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「おはようございます、ダリア様。」

「お、おはようございます。」
髪をハーフアップにしたダリア様が、恥ずかしそうにしながらも笑顔を見せてくれた。

「おはようございます、ダリア様。リル、ルーイ先生が探してたよ?」

「分かったわ。ちょっと行ってくるわね。ウィル、ダリア様をお願い。」

「うん。いってらっしゃい。ダリア様、行きましょうか。」

「は、はい!」
ウィルの笑顔にダリア様が顔を赤くしていた。ウィルの笑顔の破壊力は、今や色気も加わって耐えられる人はいない。

「魅了の魔力でもあるのかしら?」

「ん?」

「何でもないわ。また後でね。」

私は2人に背を向けると足早にルーイ先生の下へ向かった。


 ダリア様が魔法科に編入してきて3週間が経った。
初めのうちはお互いぎこちなかったものの、ティーナの統率力とロイドの明るさによって、今はそれなりに打ち解けている。
偶に、第2王子が来て引っ掻き回して行くけれど。
この前は、皆んなに名前呼びを強制していた。
そんなに名前で呼んで欲しかったのだろうか。




「失礼します。ルーイ先生、お呼びですか?」

「待ってた!すごい待ってたー!昨日さ、リヴァンから連絡が来たんだよ!これこれ!説明して!」

「あっはい。」
リヴァン先生、バラしましたね。 


 私が作った新しい魔法理論は、各地に転移魔法用のポータルを設置することで、誰でも転移魔法が利用出来るというものだった。
以前ルーイ先生が、ウィルに渡した魔道具の応用版だ。

一年前私はやっと、本当にやっと転移魔法を習得することが出来た。一度行った事がある場所という制約があるものの、この魔法があれば人目を気にせず、いつでもどこでも抜け出せた。
でも転移魔法は魔力の消費が激しいため、1日に何度も使用出来ない。
そこで始めた研究から生まれたのが、この理論だった。


「リルちゃん、ポータルの原理は分かったよ。要は特異点を生み出すってことだよね?でもさ、不特定の人間を転移させるのって難しくない?生体情報は?どうやって出口に引っ張るの?いや、この場合はどうなんだ。だから...」
ルーイ先生が自分の思考の世界に入ってしまった。

「先生。自分で使っている転移魔法とはちょっと違うんですよ。」


転移魔法は、転移する人の情報を転移の終着点に設定することで、そこに呼び寄せるという魔法だ。
つまり、知らない人を転移させることは出来ない。
そしてこれが凄く魔力を使う。人間の情報は想像以上に複雑で、繊細な設定が必要なのだ。
だから私は人ではなく、空間に魔法を掛けることにした。

「先生、空間自体を繋ぐんです。それぞれのポータルが特定の場所に繋がるようにするので、誰でも利用可能です。」

「リルちゃん!さすがは僕の弟子だ!やっぱり次の主席宮廷魔法士はリルちゃんしかいないよ!」

「え?それは嫌です。」

「なんでよ⁈」
ルーイ先生が私の両肩を掴んで激しく揺さぶる。本気で気持ち悪い。

「宮廷魔法士になったら定期的に王族から仕事を振られるじゃないですか。私、討伐とかはちょっと。」

私はどうも攻撃魔法が苦手だった。イメージが湧かない。出来ない訳ではないけれど、咄嗟に攻撃に移れない。ルーイ先生曰く、センスが無いそうだ。

「リルちゃんなら、攻撃出来なくても、違う方法で無効化出来そうだけどな。」

うーん。でも、誰かの命令に従って魔法を使う自分が想像出来ないのよね。

「とりあえず、さっきの理論を詳しく!」

ルーイ先生は机へと私を引っ張って行った。






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