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「またですか...。それは処分でいいです。」

「今回は贈り物も一緒だったぞ?」

「贈り物?」

「ああ、貴女の誕生日だったからだろう。18の。」

少し前、私は18歳の誕生日を迎えた。アーレント王国で当たり前の日常を送っていれば、結婚を予定していた年だった。
なのに今の私は聖女。人生とはよく分からないものね。



「送り返して下さい。」

「見なくていいのか?」

「はい。必要ありません。」

アーレント王国を出てから頻繁に送られてくる白い封筒に赤いリボンが飾られた手紙。
初めて彼から貰った花束を思い出す。思い出してしまう。
今も彼からの優しい言葉を、私を必要としてくれる言葉を期待している自分がいるのだ。

でも、それでも、私には彼は必要ないの。
私達の道は既に別れたのだから。
この未練のカケラが、早く私の中から消えて欲しい。



今まで彼から送られてきた手紙は、一度も開封する事なく全て捨てている。もちろん返事は書いていない。
何度か来た入国要請も、外交拒絶を理由に断った。
アーレント王国の公爵位を継いだ彼を、聖王国に入国させるつもりはない。彼にはダリア様がいるのだから、そちらを優先していればいいのだ。

私はそっと、手紙から視線を逸らした。




「では、これはどうする?」
レーグ様はもう一枚の手紙を机に置いた。
何の変哲もない普通の手紙だった。寧ろ私宛に飾り気のない封筒は珍しい。
大抵は私の目に留まるようゴテゴテ飾られた手紙が来るのに。

私は興味を惹かれ、中身を開いた。


その手紙は、アルバス様からの物だった。
第二王子の彼が使うとは思えない質素な便箋だったのは、彼の作戦だろう。
まんまと彼の策に嵌った私は、苦笑いを浮かべながら先を読み進める。

手紙の内容は、私との会談を持ちたいというものだった。
アーレント王国の現状を知って欲しいと。


「で?どうなんだ?」

「そうですねえ。」

うーん、本当にどうしよう。
手紙を読んでしまった手前、無視は後味が悪いし。
王族とはいえアルバス様に恨みはない。寧ろ彼は友達だ。


「仕方ないですね。最後の仕上げもありますし。アルバス様に会いましょう。」


「はいはい!僕も参加する!色々気になるし!」

「うーん、でもどこで会いましょうか。聖王国はアーレント王国お断りですしね。」


さて、これからどうなるか。






それから数日後、アルバス様との非公式な会談が、ニセン王国で行われることになった。
その際、私からは2点の要望を伝えた。

一つ目、この会談はアルバス様と私、二人だけのものであること。
二つ目、ディナータ侯爵家を共に連れてくること。

せっかくの機会なので、雑務も済ませてしまおうとディナータ侯爵達とも会うことにした。
あちらも私に会いたがっているようだし、丁度良い。



会談に先立って、こちらから誰を連れて行くかで揉めに揉めた。
久しぶりに羽を伸ばしてこいとレーグ様が私に休暇を与えたのが原因だ。

私と離れたくないと主張する専属達と、こちらに来ていたレイズ、リヴァン先生、そして魔法士ギルドメンバーの睨み合いが続いた。

けれど、大所帯で行くのはニセン王家に迷惑だと一蹴したレーグ様の独断で、メンバーが決められた。
私は残されるメンバーを必死で宥めて、何とかニセン行きの準備を始めたのだった。









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