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【第八幕】RPG『奪われた聖剣を取り戻せ!』
六人で一人前? 新魔王ギョーザーズ
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ここはネパ国の山中。
静寂という状態さえも闇に溶け込むような、そんなまったりとした時空間の流れの中に眠っていると、突如甲高い声が耳に入り、ピクルスの目が開かれた。
「はっ☆!?」
「起きんしゃい。起きんかぁオヤジの仇め!」
「こりゃあ、起きろってんが!」
なんとすぐ近くに小さいオッサンたちが六人もいるではないか。彼らの顔はほとんど同じで、しかもどことなく見覚えのある餃子顔なのだ。
「あなたたちは、ええっと……」
「ワイらは、おめえにオヤジを殺された、新魔王ギョーザーズじゃ」
「あ、あの弱かった魔王ギョーザーさんのご令息の方たちですの?」
「こりゃ、弱かったとかって、そげなこついうなやあ!」
「そうばい、オヤジはちょいと油断しちょっただけぞ。ほんにまあ、そんりゃ宇宙一強い惣菜キャラじゃったんべな。その後継になったワイら新魔王ギョーザーズが、おめえなんぞ倒しちゃるから、覚悟しいて、そん首でんも洗ってろっぺ!」
先頭に立っている二人が、ピクルス相手に威勢良く啖呵を切ってくる。その訛りだけは強い。
だが迫力が今一つたりない。なぜなら、顔と匂いはオッサンでも、背の高さがピクルスの三分の一程度だからだ。
「あなたたちは、六人でやっと一人前ですのね?」
「こりゃあ、そこいらのラーメン屋の板に書いたある「餃子一人前【六個】」みてえなこつばぁいうなや! こんでも肉はカゴシマ特級黒豚百パーセント。そいから今朝採ったばっかの韮とアワジシマ産の玉葱を使っとんじゃ。ワイらがこげに小そうても、あんまバカにしちょったら、熱い鉄板の上で炒めつけちゃるぞい」
「今朝収穫したばかりの新鮮素材を使っているのですか――そうですか、そうなりますと、まだ生まれたばかりのベイビーですわね、あなたたち。おほほほ」
「こんりゃあ、ベイビーとかっていうなやあ!」
「やあジロウよ、こえつの挑発さ、乗るなっぺ」
先頭に立つ二人のうちの片方が、いきがっているもう一人を抑止した。
「分かっとおよ、イチロウ兄貴」
「そうか。ようし、サブロウ、シロウ、ゴロウ、ロクロウもええか。いきなりじゃけんども、フォーメーションVシックスで行くぞい。仕度できちょるかえ?」
「がってん!」
「おおう!」
「やあー!」
「せいっ!」
「万端だがや~」
五人の弟たちが、それぞれバラバラな返事をして身構えた。
それらを目の当たりにしたところで一切動じることのないピクルスは、平然とした顔で彼らに話しかける。
「あなたたち、素手でやりますの?」
「そうじゃあ。そいがワイらの流儀じゃけえな」
「そう。でもあなたたちのお父様も、そうしてわたくしの名刀オチタスピで、あっけなく一刀両断されてしまいましてよ。それで、ものは相談ですけれど――」
「その相談ちゅうんは、ぶっちゃけぇなんやね?」
イチロウギョーザーは長兄らしく一番落ち着いている。
「みなさん、武器いかが? 扱い方教えますわよ!」
これには、先ほど兄に注意されたことも忘れたジロウギョウザーと、さらにサブロウギョウザーまでもが前に飛び出し、ピクルスに食ってかかる。
「ごんらあ、魔王に武器勧めてどうするんじゃ!」
「そうじゃ、おめえナニサマのつもりちゅうんじゃ!」
「わたくしは、ヴェッポン国自衛軍のキュウカンバ‐ピクルス大佐ですわよ。伯爵のお父様が武器を売っていますの。ですからあなたたち、武器いかが? 扱い方教えますわよ!」
「ごーんらあぁ、同じこつばあ、いうなっぺ!」
今度は、末っ子のロクロウギョウザーが前に飛び出した。
「いいえ、もう一度いいますわ。武器いかが? 扱い方教えますわよ!」
