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6話
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「いただきまーす。」
無事に家について、マリアがてきぱきと食事の準備をしてくれた。今日はパンとシチューとサラダのようだ。
ゲテモノのような料理が出てきたらどうしようと不安だったが、やはり食べるものに関しては元の世界と大きく変わらないようだ。
(うん、やっぱりあんま変わんないな。市場でチョコとかもあったし。)
あたたかくて美味しい食事を楽しんでいると、マリアの顔が曇っていることに気づく。
「ん?マリア、どうかしたの?おなか痛い?」
さっきから食べていない。元気が無さそうだ。
「いや、そういうわけではないけれど…」
歯切れの悪い返事に私はますます心配になった。
「本当に?ファウロさん呼んでこようか?」
そう言ってガタッと椅子から立ち上がると、マリアが大きな声を出した。
「違うの!!」
いきなりの大きな声にびっくりして私はその場で固まった。
「ど、どうしたの…」
急に様子の変わったマリアがなんだか怖くなった。私はおとなしく椅子に座る。
「あのね、ニーナ。今日、聖獣と出会ったでしょ?」
マリアの聖獣という声に少し体が反応する。聖獣のことがまだまだ分からなかったため、マリアに聞こうとしていたところだった。
マリアの方から話し出してくれたことは、嬉しいがなんだか様子がおかしい。
「あー、帰り道だよね。それがどうかした?」
私の返答にマリアは話しづらそうに口を開いた。
「前から言っていたけど、ああいうのは良くないわ。」
「ああいうの?」
「聖獣と触れ合おうとしたでしょ?あれよ。」
うさぎに手を出したことの何がそんなにいけなかったのか私には分からない。よく分かってないのがマリアにも伝わったのか続けて話し出した。
「知ってるでしょ。聖獣に人の手を加えてはいけないって、国王が全国民に向けて命令したじゃない。」
そうなのか、と驚いた。しかし、今日見た書物の中には聖獣を家に迎える人もいるとあった。私の知っている言葉でいうペットのような扱いだろう。それなのに、人の手を加えないとはどういうことなのか私には理解できなかった。
「そうだね。でもさ、家に迎える人もいるんでしょ?それで人の手を加えないからって触れ合わないようにするのは違うんじゃない?」
「ニーナは何にも知らないのね。」
教えてあげると言って、マリアはこの国の聖獣について教えてくれた。
「国王の考えでは聖獣は聖なるものだから人が汚すことは許されないの。国王が今のハイリー王に代わってから聖獣を家に迎えていた人たちはみんな聖獣を解放するように命令したのよ。」
「聖獣を解放?」
「ええ。今まで生活を共にしてきた聖獣を人の縛りから解放するようにって命令があったわ。それ以来、ハイリー王は人が聖獣に触れることを良しとしていないのよ。」
(なんて国王だ…)
聖獣とはいえ、所詮動物。つまり今まで人の手によって飼われていた聖獣たちが野生に放されたということだ。今まで人の手によって管理されていた動物たちが野生に放された時の末路なんて。
よくて餓死、精々ほかの動物のえさになって終わりだろう。
「むごい…」
聖獣たちのことを思うと胸が痛んだ。
無事に家について、マリアがてきぱきと食事の準備をしてくれた。今日はパンとシチューとサラダのようだ。
ゲテモノのような料理が出てきたらどうしようと不安だったが、やはり食べるものに関しては元の世界と大きく変わらないようだ。
(うん、やっぱりあんま変わんないな。市場でチョコとかもあったし。)
あたたかくて美味しい食事を楽しんでいると、マリアの顔が曇っていることに気づく。
「ん?マリア、どうかしたの?おなか痛い?」
さっきから食べていない。元気が無さそうだ。
「いや、そういうわけではないけれど…」
歯切れの悪い返事に私はますます心配になった。
「本当に?ファウロさん呼んでこようか?」
そう言ってガタッと椅子から立ち上がると、マリアが大きな声を出した。
「違うの!!」
いきなりの大きな声にびっくりして私はその場で固まった。
「ど、どうしたの…」
急に様子の変わったマリアがなんだか怖くなった。私はおとなしく椅子に座る。
「あのね、ニーナ。今日、聖獣と出会ったでしょ?」
マリアの聖獣という声に少し体が反応する。聖獣のことがまだまだ分からなかったため、マリアに聞こうとしていたところだった。
マリアの方から話し出してくれたことは、嬉しいがなんだか様子がおかしい。
「あー、帰り道だよね。それがどうかした?」
私の返答にマリアは話しづらそうに口を開いた。
「前から言っていたけど、ああいうのは良くないわ。」
「ああいうの?」
「聖獣と触れ合おうとしたでしょ?あれよ。」
うさぎに手を出したことの何がそんなにいけなかったのか私には分からない。よく分かってないのがマリアにも伝わったのか続けて話し出した。
「知ってるでしょ。聖獣に人の手を加えてはいけないって、国王が全国民に向けて命令したじゃない。」
そうなのか、と驚いた。しかし、今日見た書物の中には聖獣を家に迎える人もいるとあった。私の知っている言葉でいうペットのような扱いだろう。それなのに、人の手を加えないとはどういうことなのか私には理解できなかった。
「そうだね。でもさ、家に迎える人もいるんでしょ?それで人の手を加えないからって触れ合わないようにするのは違うんじゃない?」
「ニーナは何にも知らないのね。」
教えてあげると言って、マリアはこの国の聖獣について教えてくれた。
「国王の考えでは聖獣は聖なるものだから人が汚すことは許されないの。国王が今のハイリー王に代わってから聖獣を家に迎えていた人たちはみんな聖獣を解放するように命令したのよ。」
「聖獣を解放?」
「ええ。今まで生活を共にしてきた聖獣を人の縛りから解放するようにって命令があったわ。それ以来、ハイリー王は人が聖獣に触れることを良しとしていないのよ。」
(なんて国王だ…)
聖獣とはいえ、所詮動物。つまり今まで人の手によって飼われていた聖獣たちが野生に放されたということだ。今まで人の手によって管理されていた動物たちが野生に放された時の末路なんて。
よくて餓死、精々ほかの動物のえさになって終わりだろう。
「むごい…」
聖獣たちのことを思うと胸が痛んだ。
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