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16話 ときめく心

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 パーティーの日が来た。
 朝からバタバタと使用人たちが駆け回っている。
 私自身もパーティーくらいでしか着ない、鮮やかなドレスに身を通し、準備を進める。
 普段はもっと動きやすいものを着ているからか、窮屈に感じた。
 

 自分の準備が終わり、ルイスの部屋へ向かう。
 「ルイス、ちょっと変じゃないか見てほしいんだけどっ。」
 コンコンッと扉をノックすると同時に扉が開く。
  「サラッ!早かったね。」
 扉を開けたルイスを見て思わず息を呑んだ。

 「綺麗なドレスだね、素敵だよ。」
 「あっ…ルイス、その頭…」
 「うん?これから忙しくなるからね。さっぱりしたよ。」
 腰まであった長い髪がバッサリと切られている。
 長く垂れていた前髪が無くなり、色白ですーっと鼻の通った上品な顔がよく見える。
 「どうかな、似合う?」
 あめ玉みたいに綺麗なルイスの瞳が私を映している。

 「へ、変なのっ!」
 口をついて出た軽口にルイスは困ったように笑った。

 「私、先にロビーに行ってるからっ。」
 改めてしっかり見るとルイスの端正な顔立ちがよくわかる。
 恥ずかしさを振り切るように小走りでロビーへ向かった。




 ロビーにつくと、既に招待された客人たちで賑わっていた。

 「私も手伝うわ。」
 「ありがとうございます、奥さま。」
 使用人たちと共にホールの方へと客人を案内する。
 ぞろぞろとホールへ向かう人混みの中に見覚えのある背中があった。


 デレクとエレナ!

 腕を組みホールへと向かう二人を見て、胸がどきりと音を立てた。

 いけない…集中しないと。

 デレクやエレナなんかに構ってる暇はない。何度か深呼吸をして神経を鎮めた。




 しばらくすると準備が整ったようで、ルイスの挨拶が始まった。

 前に立っているルイスを見ているとなんだか初めて会った日のことを思い出すなぁ…

 ノスタルジーな感情に浸っていると出番が来た。

 「本日は私の妻であるサラ・ジェラルドがご説明いたします。」
 
 「本日、皆さまにお伝えしたいことは慈善活動の一環として…」



◇◇◇


「ーー皆様のご協力をぜひお願い致します。」
 深々と頭を下げた。
 一呼吸おいて、会場全体を割れるような拍手が包み込む。
 大仕事を終えて、膨らんだ風船から空気が抜けていくように体から力が抜けるのを感じた。
 「お疲れ、サラ。」
 こそっと声をかけてくれたルイスに微笑み返し、私は後ろに下がった。

 「では皆さま、本日はどうぞお楽しみくださいませ。ご挨拶は後ほど。」
 会場のみんなに合わせてぱちぱちと拍手をしていると後ろから声をかけられる。




 「お久しぶりですわ、サラ様。」





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