「二度ならず、三度もいいようちゃあ、どんだけ商売熱心なこつか、おめえっちゅうやっちゃあ!」
これまで冷静だった長兄イチロウギョウザーも、さすがに頭の中まで十分に熱が通ったらしく、前に出ている三人の弟たちを押しのけてピクルスに詰め寄った。
だがそれでもピクルスは動じることなく、まだ営業スマイルを続けている。
「そうですか。商談決裂ですわね。仕方ありませんわ。お望み通り、お相手して差し上げましてよ。さあ、まずはあなた、かかっていらっしゃる?」
「いかいでかぁ、ぢゅわああぁーっ!」
まずイチロウギョーザーが焼き音を上げながら、ピクルスの懐へ飛び込む。
「やあっ!」
瞬時に抜かれたらしいオチタスピが、新魔王ギョーザーズの長兄を真っ二つに斬り裂いた。目にも留まらない速急の刀捌きだった。
「じうぐぁぁぁ~」
イチロウギョーザーは焦げてしまってボロボロと崩れた。
「あっ兄貴ぃー!」
「イチロウ兄貴!」
「に、兄さん!」
「イチロウお兄ぃー!」
「おんどるやぁーっ!」
怒りを露にしたジロウギョウザーが飛び出す。
「はーっ!」
だが、もののゼロコンマ二秒で、やはり一刀両断。
「うぎゃぁぁ~」
「ああっ兄貴ぃー!」
「ジロウ兄貴!」
「ジロウお兄ぃー!」
「おっどれええっーっ!」
サブロウギョウザーが飛び出そうとする。
だが、一人では心細くなって、すぐに後退する。
そして、三男から六男までの四人が揃ってピクルスに立ち向かう。
「ぎっのれええっーっ!」
「よぉんどええっーっ!」
「うんどりゃあぁぁ~!」
「ざあったれがあぁっ!」
それでも結果は同じだ。合計ゼロコンマ八秒ジャストで終わる。
「ざーっぎぃぁ」
「うゆぉょっー」
「よあぇうぁ~」
「ぎらゃざぁぁ」
高温状態で崩れつつある四人から発せられる高音の断末魔が鳴り響く。
ピクルスの方は息一つ乱すことなく、悠然とオチタスピを鞘に納める。
「ですから、あれほど武器をお勧めしましたのよ……ふぅ~」
ひたすら武器を重要に思い、そして武器に感謝するピクルスだ。
ともかく1stステージ「ビタミンA」をクリアできた。次は2ndステージへ進むのだ。
静寂という状態さえも闇に溶け込むような、そんなまったりとした時空間の流れの中に眠っていると、突如甲高い声が耳に入り、ピクルスの目が開かれた。
「はっ☆!?」
「起きんしゃい。起きんかぁオヤジの仇め!」
「こりゃあ、起きろってんが!」
なんとすぐ近くに小さいオッサンたちが六人もいるではないか。彼らの顔はほとんど同じで、しかもどことなく見覚えのある餃子顔なのだ。
「あなたたちは、ええっと……」
「ワイらは、おめえにオヤジを殺された、新魔王ギョーザーズじゃ」
「あ、あの弱かった魔王ギョーザーさんのご令息の方たちですの?」
「こりゃ、弱かったとかって、そげなこついうなやあ!」
「そうばい、オヤジはちょいと油断しちょっただけぞ。ほんにまあ、そんりゃ宇宙一強い惣菜キャラじゃったんべな。その後継になったワイら新魔王ギョーザーズが、おめえなんぞ倒しちゃるから、覚悟しいて、そん首でんも洗ってろっぺ!」
先頭に立っている二人が、ピクルス相手に威勢良く啖呵を切ってくる。その訛りだけは強い。
だが迫力が今一つたりない。なぜなら、顔と匂いはオッサンでも、背の高さがピクルスの三分の一程度だからだ。
「あなたたちは、六人でやっと一人前ですのね?」
「こりゃあ、そこいらのラーメン屋の板に書いたある「餃子一人前【六個】」みてえなこつばぁいうなや! こんでも肉はカゴシマ特級黒豚百パーセント。そいから今朝採ったばっかの韮とアワジシマ産の玉葱を使っとんじゃ。ワイらがこげに小そうても、あんまバカにしちょったら、熱い鉄板の上で炒めつけちゃるぞい」
「今朝収穫したばかりの新鮮素材を使っているのですか――そうですか、そうなりますと、まだ生まれたばかりのベイビーですわね、あなたたち。おほほほ」
「こんりゃあ、ベイビーとかっていうなやあ!」
「やあジロウよ、こえつの挑発さ、乗るなっぺ」
