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「専門の教育機関を作り、必要な人材を必要な場所へ、逸早く派遣出来る組織形態を作りませんか?今、アルト商会が人を転移させる魔法装置を作成しています。それに提携すれば、人材不足を瞬時に解消出来ると思いません?」


「それは凄い!その仕事を私共にも、任せて頂けるのですか!?」
身を乗り出したイディス商会長の目が、やる気に燃えていた。


「もちろんです。これはきっと色々なギルドも手を挙げると思いますよ?どうでしょう、これを機に沢山の縁を結んでみては?」

ギルドの会長達もお互いに目を合わせて、ソワソワしている。
こちらも上手くいきそうだ。




「聖女の望みは、我が国の望みでもある。ティリウス聖王国も全力で支援しよう。では、聖女が繋げたこの素晴らしい縁に再び杯を掲げよう。そうだな、それは魔法士ギルドを立ち上げたグランディスに任せるか。」

レーグ様の突然の提案に、皆んなの視線がホールの中央へ向く。
すると、優雅に座っていたルーイ先生が、グラスを片手に立ち上がった。不適な笑みを浮かべて。


「僕の弟子は本当に優しいねー。神の使徒っていうより女神だよ、女神!自分を否定したヤツらがいる世界を見捨てないんだもん。でもね、リルちゃんの師である僕は悪魔だから、そんなヤツらには容赦しないよー。ってわけで、麗しき聖女様にカンパーイ!」

招待客が呆気に取られている中、これに慣れている数名とレーグ様が杯を掲げていた。








「お父様!お母様!」
私は久しぶりに会えた2人に、子供のように抱き着いた。


「あらあら。元気そうで良かったわ、リル。本当に聖女になったのね。」

「リルの挨拶、立派だったよ。」
お父様とお母様は、私を感慨深そうに見つめている。
ちょっとだけ恥ずかしい。



「リルちゃーん!神獣見せてー!」
私達家族が感動の再会を果たしている中、それを壊すようにルーイ先生がやって来た。


「先生!先程のアレは何ですか?びっくりしましたよ!」

「だってー。なんかさー。和やかな雰囲気だったからさー。しっかり釘を刺しとこうかなって。」
ルーイ先生は悪びれる事なく、ニコニコと笑っている。


もう!余計な事を!協力者を怯えさせて、どうするのですか!

私はルーイ先生を睨みつけた。



「リル、この後もお披露目は続くんでしょう?大丈夫かい?」
お父様の温かい手が、怒りで上がった私の肩を撫でた。


「はい、お父様。私はもう、大丈夫です。お父様は商会の事、どうかお願いします。」

「分かった。商会は任せて。必ず良い条件で、契約をもぎ取って来るよ。そうだ、リル、これを。どうするかは、リルが決めなさい。」

お父様から受け取った封筒を裏返すと、知った名前が書かれていた。でも家名がない。


私はそっと封筒を開いた。









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