上 下
5 / 32

5話 誕生日パーティー

しおりを挟む

ヘレフォード邸に着くと、使用人が慌ただしくお客様を案内していた。
私も案内され、奥の部屋へ連れて行かれる。

扉を開けると、煌びやかな装飾が目を奪う。
その場には沢山の貴族たちが集まっており、皆談笑に勤しんでいる。

一通り挨拶を済ませ、デレクを探した。


会場内を歩き回っていると、隅の方でエレナがワインを飲んでいるのを見つけた。

「あっ…」

あの時、街で見たエレナの顔が思い出される。

私の声にエレナが振り向いた。

「あら、ターナー伯爵のお嬢様。
ごきげんよう。」
何事もなかったのように、あの鈴のように綺麗な声が響く。

「エレナさん…」

聞きたいこと、言いたいことがたくさんある。

深呼吸して自分を落ち着かせた。

「以前、街で見かけました。
人違いでなければ私の婚約者のデレクと腕を組んで歩かれているところを。」

私の言葉を聞いたエレナは自身のブロンドの髪を遊ばせながら答えた。

「ああ、覚えてますわ。
確かにデレク様と少し街へ買い物に行っておりましたの。
ああいうのってデートって言うんですわよね。」

ニコニコと笑いながら話すエレナ。

「デレクは私の婚約者です。
どういうおつもりですか。」

真っ直ぐエレナの瞳を見つめて、問い詰めた。

「あらっ、まだ聞いていらしてなかったの。」

わざとらしいきょとんとした顔でこちらを見る。



「デレク様ったら、って。
そうおっしゃってましたのよ。」


頭にカナヅチで殴られたような衝撃が走る。

何を言ってるのかわからない。

「ど、どういう…」

声が震える。

エレナは困惑する私を見てニヤリと笑うと、手に持っていたグラスを傾け自身のドレスにワインをこぼし始めた。


「あっ! 染みにっ!!…」

その光景にハッとして、慌ててエレナに駆け寄り溢れたワインを拭こうとすると、



「きゃああああああああっ」

会場内をエレナの甲高い叫び声が貫いた。


一瞬静まり返り、その場にいた全員の注目が私とエレナに集まる。

いきなりの状況に困惑しているとデレクが駆け寄ってきた。


「エレナ!!」

駆け寄ってきたデレクはエレナを抱きしめる。

「デレクッ…」
エレナもデレクを抱きしめ返していた。

その光景に胸が張り裂けそうになる。


「サラッ!なんてことをっ…」

そう言って私を見たデレクの目は怒りに満ちていた。

「違うわ!
私は溢れたワインを拭こうとして…」

慌てて弁解しようとするとエレナが口を挟む。

「ひどい…ひどいわサラさん…
急に、デレクを返せって。
私そんなつもりじゃないって必死に言ったのよっ…
でも、ワインをかけられてしまって…」

エレナが何を言ってるのかわからない。

周りの視線が一気に私に集まるとがやつきだした。


「まあ、なんて、下品な…」
「ターナー家の薔薇って聞いてましたけどあんな性格とは…」
「おてんば娘だそうよ…でもあんなことするなんて…」




私が悪者になってるの!?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

婚約者の心の声が聞こえるようになったけど、私より妹の方がいいらしい

今川幸乃
恋愛
父の再婚で新しい母や妹が出来た公爵令嬢のエレナは継母オードリーや義妹マリーに苛められていた。 父もオードリーに情が移っており、家の中は敵ばかり。 そんなエレナが唯一気を許せるのは婚約相手のオリバーだけだった。 しかしある日、優しい婚約者だと思っていたオリバーの心の声が聞こえてしまう。 ”またエレナと話すのか、面倒だな。早くマリーと会いたいけど隠すの面倒くさいな” 失意のうちに街を駆けまわったエレナは街で少し不思議な青年と出会い、親しくなる。 実は彼はお忍びで街をうろうろしていた王子ルインであった。 オリバーはマリーと結ばれるため、エレナに婚約破棄を宣言する。 その後ルインと正式に結ばれたエレナとは裏腹に、オリバーとマリーは浮気やエレナへのいじめが露見し、貴族社会で孤立していくのであった。

側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。

とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」 成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。 「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」 ********************************************        ATTENTION ******************************************** *世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。 *いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。 *R-15は保険です。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

帰らなければ良かった

jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。 傷付いたシシリーと傷付けたブライアン… 何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。 *性被害、レイプなどの言葉が出てきます。 気になる方はお避け下さい。 ・8/1 長編に変更しました。 ・8/16 本編完結しました。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

処理中です...