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10話 僕と結婚してくれませんか
しおりを挟むけ、結婚!?
突然の告白に驚く。
「え…っと、いきなりどういうことでしょうか?」
「言葉のままです。私と結婚してほしい。」
変わらず私を見つめたままのジェラルド子爵。
困惑してしまい俯く私。
「あなたは覚えておられないかもしれないが、一度お会いしたことがある。」
思いがけない言葉に顔を上げた。
「以前どこかでお会いしましたか?」
「ジェラルド家の当主がまだ父の時です。父と一緒にターナー邸へ伺いました。うちの領内で作るワインが売れず困っていたのです。ターナー伯爵に相談し一緒に解決策を模索していましたが、なかなか良い方法が見つからず困っていた時に、サラさんの知恵をお借りしてなんとかなったのです。」
記憶にない…
お父様の仕事に勝手について行って、口出しするのはよくあることだしなあ…
「貴族であることに驕らず領民のためにと学ばれるあなたのことを私は愛しています。」
直球すぎるジェラル子爵の言葉に恥ずかしくなる。
「あ…お言葉は嬉しいのですが…」
そんなこと、急に言われても困る。
何より、デレクのこともあった今では結婚どころか婚約すら…
「ヘレフォード伯爵のことですか。」
「…ご存じでしたか。つい先日彼との婚約を破棄されています。
理由は…私の男遊びです。こんなことで、お恥ずかしいばかりです。」
本当のことは言えない。
「きっと貴族の間で噂になっています。こんな私とではあなたにまでご迷惑がかかってしまいます。」
ジェラルド子爵は考え込んでいる。
「それに…私はあなたのことをほとんど知りません。愛していただいても、私の気持ちは…。」
二人の間にしばらく沈黙が流れる。
「では、こうしましょう」
沈黙はジェラルド子爵によって破られた。
「頭のいいあなたなら婚約を破棄された令嬢が社交界でどういう扱いを受けるかお分かりでしょう。
そしてターナー家も同じく。」
両親のことを考えると胸が痛くなった。
「ええ…それはよくよく分かっております。」
「男遊びで婚約者に見捨てられ、挙句独り身となると目も当てられない。」
子爵の言葉に思わずカッとなる。
「それはっ…」
「おおかたあれは、ヘレフォード伯爵のご自身を守るための嘘だと踏んでおりますが。」
「えっ?」
間抜けな声が出た。
「ヘレフォード伯爵は少し見栄を張られるところがある。
あなたはそのようなことはしない方だと私は思っていますよ。」
驚いた。
デレクは社交界の中でもそれなりに立場があるし、ヘレフォード家となると彼の言うことに異を唱えるものは多くない。
子爵の彼は私を信じると言ってくれた。
「あなたは私を利用してターナー家に塗られた泥を拭えばいい。」
婚約破棄された令嬢は社交界では腫れ物扱いだ。
ましてや、その後独り身が続くとなると風当たりはますます強くなるだろう。
だからといって…こんな子爵の気持ちを利用するなんて…
席から立ち上がり子爵がこちらに近づいてくる。
「あなたが私を愛していなくても、私は愛する人のそばにいられるのならそれでいいのです。」
私の手を取り、まっすぐ見つめてくる。
不安と困惑で揺れる私の目をまっすぐ見つめて離さない。
「結婚してくれますか?レディ・ターナー」
真剣な表情で愛を伝えてくれる彼に、気づけば答えていた。
「はい。」
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