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中央教会から奥に進むと、ちょうど聖王国の中心部に位置する場所に、古くから守られてきた森がある。その森の中には、ガラス張りの温室が併設された小さな教会があった。
静かな教会内の聖堂を司祭長猊下に先導されて、私はゆっくりと歩んだ。
そして私の後ろを、司祭長以下序列10位内の司祭達が続く。
心臓が口から出そう。
そんな事あるわけないって思っていたけれど、本当に出ちゃいそう。
近々ここに来ることは分かっていたし、覚悟もしていた。
でも、あまりに急過ぎて。
アイゼン司祭に乞われ、私は何の準備もしないまま、ここまで来てしまった。
無表情で前を歩く猊下も、予定外だったはずだ。
一歩一歩足を前に出す度に、私は無理矢理覚悟を固めていった。
聖堂の奥にあった扉を開けると、そこはガラスドームに囲われた温室の中だった。
でも、外から見た温室よりも遥かに広い。
温室というより、ガラスで囲った小さな森と言った方がしっくりくる。
高い天井を見上げると、鳥まで自由に飛んでいた。
不思議な空間に見惚れていると、猊下に手を取られた。
「ここから先は足元が悪い。その靴では歩きにくいだろう。気を回せなくて、すまんな。」
部屋からそのまま来てしまった私は、室内用の靴を履いていた。
踵は低いものの、舗装されていない森を歩くには心許ない。
私は猊下の申し出に甘え、少しだけ猊下の腕に体重を乗せた。
しばらく森の中を歩くと、木々が開けた場所が見えた。そこからは、石畳が続いている。
石畳に一歩、足を踏み入れた所で、全員の
歩みが止まった。
「リルメリア、ここから先、私達の進入は許されていない。さあ、貴女はこの先で神に会ってこい。」
猊下は私が掴んでいた腕をそっと外し、背中を押した。
私は、ぐっと息を飲み込むと、覚悟を決めて足を進める。
緊張でどうにかなってしまいそう。
自分の心臓の音が大き過ぎて、他の音が聞こえなかった。
私は本当に拒まれないのだろうか。
もし拒まれないのなら、神は私に何を望むのだろう。
震える足を私は必死で前に動かした。
すると一瞬、私の体が何かに触れたような気がした。
しっとりとした薄い水の膜のような。
その膜を越えたような感覚だった。
けれど、足元に視線を落としてみても何も無い。
気のせいかと思って顔を上げると、目の前の景色が一変していた。
先に続いていた石畳が消え、どこまでも花畑が広がっている。
そしてそこには、潤沢な水を湛えた大きな湖があった。
「これが神の泉?」
私は引き寄せられるように水辺へと近付いた。
透明度の高い水は、湖の底に咲く色とりどりの花を見せてくれた。
綺麗...
私の中にあった不安と緊張が溶けていく。
今私にあるのは、ただの好奇心だけだった。
ドレスの袖が濡れるのも気にせず、私は湖に手を伸ばす。
おかえり
風に運ばれて、どこか聞いた事のある声が心の中に吹き込んできた。
そして、触れた水が意志を持つように、私に向かって大きく波打った。
静かな教会内の聖堂を司祭長猊下に先導されて、私はゆっくりと歩んだ。
そして私の後ろを、司祭長以下序列10位内の司祭達が続く。
心臓が口から出そう。
そんな事あるわけないって思っていたけれど、本当に出ちゃいそう。
近々ここに来ることは分かっていたし、覚悟もしていた。
でも、あまりに急過ぎて。
アイゼン司祭に乞われ、私は何の準備もしないまま、ここまで来てしまった。
無表情で前を歩く猊下も、予定外だったはずだ。
一歩一歩足を前に出す度に、私は無理矢理覚悟を固めていった。
聖堂の奥にあった扉を開けると、そこはガラスドームに囲われた温室の中だった。
でも、外から見た温室よりも遥かに広い。
温室というより、ガラスで囲った小さな森と言った方がしっくりくる。
高い天井を見上げると、鳥まで自由に飛んでいた。
不思議な空間に見惚れていると、猊下に手を取られた。
「ここから先は足元が悪い。その靴では歩きにくいだろう。気を回せなくて、すまんな。」
部屋からそのまま来てしまった私は、室内用の靴を履いていた。
踵は低いものの、舗装されていない森を歩くには心許ない。
私は猊下の申し出に甘え、少しだけ猊下の腕に体重を乗せた。
しばらく森の中を歩くと、木々が開けた場所が見えた。そこからは、石畳が続いている。
石畳に一歩、足を踏み入れた所で、全員の
歩みが止まった。
「リルメリア、ここから先、私達の進入は許されていない。さあ、貴女はこの先で神に会ってこい。」
猊下は私が掴んでいた腕をそっと外し、背中を押した。
私は、ぐっと息を飲み込むと、覚悟を決めて足を進める。
緊張でどうにかなってしまいそう。
自分の心臓の音が大き過ぎて、他の音が聞こえなかった。
私は本当に拒まれないのだろうか。
もし拒まれないのなら、神は私に何を望むのだろう。
震える足を私は必死で前に動かした。
すると一瞬、私の体が何かに触れたような気がした。
しっとりとした薄い水の膜のような。
その膜を越えたような感覚だった。
けれど、足元に視線を落としてみても何も無い。
気のせいかと思って顔を上げると、目の前の景色が一変していた。
先に続いていた石畳が消え、どこまでも花畑が広がっている。
そしてそこには、潤沢な水を湛えた大きな湖があった。
「これが神の泉?」
私は引き寄せられるように水辺へと近付いた。
透明度の高い水は、湖の底に咲く色とりどりの花を見せてくれた。
綺麗...
私の中にあった不安と緊張が溶けていく。
今私にあるのは、ただの好奇心だけだった。
ドレスの袖が濡れるのも気にせず、私は湖に手を伸ばす。
おかえり
風に運ばれて、どこか聞いた事のある声が心の中に吹き込んできた。
そして、触れた水が意志を持つように、私に向かって大きく波打った。
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