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【第七幕】戦争勃発の危機と神薬の在り処
追福『神攻略戦』の最終物語
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高級な衣服を、べちゃんベチャのグっチョンぐチョンにされながらも、女の子にとことん優しいシャンペンハウアーだ。ニクコの頭を、洗練されたソフトな手捌きで撫で続けている。
キャラメルNo.5の甘い香りに包まれて一頻り泣いたニクコが、漸く顔を上げたその時、涙と鼻水にまみれた鼻孔がシャンペンハウアーの目に入り、鼻孔フェチという珍しい属性を持つ彼の心はトキめいた。これにより、ニクコのシャンペンハウアーに対する接近度数が295に達した。婚姻終遊だ。
ショコレットを抱いているブタノピロシキも「この女性を生涯抱き続けたい症候群」を発症している。それでショコレットの対ブタノピロシキ接近度数が、なんとなんと、驚くべき数値、四万五千飛んで十にまで跳ね上がったのだ。ぶっ飛びの婚姻終遊である。
そしてそして、生まれて初めて女の子を胸に抱くポンズヒコ。柔らかくて温かい身体に、胸バクワク・頭ズキマギの発煙状態に至っている。いうまでもなくササミの対ポンズヒコ接近度数が333に達したので、もちろん婚姻終遊。
神攻略戦始まって以来の「神攻略達成者」が出たのだ。しかもトリプル同時婚姻終遊なのである。このように凄まじくもお目出たいことは、ヤポン神国史上他に類を見ない快挙といえよう。
「やったなあ、おい!」
ヨツバが自分のことのように喜び、叫んだ。
「ニクコさんとササミさん、ショコレットも、お目出とう♪」
「お目出たいサー!!」
ピクルスとシュガーも祝福している。
だが、一人だけ煮え切らない男がいる。
「うっ、サ、ササミさん……」
「センベイ、未練タラたあラぁとか見っともないぜ。男らしく祝ってやれ」
「うるさい、砂かけジジイ!」
「なんだとお!」
「相手にするなサー、こんなチキン」
「だな。チキンはササミに羽根すらも触れられない、か」
「うう……基本的鳥権の侵害だぁ!」
涙を流して訴えるセンベイ。誰一人として胸を貸す者はいない。
だが、妖精ピクルスが飛んで行き、小さな手で彼の頭を撫ぜる。
「元気をお出しになって、センベイさん」
「あぁありがとう、ピクルスさんは優しいな、ううぅ……」
慰められたことでセンベイの気も静まり、チキン呼ばわりを理由に起こそうとした訴訟は、どうにかトリ下げになった。
「ところで婚姻終遊を迎えた三人は、どうすんだ? 卒院して挙式するか、それとも続けるかだぜ」
「アタイは挙式!」
「私も」
「私も」
全員即決した。
「ならば、花嫁衣裳に着替えるが良い。女子更衣室へ行くのじゃ。そこで女性の用務員さん、といってもミンチオの奥さんじゃからお婆さんじゃが、しっかり準備を整えて待っておる。フッそそ」
「えっホント!?」
「花嫁衣裳ですって!」
「まあ、どんなのかしら☆」
三人は競い合うように教室を飛び出し、駆けて行く。
「おいおい、廊下は走るなよ!!」
ヨツバの注意を聞く耳は、六つのうち一つもなかった。
しばらくしてニクコが戻ってきた。紅白のウエディング・ドレスだ。本物の薔薇の花で作った花冠を頭に載せている。
「おお麗しのニクちゃん。とっても可愛らしいよ、マイ・ローズ・ハニー♪」
早速シャンペンハウアーが、ニクコを抱き上げようとする。
「シャンペンハウアーさん、待て待て! 式が始まるまで我慢だぜ」
ヨツバが止めたので、お嫁さん抱っこはお預けになった。
続いて、ショコレットとササミが戻ってきた。白いヤポン神国式花嫁衣裳を着たショコレットは、大人っぽく艶やかだ。ササミは桃色のウエディング・ドレスで、いつもの十二単風衣装姿とは違う可愛らしさがある。
「よおし、三人花嫁の揃い踏みだ」
「おいおいヨツバ、スモウじゃないサー!」
シュガーがヨツバに突っ張りを食らわす振りをしながらの突っ込みを入れて、皆が一斉に笑った。三組同時挙式の始まりだ。
センベイが鍵盤ハーモニカを使って、メンドリ‐スウドンの『結婚突進曲』という有名な曲、ぷぅあパパぱぁ~ン♪ というのを演奏し始めた。
「おっセンベイ、気が利くなあ」
「チョッチ見直したサー」
「僕も男だ。潔く笑ってササミさんを追福するよ」
こうして挙式が進み、いよいよ愛の口づけタイムを迎えた。各新郎が、新婦の唇に自分の唇を重ねて、それからガッツリと抱き合う。
だが、この時だ。
ニクコとササミの姿が薄くぼやけて、間もなく見えなくなった。ショコレットも既にブタノピロシキの腕の中からいなくなっている。
三人が花嫁衣裳もろとも消えてしまったのだ。
「これで『神攻略戦』の最終物語はお仕舞いじゃ。フッそ」
「ニクコさんとササミさん、一体どうなりましたの? ショコレットも!」
「知らなかったのか。成仏したんだぜ」
ヨツバの言葉を聞いて、ピクルスは血の気が引くのを感じた。
「成仏ですって!?」
