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地上の生命に、神が異能の力を与え、魔が払われた後、神は生き残った人々に、予言を残した。
それは、後の世に、三つの災厄が訪れるという人々に向けた警告だった。

それから百年後、復興を果たした国々を一つ目の災いが襲った。
それは、魔が消えても尚残る魔物によって齎された疫病だった。

その後、やってきた二つ目の災いが飢饉だ。
突然降った黒い雨に大地が汚染され、田畑だけでなく野山の植物も枯れてしまった。数百年経った今でも、その爪痕はしっかり残されている。

一つ目も二つ目も、大勢の人が命を落とした。予言されていても防げなかったのだ。
そして、とうとう三つ目の、最後の災いがやってくる。
姫様は、はっきりと、そう告げた。



「神によると、今世を生きる私達に迫り来る災厄は、魔物の王だそうよ。」

「魔物の王?魔が消えた今、そんな強力な魔物が生まれるのですか?」

「いいえ、既にいるのよ。王はね、ずっと存在していたの。大昔の異能者達によって、魔物の大半は狩り尽くされたわ。でも、王だけは、生き残って長い眠りについていた。魔物の王は、きっとこの日を待っていたんじゃないかしら。異能者の数が減った、今を。」


魔物の王。
気が遠くなる時を越えてきたそれは、いったいどんな存在なんだろうか。
禍々しい岩竜を思い出して、私の背筋が一気に冷える。

でも、その王と私の死に何の関係が?
魔物の王にとって、私なんて、ただの虫けら程度のはず。

私の疑問を感じ取った姫様が、眉間に何本も皺を寄せて、その美しい顔を鬼のように歪ませた。


「全部、全部、あの腐れ外道のせいよ!あのクソジジイと血が繋がっているのかと思うと虫唾が走る!アイツの死体を掘り起こして、魔物の王に食わせてやりたいわ!」

「エレン、気持ちは分かるが、アイツの死体は、塵も残さず燃やした。その魂すらな。」

「あら、そうだったわ!残念。」

お二人がアイツと語る方は、先々代王のことだ。先々代王は、処刑後も、その罪の重さから、サージェントの王族の中では禁忌扱いされている。
もちろん、私も思い出したくない存在だった。


「ステラ、貴女の体に、結晶化した魔石があるのは、分かっているわよね?」


私は、実験の中で、魔石の粉を血液中に流されていた。その粉が体内で結晶化して、今、私の魔力貯蔵器官になっている。
その魔石が、丁度私の心臓にピッタリくっついて存在しているのだ。


「あのクソジジイは、ステラの体に、魔物の王の魔石を使ったみたいなの。」

姫様は、私の隣に座り直すと、私の胸に手を当てた。


「これは、かつての大戦の中で、魔物の王が落とした命の一部。目覚めた王は、必ずこれを取りに来るわ。」


魔物の一部が、私の中に?
そんなものが、私の中にあるの?

一気に込み上げる吐き気に、私は口を両手で押さえる。
そんな私を姫様が、優しく抱きしめてくれた。


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