キュウカンバ伯爵家のピクルス大佐ですわよ!

紅灯空呼

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【第八幕】RPG『奪われた聖剣を取り戻せ!』

ステージ「ビタミンB1」と「ビタミンB2」

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 窮地に追い込まれた土竜たちの前に、とある人間の少女が姿を現して、困惑顔のミゾレイヌに尋ねる。

「なにかお困りかしら?」
「あ、あなたはピクルスさんですね♪」
「シュアー!」
「やっぱりね。ちょうどよかったわ。あなた、最新の戦闘機ブルーカルパッチョで、この山まで飛んできたのですよね?」
「シュアー!」
「でしたら、どうか、この氷土竜のグモラッセくんを、北ヤポンアルプスまで連れて行って貰えないかしら?」
「ラジャー!」

 ピクルスは、さっそくブルーカルパッチョにグモラッセを乗せてやった。モグラテも一緒に乗り込み、すぐに飛び立った。

 最新の戦闘機ブルーカルパッチョは、マッハスリーというハイスピードを出して、あっという間に北ヤポンアルプスに到着した。
 着陸と同時に機体から飛び降りたグモラッセは、氷で身体を冷やして、どうにか一命を取り留めることができた。

「もう平気かしら?」
「はい、ありがとうございます。ええっと、キミは?」
「わたくしは、キュウカンバ‐ピクルスですわ。ウムラジアン大陸のヴェッポン国自衛軍に所属する大佐ですのよ。おほほほ」
「そうですか。助けてくれてありがとう。なにか、お礼をしないと……」
「それなら、グモラッセくん、武器いかが? 扱い方教えますわよ!」

 グモラッセは、少し困った顔をした。

「あのう、ボクら土竜族もぐらぞくは、武器なんて使わないから……」
「おっとと、そうですわね。つい商談を持ちかけてしまいましたわ。おほほほ」
「あ、でも、お金とかでいいのなら、お渡ししますよ」

 グモラッセは、ピクルスとモグラテを連れて自分の家へ向かい、家の中から金貨を三枚運んできてピクルスに渡した。

「これは人間が落としたお金なんだけど、返してあげようと思っても、その相手が見つからないんだ。どうせボクには必要ないから、ピクルスさんにあげるよ」
「まあ、モロキュー・ブルーベリー・ジャム!」

 感謝の意を表しながら、ピクルスは喜んで金貨を受け取った。

「でも、お金だけ貰うのはいけませんし、武器がいらないのでしたら、その代わりに『ジェットフット(小動物用)』と『ターボ・エンジン(小動物用)』を差し上げますわ」
「なにそれ?」
「この靴を履いて地面を蹴ると、高く飛び上がれますの。そして、こちらのターボで飛行が可能ですわよ」

 ジェットフットというのは、小型ジェット機が搭載されていて、両足に装着すると、大ジャンプが可能なのだ。そしてターボ・エンジンを使って、大空を滑空できるのである。

「まあ、それならこの北ヤポンアルプスから遠い、アタシの棲んでいる南ヤポンアルプスまで、すごく簡単に飛んでこられるモグ♪」
「シュアー!」
「そうかあ、それはラッキーだグモ!」

 グモラッセは、大喜びしてジェットフットとターボ・エンジンを貰った。今後は、それらを使うことで、空を飛びモグラテの家まで会いに行くことができる。
 きっと二匹の恋も、これまで以上に深まることだろう。

【LUCKY END】

 ピクルスは、グモラッセに別れを告げてから、モグラテを乗せてブルーカルパッチョで飛び立った。行き先はもちろん南ヤポンアルプス。モグラテを家まで送ってやるためである。
 そして別れ際に、今日のお礼としてモグラテから一枚の地図を受け取った。それには、3rdサードステージの舞台になる場所が記されている。
 エピソード「氷土竜グモラッセと雪土竜モグラテ」で土竜族攻略ルートへ進み、グモラッセの命を救って「LUCKY END」を迎えることが、2ndステージ「ビタミンB1」のクリア条件だったのだ。

 ピクルスは休む間も惜しむかのように、直ちに東の大海のど真ん中に位置するパナプル諸島に向かって飛び立った。そこで、3rdステージ「ビタミンB2」が待っているのだ。
 パナプル諸島は、広い海に囲われた狭い範囲にポツリポツリと少しずつ間を空けて浮かぶ七つの島によって構成されている。そのうちの一つ、タロイモ島の西海岸線に沿って上空をブルーカルパッチョで飛んでいる時、一匹の年老いた海亀が村の子供らしい六人の男の子たちに囲まれているのを、ピクルスが目撃した。
 なにか動物を発見するということは、ステージの重要イベントなのだ。それでブルーカルパッチョを海岸に緊急着陸させた。
 すると子供たちが走って集まってきた。戦闘機が珍しいのだ。

「カッコええ!」
「スンゲぇ!」
「速そうだぁ!!」
「乗りてえの☆」

 子供たちはワイワイと騒いでいる。
 ピクルスが機体から飛び降りて、砂浜に立って手を上げた。

「ヘッロウ、エヴリィ・バッデェ♪」
「ヘロウ!!」
「ヘロォー!!!」

 ピクルスの元気で朗らかな挨拶に対して、子供たちのうちの先頭二人が負けない元気さと明るさで返答した。
 だが彼らの顔は、まるでオッサンだ。それだけならまだしも、匂いがもっと激しくオッサンそのものである。

(もしかして、新魔王ギョーザーズかしら?)

 韮と大蒜と玉葱と挽肉が、1対1対1対2くらいの比率で混ざったような、とても強烈な匂いを嗅いだことで、ピクルスの脳裏には、とある六人組の姿が蘇ってきたのだ。
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