった。
自覚がなかったとはいえ、海や一花にも随分と失礼なことをした。
話で聞いていただけの汐ちゃんが俺を嫌うくらい、よっぽど自分勝手なことをしていたのだろう。
薄っぺらいのは俺だ。
情けなくて涙が出てきた。
美玲は心が綺麗ではない。
かなりのクソ女だと思う。
それは事実だけど、だからといって俺が美玲に気持ちがないままに不誠実をしていいことの免罪符にはならない。
美玲が俺を本当に好きな訳ではないことは明白だが、今日突然にあの性癖を開示してきた時点で、彼氏として一定の信頼を寄せていることは確かだろう。
美玲をマウントの道具にし、性欲処理に使っておきながらも、全く信用していない俺の方が不健全だ。
「本当に…。何やってんだろうな…。」
今日はこのまま寝てしまおう。
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