先頭に立つ二人のうちの片方が、いきがっているもう一人を抑止した。
「分かっとおよ、イチロウ兄貴」
「そうか。ようし、サブロウ、シロウ、ゴロウ、ロクロウもええか。いきなりじゃけんども、フォーメーションVシックスで行くぞい。仕度できちょるかえ?」
「がってん!」
「おおう!」
「やあー!」
「せいっ!」
「万端だがや~」
五人の弟たちが、それぞれバラバラな返事をして身構えた。
それらを目の当たりにしたところで一切動じることのないピクルスは、平然とした顔で彼らに話しかける。
「あなたたち、素手でやりますの?」
「そうじゃあ。そいがワイらの流儀じゃけえな」
「そう。でもあなたたちのお父様も、そうしてわたくしの名刀オチタスピで、あっけなく一刀両断されてしまいましてよ。それで、ものは相談ですけれど――」
「その相談ちゅうんは、ぶっちゃけぇなんやね?」
イチロウギョーザーは長兄らしく一番落ち着いている。
「みなさん、武器いかが? 扱い方教えますわよ!」
これには、先ほど兄に注意されたことも忘れたジロウギョウザーと、さらにサブロウギョウザーまでもが前に飛び出し、ピクルスに食ってかかる。
「ごんらあ、魔王に武器勧めてどうするんじゃ!」
「そうじゃ、おめえナニサマのつもりちゅうんじゃ!」
「わたくしは、ヴェッポン国自衛軍のキュウカンバ‐ピクルス大佐ですわよ。伯爵のお父様が武器を売っていますの。ですからあなたたち、武器いかが? 扱い方教えますわよ!」
「ごーんらあぁ、同じこつばあ、いうなっぺ!」
今度は、末っ子のロクロウギョウザーが前に飛び出した。
「いいえ、もう一度いいますわ。武器いかが? 扱い方教えますわよ!」
「二度ならず、三度もいいようちゃあ、どんだけ商売熱心なこつか、おめえっちゅうやっちゃあ!」
これまで冷静だった長兄イチロウギョウザーも、さすがに頭の中まで十分に熱が通ったらしく、前に出ている三人の弟たちを押しのけてピクルスに詰め寄った。
だがそれでもピクルスは動じることなく、まだ営業スマイルを続けている。
「そうですか。商談決裂ですわね。仕方ありませんわ。お望み通り、お相手して差し上げましてよ。さあ、まずはあなた、かかっていらっしゃる?」
「いかいでかぁ、ぢゅわああぁーっ!」
まずイチロウギョーザーが焼き音を上げながら、ピクルスの懐へ飛び込む。
「やあっ!」
瞬時に抜かれたらしいオチタスピが、新魔王ギョーザーズの長兄を真っ二つに斬り裂いた。目にも留まらない速急の刀捌きだった。
「じうぐぁぁぁ~」
イチロウギョーザーは焦げてしまってボロボロと崩れた。
「あっ兄貴ぃー!」
「イチロウ兄貴!」
「に、兄さん!」
「イチロウお兄ぃー!」
「おんどるやぁーっ!」
怒りを露にしたジロウギョウザーが飛び出す。
「はーっ!」
だが、もののゼロコンマ二秒で、やはり一刀両断。
「うぎゃぁぁ~」
「ああっ兄貴ぃー!」
「ジロウ兄貴!」
「ジロウお兄ぃー!」
「おっどれええっーっ!」
サブロウギョウザーが飛び出そうとする。
だが、一人では心細くなって、すぐに後退する。
そして、三男から六男までの四人が揃ってピクルスに立ち向かう。
「ぎっのれええっーっ!」
「よぉんどええっーっ!」
「うんどりゃあぁぁ~!」
「ざあったれがあぁっ!」
それでも結果は同じだ。合計ゼロコンマ八秒ジャストで終わる。
「ざーっぎぃぁ」
「うゆぉょっー」
「よあぇうぁ~」
「ぎらゃざぁぁ」
高温状態で崩れつつある四人から発せられる高音の断末魔が鳴り響く。
ピクルスの方は息一つ乱すことなく、悠然とオチタスピを鞘に納める。
「ですから、あれほど武器をお勧めしましたのよ……ふぅ~」
ひたすら武器を重要に思い、そして武器に感謝するピクルスだ。
ともかく1stステージ「ビタミンA」をクリアできた。次は2ndステージへ進むのだ。
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