上 下
24 / 60
五章「キノコもの申す」

24. 放送業界と通信業界の戦い

しおりを挟む
 ナラオちゃんは家にかえった。お兄ちゃんはアタシが追いだした。
 そして取材もそこそこにして本日は終了。明日また落花傘先生の家で続きをすることになった。
 それでアタシもお風呂に入って部屋でのんびりしてたら、またきた。

「キノコにちょっと聞きたいことがあるんだよ」
「なによ」
「落花傘先生、オレのこと何か言ってなかったか?」
「なにも」
「そうかぁ」

 お兄ちゃん、たぶん取材してもらうことを期待してるのね。ちょっとからかってやろうかしら。

「もしかしてお兄ちゃんも連載小説のモデルになりたいとか?」
「別に」
「そうよね。無職だもんね」
「あのなあキノコ。小説のモデルになるのに、職の有無なんてあんま関係ないんじゃないのか? ニートを題材にしたって構わないんだし」

 まあそれもそうね。だけどね、お兄ちゃんだとね。

「でもお兄ちゃんがでたらコメディになっちゃうよ」
「いや、オレはシリアスだってちゃんとこなせるぞ」
「そうかしら。きっとシリアスが吹きだすわよ」
「お前バカじゃないのか。シリアスは人の名前なんかじゃないんだぞ。吹き出す訳ないだろ」
「そんなことわかってるわよ!」

 もー冗談一つまともに返してくれないんだから。わかってるくせに。ホントにくらしいわあ。

       ◇ ◇ ◇

 昨日に引き続き、落花傘家の客間で取材中。

「――つまり放送業界と通信業界の融合は避けられません」
「そうか」
「てゆうより既に融合してます。もうそんなのは何年も前から主張され続けてきたんですもの」
「ふむ」
「だから今さらって感じなんです。寝ぼけてんなってことです!」
「ふむ」
「ですからアタシがはっきり主張したいのは――」

 てあれ先生寝てる?

「ふにゃ」
「先生、起きてくださいよ。なに寝ちゃってんですかっ! 落花傘先生!」
「は! おお、松茸御飯?」

 だーかーらぁ、寝ぼけてんなっつーの!

「先生、しっかりしてください」
「ふむ。平気だ。放送業界と通信業界との萌える様な熱き戦いについてだな」
「え?」
「それにはやはり双方が萌えきゃらを出すべきだ。萌えーで燃えーなのだ」
「へ?」
「放送業界代表の萌えきゃらは、てれっ
「あのう」
「対する通信業界からは、こみゅっ
「先生?」
「二人とも十一歳の元気一杯電波っ。てれっ娘は白い半袖の体操着と赤いぶるーまー。こみゅっ娘は薄桃色の特製学校水着を着用しておる」
「はあ?」
「てれっ娘は跳び箱の上で尻餅をついて『また失敗しちゃった。てへへ』と云い、こみゅっ娘は浮き板を使った蛙泳ぎの練習で『やあん痛~いぃ。足がつっちゃったよぉ~』と云うのだ。萌えるではないか~。そう思わぬか? おやキノコちゃんは何処へ行ったのだ。もしかして小用かな? あいやいや女性の行き先を詮索してはいかん。ふぉふぉふぉ」

 あーもーダメだぁ。完全ロリコン変態ジジイ作家だわ。
 アタシはイヤになったから、おはるおばあさんに挨拶だけしてかえることにした。

「おおおお、キノコちゃん。ここにおったのか。小用の方はもう済んだのか?」
「違います」
「ふむ。大?」
「だから違うっつーの!」
「おおそうかそうか、月経帯を取り替えておったのだな。あの褌の様な奴を」
「そんなの使ってません! もうそれ以上いったらホントにひっぱたくわよっ!」

 やっぱダメだわ。セクハラ変態エロジジイ作家だわ。

「承知承知。もう云わぬ。まあそれは兎も角としてキノコちゃんにこれを渡そうと思うてな。少ないが取材の謝礼だ」
「あ、そうだった。ギャラでるんでしたね。遠慮なくいただいときます。それとアタシもうかえりますから」
「ふむ。車に気を付ける様にな」
「はあい」

 やれやれ。でもこの祝儀袋大きいわね。どんだけ入ってんのかしら?
 まさかこれで二百円とかってことないわよね?
 そんなだったら、絶対にひっぱたいてやるんだから。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

Last Recrudescence

睡眠者
現代文学
1998年、核兵器への対処法が発明された以来、その故に起こった第三次世界大戦は既に5年も渡った。庶民から大富豪まで、素人か玄人であっても誰もが皆苦しめている中、各国が戦争進行に。平和を自分の手で掴めて届けようとする理想家である村山誠志郎は、辿り着くためのチャンスを得たり失ったりその後、ある事件の仮面をつけた「奇跡」に訪れられた。同時に災厄も生まれ、その以来化け物達と怪獣達が人類を強襲し始めた。それに対して、誠志郎を含めて、「英雄」達が生れて人々を守っている。犠牲が急増しているその惨劇の戦いは人間に「災慝(さいとく)」と呼ばれている。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

濁渦 -ダクカ-

北丘 淳士
大衆娯楽
政治的正しさ、差別のない社会を形成したステラトリス。 そこに生まれた一人の少女フーリエ。 小さい頃に読んだ本から本当の多様性を模索する彼女の青春時代は社会の影響を受け、どこに舵を切っていくのか。 歪みつつある現代と世の中のクリエーターへ送る抒情詩。

処理中です...