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私は肩の痛みに堪えて、ウィルの中に魔力を流す。
細い糸を垂らすように奥へ奥へと進むと、ウィルの光属性の魔力に絡みついた赤が抵抗を始めた。


「くっ...。リ、ル...、リル、リル...。」
ウィルは苦痛に呻きながら、何度も私の名前を呼んだ。
ウィルの瞳からは、いく筋もの涙が流れ落ちる。



「大丈夫、大丈夫よ、ウィル。必ず助けるからね。」

私は、ウィルに流す魔力を徐々に強めた。


ウィルは絶対に渡さない。
こんな魔力に、私は負けない。


赤い魔力の抵抗を抜け、更に奥へと進む。
そしてやっと、私の魔力がウィルの魔力の根元に触れた。


不思議な感覚だった。
ウィルの中は、光属性の魔力が泉のように湧き出ているのかと思っていた。
でも違ったのだ。
ウィルの魔力の根元は、光を纏う植物の群生地だった。
力強い生命力に満ちた植物が、天に向かって伸びている。


そうね。こちらの方が、ウィルらしいわ。
貴方は、ちゃんとリングドンの血を受け継いでいる。
だって、リングドンの豊かな地をしっかり体現しているもの。


私は、光り輝く森に、精一杯の浄化魔法をかけた。


ここに、世界の力はいらないの。


私の魔法は、ウィルの中から綺麗さっぱり、赤い魔力を消し去った。


良かった...。
私、ちゃんとウィルを守れた。


ウィルの中から世界の魔力が消えると、私の魔力も同時に飛散していった。





「お嬢様!メリアお嬢様!」
気付くと、私はライに抱えられていた。
ライの瞳から落ちた涙が、私の頬を濡らす。


「リルメリア、動くな!今、傷を塞ぐ!」

「私も手伝おう。女神様、大丈夫ですよ。」

「ならば、私はこちらを。リルメリア嬢、しっかりするんだ!」

みんなの声は聞こえるのに、意識がはっきりとしない。
血を流し過ぎたのか、体も酷く重かった。



「うっ...。」
忘れていた傷が、今になって焼けるように痛んだ。
でも、その痛みが私の意識をギリギリの所で繋ぎ止めている。


「ウィル、は?」
ウィルはどこ?

私の口から、掠れた小さな声が出た。


「大丈夫だよ!ウィル君も無事だ。全て終わったよー。頑張ったね、リルちゃん。さあ、みんなで帰ろう!」

「はい、先生...。」
良かった...。

安堵と共に、私の意識は急速に薄れていった。







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