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「リル、ランチに行きましょう。今日は我が家のシェフがデザートにタルトを焼いてくれたのよ。」
「わあ、嬉しい!公爵家の料理はどれも美味しいから楽しみ!」
最近の私達は、人が集まらない図書室裏のベンチでランチを食べている。
リズベル、ロイド、ニルフの3人がいないランチは物足りなくて寂しい。
アルバス様も公務で忙しいようで、ずっと学院には来ていない。
「そろそろ寒くなってきたから外でのランチは厳しいわね。どこか別の場所を探さなきゃ。」
「ごめんね、ティーナ。私のせいで。」
「もう、何言ってるの。私もあんな中での食事は嫌よ!」
相変わらずリノアーノ様達からの嫌がらせは続いている。
この前は、廊下で水を掛けられそうになった。壊された私物も両手では収まらない。
けれど、大人しくしているだけの私は辞めた。掛けられそうになった水は、結界で防ぎ、私物は常に亜空間魔道具に収納して持ち歩いている。その他の嫌がらせも、堂々と魔法で防ぎ続けた。
聖女気取り
その結果、一部の生徒に私はそう言われるようになった。もちろん言い出したのは、リノアーノ様達だろう。
でも私の無詠唱の魔法は、他の生徒にも異様に見えるらしい。私の姿を見た生徒は、恐怖からかそそくさと離れていく。
その煩わしさから、私は授業以外の時間をなるべく人目のつかない場所で過ごすようになった。
お父様にはいつでも学院を辞めていいと言われている。きっとお父様も今の私の状況を知っているのだろう。
でもこのまま逃げるように辞めるなんて嫌だ。
ティーナはそんな私の気持ちに寄り添うようにいつも一緒にいてくれた。
「そう言えば、もうすぐ帰ってくるのでしょう?」
「ええ、そうね...」
もうすぐ、ウィルが帰ってくる。
そのことはアルバス様から届いた手紙で知った。
ウィルには何度も手紙を送ったけれど、最近は全く返事が返ってこなくなった。今の私にウィルから齎される情報は無い。
「もう!彼は何を考えているのよ!」
「きっと忙しいのよ。怪我はしてないみたいだし、それだけでも良かった。」
「リル!私はいつだって貴女の味方よ!」
ティーナは私の両手を強く握って励ましてくれた。
聖なる王女と騎士の熱愛と書かれていた新聞の見出しを思い出して泣きそうになる。ダリア様を腕に囲うようにして守っている騎士の姿絵は、どう見てもウィルにしか見えなかった。
その新聞はアーレント王国で1番大きな新聞社のものだった。そこの記者はダリア様に同行し、その奇跡を毎日のように記事にしている。
ダリア様の奇跡は辺境だけでなく、王都にも恩恵を齎した。辺境からの街道が魔物に襲われることがなくなり、最近の商業区の市場はお祭りのように賑わっている。
今や新たな聖女の誕生かと、国中が歓喜に包まれていた。
けれど、所々で聞こえてくるダリア様とウィルの話が私には酷く苦痛だった。
「リル、今度の王宮夜会には参加するの?」
「ええ。」
王妃様の誕生日を祝う夜会、それを参加しないわけにはいかない。
私はいずれ、アルトの全てを背負っていくんだもの。
私は楽しみだと伝わるように、にっこりと笑みを貼り付けた。
「わあ、嬉しい!公爵家の料理はどれも美味しいから楽しみ!」
最近の私達は、人が集まらない図書室裏のベンチでランチを食べている。
リズベル、ロイド、ニルフの3人がいないランチは物足りなくて寂しい。
アルバス様も公務で忙しいようで、ずっと学院には来ていない。
「そろそろ寒くなってきたから外でのランチは厳しいわね。どこか別の場所を探さなきゃ。」
「ごめんね、ティーナ。私のせいで。」
「もう、何言ってるの。私もあんな中での食事は嫌よ!」
相変わらずリノアーノ様達からの嫌がらせは続いている。
この前は、廊下で水を掛けられそうになった。壊された私物も両手では収まらない。
けれど、大人しくしているだけの私は辞めた。掛けられそうになった水は、結界で防ぎ、私物は常に亜空間魔道具に収納して持ち歩いている。その他の嫌がらせも、堂々と魔法で防ぎ続けた。
聖女気取り
その結果、一部の生徒に私はそう言われるようになった。もちろん言い出したのは、リノアーノ様達だろう。
でも私の無詠唱の魔法は、他の生徒にも異様に見えるらしい。私の姿を見た生徒は、恐怖からかそそくさと離れていく。
その煩わしさから、私は授業以外の時間をなるべく人目のつかない場所で過ごすようになった。
お父様にはいつでも学院を辞めていいと言われている。きっとお父様も今の私の状況を知っているのだろう。
でもこのまま逃げるように辞めるなんて嫌だ。
ティーナはそんな私の気持ちに寄り添うようにいつも一緒にいてくれた。
「そう言えば、もうすぐ帰ってくるのでしょう?」
「ええ、そうね...」
もうすぐ、ウィルが帰ってくる。
そのことはアルバス様から届いた手紙で知った。
ウィルには何度も手紙を送ったけれど、最近は全く返事が返ってこなくなった。今の私にウィルから齎される情報は無い。
「もう!彼は何を考えているのよ!」
「きっと忙しいのよ。怪我はしてないみたいだし、それだけでも良かった。」
「リル!私はいつだって貴女の味方よ!」
ティーナは私の両手を強く握って励ましてくれた。
聖なる王女と騎士の熱愛と書かれていた新聞の見出しを思い出して泣きそうになる。ダリア様を腕に囲うようにして守っている騎士の姿絵は、どう見てもウィルにしか見えなかった。
その新聞はアーレント王国で1番大きな新聞社のものだった。そこの記者はダリア様に同行し、その奇跡を毎日のように記事にしている。
ダリア様の奇跡は辺境だけでなく、王都にも恩恵を齎した。辺境からの街道が魔物に襲われることがなくなり、最近の商業区の市場はお祭りのように賑わっている。
今や新たな聖女の誕生かと、国中が歓喜に包まれていた。
けれど、所々で聞こえてくるダリア様とウィルの話が私には酷く苦痛だった。
「リル、今度の王宮夜会には参加するの?」
「ええ。」
王妃様の誕生日を祝う夜会、それを参加しないわけにはいかない。
私はいずれ、アルトの全てを背負っていくんだもの。
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