下剋上を始めます。これは私の復讐のお話

3-74

「そなた達には失望した。我が国の祝福を汚すとは。恥を知れ！」

壇上の玉座に座る国王陛下からは、刺すような怒りをひしひしと感じる。

陛下からの召喚に応じた私とお父様とお母様は、頭を下げて陛下の怒りを受けていた。
謁見室には陛下が重用している貴族と上級官吏が揃い、私達に侮蔑的な視線を送っている。


「アルト嬢、貴女のダリア様に対する非道的行いは、学院の生徒達からも報告されています。」
宰相が紙の束を掲げ、この部屋にいる全員に見せつけた。
周りからは私を非難する声が上がる。


「アルト嬢、王女になんたる事を。ダリア、よく打ち明けてくれた。」
陛下は隣に座るダリア様の手を握りしめる。
しっかりと周りの臣下に見せつけるように。


「お父様、ごめんなさい。私、どうしたらいいのか分からなくて。本当にごめんなさい。」
ダリア様は顔を歪めると、ポロポロと大粒の涙を溢した。


「アルト嬢！そなたの罪は重いぞ！ダリアは聖女になる尊い存在なのだぞ！それが分からぬとは。」

「アルト嬢、学院に貴女を庇う人はいませんでしたよ。婚約者のウィルフレイ・リングドン殿までも口を黙ました。それ程までにダリア様を貶めたかったのですか？」

ウィルの名前が出て、私の思考が一瞬鈍る。
ウィルはやっぱり庇ってはくれなかった。私が何もしていない事を知っているくせに。


「ダリアよ、お前はリングドン家の三男を気に入っていたな？」

「え？あ、いえ、そんな。」
陛下の突然の問いに、ダリア様が顔を赤らめて慌てふためく。


「まあよい。彼をここへ呼べ！」
陛下の命令で、ドア近くに控えていた侍従が謁見室を出ていく。
重苦しい雰囲気の室内には、陛下とダリア様の声だけが響いていた。



それからすぐに謁見室のドアが開く。侍従と近衛騎士を引き連れたウィルが堂々と謁見室へ入ってきた。


「すまぬな、リングドンよ。一つはっきりさせようと思ってな。」

「はい、陛下。」
ウィルが陛下の前に跪いた。その姿をダリア様が嬉しそうに見ていた。


「そなたの婚約者はダリアに度重なる不敬を働いた。余はこれを許すことはない。ダリアの騎士であるそなたとの婚約破棄を命ずる。意義はあるか？」

陛下の横暴的な命令をウィルは動揺する事なく真っ直ぐ受け止めている。
期待で高揚したダリア様の表情が、私の心を抉る。


「陛下、私はシルヴァンフォード公爵家を継ぎます。」

「おお、そうか！それはめでたい。次の夜会で発表しようではないか。近々聖王国の使者を迎えるからな。丁度良い。我が国の慶事が続くな。」


「ありがとうございます。ですので、今はそちらに集中したく思います。」

「そうか、しかしこれは決定事項だ。そなたは今後もダリアの側に控えるように。」

ウィルは微動だにせず、陛下の言葉を聞いていた。