120 / 121
【第十四幕】アルデンテ王国の危機
結界を解除して東門を開ける作戦
しおりを挟む
しばらく空を見ていたピクルスは、ある作戦を考えついた。
「結界を解除して、東門を開けて下さる?」
「ラジャーッ!!」
ザラメ軍曹が駆けて行った。
任務に忠実な彼に任せておけば、間違いなく門は開かれる。
チョリソールが、うやうやしく小型無線通信機を差し出した。
「ピクルス大佐、無線で連絡が入っています!」
「そう。とうとう発覚したのね」
ピクルスはこの事態を予期していた。
蒲鉾板のような通信機を受け取り、軽く陽気な口調で応える。
「へろ~、こちらピクルス大佐、どしたの?」
まるで親友同士の気楽な通話が始まるかのようだ。
『ヘロウ、こちらゲーム運営部第四課長レバニイラ』
「あらレバニイラさん、わたくしになにか?」
あえて素知らぬ振りをするピクルス。
『今そちらで進行している遊戯はね、悪の令嬢軍人ピザエスによるチート行為の度が過ぎているため、こちらからの処置を考えているわ。それで、もう一度リセットする予定だけれど、構わないかしら?』
「ピザエスさんのことは、今しばらくわたくしにお任せを!」
『でも手強い相手なのよ、分かっているの?』
「シュアー!」
『それならもう少しお願いするわ。しっかりね』
「ラジャー!!」
戦いは了承された。
通信機がチョリソール大尉の手に返された時、すでに前の前に小豆ゴブリンたちが大勢立ち並んでいた。ピザエスがやってきたのだ。
「ふふふ、この前のお礼にきてやったわ。さあくたばれぇ、ピクルス大佐!」
ピザエスがキノコ爆弾を投げてきた。
「ぐもっ!」
ピクルスの手刀が、二千発もあるキノコ爆弾を一気に吹き飛ばした。さすがはグモアクシス直伝の第二十八番奥義ウィーズル・ウィズ・シクル。
しかし、小豆くらいの大きさだった小豆ゴブリンたちが徐々に巨大化して、今ではカボチャと同じくらいにまで大きくなっている。このままだと、人間並みのサイズになるのも時間の問題である。
「さあチョリソール大尉、届けられた四百連射銃にゴブリン浄化弾を詰めて、騎士隊に持たせなさい。女官たちはバケツに水を汲んで運ぶのです。よろしくて?」
「ラジャー!」
「ラジャーですわ」
「ラジャーですよ」
「ラッジャ!!」
数々のラジャーが飛び交った。いよいよ臨戦態勢が整ったのだ。
「きゃあ!」
だがこの時、ピザエスが女官を一人捕まえてロープで縛っていた。人質に取るつもりなのだ。
「ピザエスさん、その女官を解放なさい」
「ほほう。そうしたら代わりにどうしてくれるって、いうんだい?」
「どうもしませんわ」
「なんだって? 笑わせるんじゃないよ。ひゃっはっははは、ぬぁがっ!」
今まさに戦闘中だというのに、なんとピザエスの口が塞がらなくなったのだ。
この隙に、捕まっていた女官は逃げることができた。
「おやおや、顎が外れまして?」
「ふががぁ~~」
大きく開けた口が閉まらなくなり、ピザエスはすごく困っている。今この瞬間こそ攻撃に出る最大の好機である。
本来の戦いならば敵に情けをかけたりはしない。しかしピクルスは違うのだ。悪を許さないことに容赦はないが、外れた顎にまで罪はない。
「ピザエスさん、顎が戻るまでお待ちしますわ」
「ふがっと、ぜらちんのぜりぃ~~」
フェア・プレイのなんたるかを学ぼうともしないピザエスは、顎が外れたままピクルスにゼラチン・ゼリィ攻撃を仕かけた。
「あなたをお待ちしてあげているというのに、攻撃するなんて卑怯ですわ」
「前にも似たようなこといってやったけど、戦いに卑怯も胡瓜もないんだよ!」
これには温和なピクルスも、ついに堪忍袋の緒が切れた。
「それならそれで、こちらも容赦しませんわ! ぐもっ!!」
旋風が発生して、ピザエスの身体が後方へ二十メートルぶっ飛んだ。
「痛たたたぁ~、ひぃぃ~~」
地面に強く腰を打ちつけたピザエスが苦痛な表情で呻いている。飛ばされた衝撃で、外れていた顎は元に戻ったらしい。
そこへピクルスが余裕の表情で近づいて行く。
「さあピザエスさん、覚悟はよろしくて?」
「くそったれ胡瓜めが!」
追い詰められたピザエスは悪態を吐き、全身から黒い煙を出した。
「またお逃げですのね?」
「今日のところはこれくらいにしておいてやるのさ! 次の攻撃は、明日の午前九時からにしてやるよ。今後は毎朝、あたしたちがお前らの相手してやるんだから有難く思え! ひゃははは~」
こんな負け惜しみの言葉と次回予告を最後に、ピザエスの姿が消えた。得意の黒煙隠遁魔法を使って退散したのだ。
空間には、ゆらゆらと漂う黒煙と、焦げたチーズの匂いのみが残った。
