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「疲れた。」
「お疲れ様。リル、大丈夫?」
「ありがとう、ウィル。でも今回はあまり大丈夫じゃないかも。」
進級試験で時間魔法を披露して以来、私は連日、魔法科の先生達に理論の説明を繰り返していた。
そのせいで私は、ウィルの実技試験を見ることが出来なかった。皆んな無事に合格出来たけれど、私はなんだかすごく悔しい。
机に突っ伏している私の頭をウィルが優しく撫でる。
「次の休みはのんびりデートでもしようか?」
「本当?ウィルも最近忙しいでしょう?」
来年、16歳で成人を迎える私達は、何かと家の仕事で忙しくなった。ウィルとも定期的にお茶会や夜会に参加している。
始めの頃は華やかな世界に憧れていたけれど、今はただ疲れるだけだった。
そして相変わらず、私の友達は増えなかった。
だってウィルを連れて行くと、女性は皆んなウィルにアピールし始めるんだもの。
「ゆっくり公園の花でも見に行かない?」
「...行く。」
私は顔を上げないまま、ウィルに答えた。
「あの、私も一緒に行っちゃダメですか?でも、2人の邪魔になってしまいますよね。」
段々と打ち解けてきたダリア様が、勇気を振り絞るようにウィルの袖を引いていた。
久しぶりに2人の時間を楽しみたかったけれど、ダリア様の勇気を無碍には出来ない。
「分かりました。一緒に行きましょう、ダリア様。」
「え?いいんですか?リルメリア様のお邪魔になりませんか?私...」
「ウィル、ダリア様も一緒にいいかしら?」
「もちろん、君がいいなら。」
下を向いてしまったダリア様をウィルが気遣う。
「ダリア様、ティーナ達にも声をかけてみますか?」
「え?あ、あの。3人だけがいいです。」
まだ皆んなで遊ぶのは早かったかな。
私はウィルに目配せすると、ウィルはダリア様を馬車まで送っていった。
週末、私達は約束通り、王都の中央公園に行くことになった。商業区に近いこの公園は、王都の観光名所になっていて、四季折々の花が絵画のように彩っている。
貴族も訪れるその場所は、見晴らしも良く警備もしやすい。ダリア様も安心して過ごせるだろう。
私は目の前に座るダリア様を見る。
今日は可愛らしい花柄のドレスを着ている。ダリア様の赤髪によく似合っていた。
馬車が公園の入り口に止まった。
ウィルは先に馬車から降りると、次に降りる私に手を貸してくれた。
ダリア様にも手を貸したウィルは、ダリア様を近衛騎士の下へとエスコートする。
すると、ダリア様の足が急に止まった。
「ダリア様?」
何も答えないダリア様は、ウィルの腕にしがみついていた。近くにいた近衛騎士達の表情も硬い。
「ウィル、ダリア様のエスコートをお願い。そのドレスだと歩きづらいでしょうから。」
「分かった。リルは大丈夫?」
「私?私は大丈夫よ?」
私はその場でふわっと回ってみせた。今日は動きやすい淡い紫色のワンピースだ。風を受けてゆっくりと裾のレースが靡く。
周りから感嘆の溜息が聞こえた。朝からレイズと頑張った甲斐があった。ウィルにエスコートしてもらえないのは残念だけど。
「では、美しいレディ。私がエスコートさせていただいても?」
「え?」
私は、差し出された手の先に顔を向けた。
「お疲れ様。リル、大丈夫?」
「ありがとう、ウィル。でも今回はあまり大丈夫じゃないかも。」
進級試験で時間魔法を披露して以来、私は連日、魔法科の先生達に理論の説明を繰り返していた。
そのせいで私は、ウィルの実技試験を見ることが出来なかった。皆んな無事に合格出来たけれど、私はなんだかすごく悔しい。
机に突っ伏している私の頭をウィルが優しく撫でる。
「次の休みはのんびりデートでもしようか?」
「本当?ウィルも最近忙しいでしょう?」
来年、16歳で成人を迎える私達は、何かと家の仕事で忙しくなった。ウィルとも定期的にお茶会や夜会に参加している。
始めの頃は華やかな世界に憧れていたけれど、今はただ疲れるだけだった。
そして相変わらず、私の友達は増えなかった。
だってウィルを連れて行くと、女性は皆んなウィルにアピールし始めるんだもの。
「ゆっくり公園の花でも見に行かない?」
「...行く。」
私は顔を上げないまま、ウィルに答えた。
「あの、私も一緒に行っちゃダメですか?でも、2人の邪魔になってしまいますよね。」
段々と打ち解けてきたダリア様が、勇気を振り絞るようにウィルの袖を引いていた。
久しぶりに2人の時間を楽しみたかったけれど、ダリア様の勇気を無碍には出来ない。
「分かりました。一緒に行きましょう、ダリア様。」
「え?いいんですか?リルメリア様のお邪魔になりませんか?私...」
「ウィル、ダリア様も一緒にいいかしら?」
「もちろん、君がいいなら。」
下を向いてしまったダリア様をウィルが気遣う。
「ダリア様、ティーナ達にも声をかけてみますか?」
「え?あ、あの。3人だけがいいです。」
まだ皆んなで遊ぶのは早かったかな。
私はウィルに目配せすると、ウィルはダリア様を馬車まで送っていった。
週末、私達は約束通り、王都の中央公園に行くことになった。商業区に近いこの公園は、王都の観光名所になっていて、四季折々の花が絵画のように彩っている。
貴族も訪れるその場所は、見晴らしも良く警備もしやすい。ダリア様も安心して過ごせるだろう。
私は目の前に座るダリア様を見る。
今日は可愛らしい花柄のドレスを着ている。ダリア様の赤髪によく似合っていた。
馬車が公園の入り口に止まった。
ウィルは先に馬車から降りると、次に降りる私に手を貸してくれた。
ダリア様にも手を貸したウィルは、ダリア様を近衛騎士の下へとエスコートする。
すると、ダリア様の足が急に止まった。
「ダリア様?」
何も答えないダリア様は、ウィルの腕にしがみついていた。近くにいた近衛騎士達の表情も硬い。
「ウィル、ダリア様のエスコートをお願い。そのドレスだと歩きづらいでしょうから。」
「分かった。リルは大丈夫?」
「私?私は大丈夫よ?」
私はその場でふわっと回ってみせた。今日は動きやすい淡い紫色のワンピースだ。風を受けてゆっくりと裾のレースが靡く。
周りから感嘆の溜息が聞こえた。朝からレイズと頑張った甲斐があった。ウィルにエスコートしてもらえないのは残念だけど。
「では、美しいレディ。私がエスコートさせていただいても?」
「え?」
私は、差し出された手の先に顔を向けた。
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