「そうじゃ。この『神攻略戦』という遊戯は、恋も知らず不幸な事故で儚くも命の華を散らした、そんな乙女たちの魂を、弔ってやる制度なのじゃ」
「え*」
ピクルスは言葉も飛翔力も失い、ヒラリと床へ舞い落ちてしまった。
キャラメルNo.5の甘い香りに包まれて一頻り泣いたニクコが、漸く顔を上げたその時、涙と鼻水にまみれた鼻孔がシャンペンハウアーの目に入り、鼻孔フェチという珍しい属性を持つ彼の心はトキめいた。これにより、ニクコのシャンペンハウアーに対する接近度数が295に達した。婚姻終遊だ。
ショコレットを抱いているブタノピロシキも「この女性を生涯抱き続けたい症候群」を発症している。それでショコレットの対ブタノピロシキ接近度数が、なんとなんと、驚くべき数値、四万五千飛んで十にまで跳ね上がったのだ。ぶっ飛びの婚姻終遊である。
そしてそして、生まれて初めて女の子を胸に抱くポンズヒコ。柔らかくて温かい身体に、胸バクワク・頭ズキマギの発煙状態に至っている。いうまでもなくササミの対ポンズヒコ接近度数が333に達したので、もちろん婚姻終遊。
神攻略戦始まって以来の「神攻略達成者」が出たのだ。しかもトリプル同時婚姻終遊なのである。このように凄まじくもお目出たいことは、ヤポン神国史上他に類を見ない快挙といえよう。
「やったなあ、おい!」
ヨツバが自分のことのように喜び、叫んだ。
「ニクコさんとササミさん、ショコレットも、お目出とう♪」
「お目出たいサー!!」
ピクルスとシュガーも祝福している。
だが、一人だけ煮え切らない男がいる。
「うっ、サ、ササミさん……」
「センベイ、未練タラたあラぁとか見っともないぜ。男らしく祝ってやれ」
「うるさい、砂かけジジイ!」
「なんだとお!」
「相手にするなサー、こんなチキン」
「だな。チキンはササミに羽根すらも触れられない、か」
「うう……基本的鳥権の侵害だぁ!」
涙を流して訴えるセンベイ。誰一人として胸を貸す者はいない。
だが、妖精ピクルスが飛んで行き、小さな手で彼の頭を撫ぜる。
「元気をお出しになって、センベイさん」
「あぁありがとう、ピクルスさんは優しいな、ううぅ……」
慰められたことでセンベイの気も静まり、チキン呼ばわりを理由に起こそうとした訴訟は、どうにかトリ下げになった。
「ところで婚姻終遊を迎えた三人は、どうすんだ? 卒院して挙式するか、それとも続けるかだぜ」
「アタイは挙式!」
「私も」
「私も」
全員即決した。
「ならば、花嫁衣裳に着替えるが良い。女子更衣室へ行くのじゃ。そこで女性の用務員さん、といってもミンチオの奥さんじゃからお婆さんじゃが、しっかり準備を整えて待っておる。フッそそ」
「えっホント!?」
「花嫁衣裳ですって!」
「まあ、どんなのかしら☆」
三人は競い合うように教室を飛び出し、駆けて行く。
「おいおい、廊下は走るなよ!!」
ヨツバの注意を聞く耳は、六つのうち一つもなかった。
しばらくしてニクコが戻ってきた。紅白のウエディング・ドレスだ。本物の薔薇の花で作った花冠を頭に載せている。
「おお麗しのニクちゃん。とっても可愛らしいよ、マイ・ローズ・ハニー♪」
早速シャンペンハウアーが、ニクコを抱き上げようとする。
「シャンペンハウアーさん、待て待て! 式が始まるまで我慢だぜ」
ヨツバが止めたので、お嫁さん抱っこはお預けになった。
続いて、ショコレットとササミが戻ってきた。白いヤポン神国式花嫁衣裳を着たショコレットは、大人っぽく艶やかだ。ササミは桃色のウエディング・ドレスで、いつもの十二単風衣装姿とは違う可愛らしさがある。
「よおし、三人花嫁の揃い踏みだ」
「おいおいヨツバ、スモウじゃないサー!」
シュガーがヨツバに突っ張りを食らわす振りをしながらの突っ込みを入れて、皆が一斉に笑った。三組同時挙式の始まりだ。
センベイが鍵盤ハーモニカを使って、メンドリ‐スウドンの『結婚突進曲』という有名な曲、ぷぅあパパぱぁ~ン♪ というのを演奏し始めた。
「おっセンベイ、気が利くなあ」
「チョッチ見直したサー」
「僕も男だ。潔く笑ってササミさんを追福するよ」
こうして挙式が進み、いよいよ愛の口づけタイムを迎えた。各新郎が、新婦の唇に自分の唇を重ねて、それからガッツリと抱き合う。
だが、この時だ。
ニクコとササミの姿が薄くぼやけて、間もなく見えなくなった。ショコレットも既にブタノピロシキの腕の中からいなくなっている。
三人が花嫁衣裳もろとも消えてしまったのだ。
「これで『神攻略戦』の最終物語はお仕舞いじゃ。フッそ」
「ニクコさんとササミさん、一体どうなりましたの? ショコレットも!」
「知らなかったのか。成仏したんだぜ」
ヨツバの言葉を聞いて、ピクルスは血の気が引くのを感じた。
「成仏ですって!?」
「そうじゃ。この『神攻略戦』という遊戯は、恋も知らず不幸な事故で儚くも命の華を散らした、そんな乙女たちの魂を、弔ってやる制度なのじゃ」
「え*」
ピクルスは言葉も飛翔力も失い、ヒラリと床へ舞い落ちてしまった。
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