「結界を解除して、東門を開けて下さる?」
「ラジャーッ!!」
ザラメ軍曹が駆けて行った。
任務に忠実な彼に任せておけば、間違いなく門は開かれる。
チョリソールが、うやうやしく小型無線通信機を差し出した。
「ピクルス大佐、無線で連絡が入っています!」
「そう。とうとう発覚したのね」
ピクルスはこの事態を予期していた。
蒲鉾板のような通信機を受け取り、軽く陽気な口調で応える。
「へろ~、こちらピクルス大佐、どしたの?」
まるで親友同士の気楽な通話が始まるかのようだ。
『ヘロウ、こちらゲーム運営部第四課長レバニイラ』
「あらレバニイラさん、わたくしになにか?」
あえて素知らぬ振りをするピクルス。
『今そちらで進行している遊戯はね、悪の令嬢軍人ピザエスによるチート行為の度が過ぎているため、こちらからの処置を考えているわ。それで、もう一度リセットする予定だけれど、構わないかしら?』
「ピザエスさんのことは、今しばらくわたくしにお任せを!」
『でも手強い相手なのよ、分かっているの?』
「シュアー!」
『それならもう少しお願いするわ。しっかりね』
「ラジャー!!」
戦いは了承された。
通信機がチョリソール大尉の手に返された時、すでに前の前に小豆ゴブリンたちが大勢立ち並んでいた。ピザエスがやってきたのだ。
「ふふふ、この前のお礼にきてやったわ。さあくたばれぇ、ピクルス大佐!」
ピザエスがキノコ爆弾を投げてきた。
「ぐもっ!」
ピクルスの手刀が、二千発もあるキノコ爆弾を一気に吹き飛ばした。さすがはグモアクシス直伝の第二十八番奥義ウィーズル・ウィズ・シクル。
しかし、小豆くらいの大きさだった小豆ゴブリンたちが徐々に巨大化して、今ではカボチャと同じくらいにまで大きくなっている。このままだと、人間並みのサイズになるのも時間の問題である。
「さあチョリソール大尉、届けられた四百連射銃にゴブリン浄化弾を詰めて、騎士隊に持たせなさい。女官たちはバケツに水を汲んで運ぶのです。よろしくて?」
「ラジャー!」
「ラジャーですわ」
「ラジャーですよ」
「ラッジャ!!」
数々のラジャーが飛び交った。いよいよ臨戦態勢が整ったのだ。
「きゃあ!」
だがこの時、ピザエスが女官を一人捕まえてロープで縛っていた。人質に取るつもりなのだ。
「ピザエスさん、その女官を解放なさい」
「ほほう。そうしたら代わりにどうしてくれるって、いうんだい?」
「どうもしませんわ」
「なんだって? 笑わせるんじゃないよ。ひゃっはっははは、ぬぁがっ!」
今まさに戦闘中だというのに、なんとピザエスの口が塞がらなくなったのだ。
この隙に、捕まっていた女官は逃げることができた。
「おやおや、顎が外れまして?」
「ふががぁ~~」
大きく開けた口が閉まらなくなり、ピザエスはすごく困っている。今この瞬間こそ攻撃に出る最大の好機である。
本来の戦いならば敵に情けをかけたりはしない。しかしピクルスは違うのだ。悪を許さないことに容赦はないが、外れた顎にまで罪はない。
「ピザエスさん、顎が戻るまでお待ちしますわ」
「ふがっと、ぜらちんのぜりぃ~~」
フェア・プレイのなんたるかを学ぼうともしないピザエスは、顎が外れたままピクルスにゼラチン・ゼリィ攻撃を仕かけた。
「あなたをお待ちしてあげているというのに、攻撃するなんて卑怯ですわ」
「前にも似たようなこといってやったけど、戦いに卑怯も胡瓜もないんだよ!」
これには温和なピクルスも、ついに堪忍袋の緒が切れた。
「それならそれで、こちらも容赦しませんわ! ぐもっ!!」
旋風が発生して、ピザエスの身体が後方へ二十メートルぶっ飛んだ。
「痛たたたぁ~、ひぃぃ~~」
地面に強く腰を打ちつけたピザエスが苦痛な表情で呻いている。飛ばされた衝撃で、外れていた顎は元に戻ったらしい。
そこへピクルスが余裕の表情で近づいて行く。
「さあピザエスさん、覚悟はよろしくて?」
「くそったれ胡瓜めが!」
追い詰められたピザエスは悪態を吐き、全身から黒い煙を出した。
「またお逃げですのね?」
「今日のところはこれくらいにしておいてやるのさ! 次の攻撃は、明日の午前九時からにしてやるよ。今後は毎朝、あたしたちがお前らの相手してやるんだから有難く思え! ひゃははは~」
こんな負け惜しみの言葉と次回予告を最後に、ピザエスの姿が消えた。得意の黒煙隠遁魔法を使って退散したのだ。
空間には、ゆらゆらと漂う黒煙と、焦げたチーズの匂いのみが残った。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる