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「ちょっと自称神様!私を連れてきたって、どういうことですか!?」
私は持ち上げた狐を揺さぶって、問い詰める。


「ギャフ!理花ちゃん、出ちゃう。中身出ちゃうからぁー。落ち着いてぇー!」

スルリと私の腕から抜け出した狐は、綺麗に着地すると毛繕いを始めた。


「理花ちゃんはさぁ、自分が、大河理花が死んだ日を覚えてる?」


グッ...
私は胃から込み上げてくる、不快な感覚に襲われた。

理花の死は唐突に訪れた。
職場の健康診断で見つかったガン。
発見した時にはもう手遅れで、どうすることも出来なかった。
最愛の家族との、あまりにも突然の別れ。
その悔しさも悲しみも、しっかりと私の中に残っている。


「理花ちゃんの死は、神でも回避することは出来なかったんだよぉ。でも君の嘆きは、異世界の私の所まで届いた。私はどうしても、この世界に理花ちゃんみたいな強い魂が欲しかったんだぁ。」

狐はトボトボと近寄ってきて、お腹を押さえて蹲る私の頭を撫でた。
小さな手が、私の不快感を徐々に溶かしていく。


「理花ちゃん、君はこの世界が良い世界だって言ってくれたねぇ。私も一緒!今のこの世界が好きなんだぁ。だから別に、技術が発展した世界に作り替えたいって訳じゃないんだよぉ。でもねぇ、このままじゃ、いずれこの世界は消えちゃうんだぁ。」


え?消える?


「この世界は不変。変化を好まない。それはそこに生きる命にも言えることなんだよぉ。でもねぇ、命の不変、停滞は、緩やかなる衰退なんだぁ。どの世界にも共通することなんだけどねぇ。進化しない命は、消えていく定めなんだよぉ。そして命が潰えた世界は、役目を終えて崩壊するんだぁ。」
私の頭を撫でていた狐の手が止まる。
顔を上げた私を、全てを見透かすような眼差しが射抜いた。


「だから理花ちゃんをこの世界に呼んだの。君に、この世界を助けて欲しいんだぁ。理花ちゃんみたいな強い意志を持つ異世界の子なら出来るんだよぉ。」


今度は息苦しい程の重圧が、私の背中に伸し掛かる。
世界の終焉、そんな話をされても、ただの人である私には何も出来ない。
たとえ、異世界の記憶があっても、ごく普通のOLだった私の知識が役に立つはずがない。



「貴方は神様なのでしょう?何とかならないのですか?ちょっとだけ世界を作り直すとか。滅びそうになったら助けるとか。」

これだけ神が信仰されている世界なのだ。天啓を出して危機を伝えるとか、探せば何か方法はあると思う。


「それねぇー。」
狐から哀愁漂う大きな溜息が聞こえた。


「私の名前知ってる?この世界でリルメリアとして生きてきて、一度でもアランティウス以外の神の名前聞いたことあるー?」

肩を落とした狐が、力を失ったように床に伏した。


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