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【3章】フィクションvs最先端科学
18.ペガサス級の超高性能ウソ発見器
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正男と桜の「それじゃなんとかかんとかという可能性は?」に対する「確率0です」という頭脳戦は終結の兆しを見せている。あと一押しだ。
なかなか返事がこないので、再び桜が問いかける。
「どうしましたか? もう終わりですか?」
「……いや、まだだ。さっきお前、言ったよな?」
「お前とはなんですか、失礼でしょ?」
「いや、名前知らねえし」
「吉兆寺ですよ」
「そうか、じゃあ吉兆寺、さっき言ったよな?」
「呼び捨てですか、失礼でしょ?」
「わかったよ。くそ!」
「くそとはなんですか、失礼でしょ? しかも下品よ」
「スマン、悪かった。けど今のくそは、オレ自身に言ったんだ」
「そうですか。紛らわしい」
「もーいちいち、やりにくいんだよ!」
「もうやめますか?」
明らかに桜が優勢だ。
これは正男をイラつかせる、いわば心理作戦なのである。
「やめねえし!」
「そうですか。ではさっさと続けてください」
「わかってるよ。そっちが止めてるんだろ!」
「では止めません。それで、私がなにを言ったというのですか?」
「吉兆寺さんのいる宇宙では、あらゆる宇宙に起こり得る、すべての物理現象を検証済みだって話だ。けどなあ、そんな超弩級なこと、マジでできんのかよ。それこそ、無限に存在する一つ一つの宇宙に行って確かめたのか?」
正男の語気が強くなっている。言葉に自信があるようだ。
それでも、桜はまだ余裕でいる。一貫して冷静なのだ。
「では、逆にお尋ねします。実数を定義域とする2次関数yイコールxの2乗についてです。あなたはyの最小値を答えられますか?」
「yイコール0だ」
「正解です。さて、あなたは無限に存在する実数に対して、関数値を一つ一つ確かめて答えたのですか?」
「いや違う。高校レベルの、数学の解法を使って答えた。くそ!」
「下品です」
「スマン!」
「私の宇宙でも、事象を一つ一つ確かめなくても検証が可能となるような理論と実験方法が確立されているのです。それらについて詳しくご説明いたしましょうか?」
「いいえ、結構」
「まだ続けますか?」
「いいえ、もう結構」
正男は弾を撃ち尽くしたようだ。
「では逮捕して、直ちに刑務所へお送りします」
「マジ?」
「はい」
「裁判とかは?」
「私が行います」
「??」
桜が、ジャケットの胸ポケットからボールペンのようなものを取り出した。
それを垂直に立てて、正男の顔へ近づける。
「大森正男さん、これの先端を見てください」
「なっ、なんだ、どうするつもりだ!? まさか、光線とか出るのか?」
「正解です。チカチカと点滅します」
「いやいや、クイズやってんじゃねえし! というか、チカチカしたらオレどうなるよ? それなんなんだ!?」
「ペガサス級のハッカーが開発した超高性能ウソ発見器です」
「はあ?」
あたふたしていた正男が、今度は呆れ顔になって脱力した。
そして少しばかりの安堵の表情を見せ、すぐに不服そうな表情に変わる。
「おいおい吉兆寺さん、それはないだろ!」
「あります。ここに実在しているのです。あなたには見えませんか?」
「いやいや、そういう意味じゃねえよ! そんなもの、今さら出すのかって言いたいんだ、オレは。それさえありゃ、オレがウソついてないことなんか、速攻わかることじゃんか。だったら最初から出してくれって話だよ! 今までさんざん数学問答とかやらせやがって、あんなのいらねえし!」
「まず一つ指摘しておきます。これは、あなたがウソをついていないことではなく、ウソをついていることを証明する測定装置です」
「あはは、そうかそうか、そんじゃやってみろよ。オレはウソついてねえ。論より証拠だ、さあやれ!」
どうやら正男は、そうとう自信があるようだ。
そういう態度を見せられても、桜はまったく動じない。
「では始めます」
「あ、やっぱ、ちょ、タイム!」
「いいえダメよ。800分の1秒のタイムすら認めるわけにはいきませんから」
「いやいや、もう800分の1秒すぎたし」
「ではタイム終了ですね?」
「いやいや、タイムできてねえし! 念のために確認しときたいんだよ!」
「なにを?」
「その装置がチカチカしたら、オレの頭に激痛が走ったりするのか?」
「ちょっと痛いですけど我慢してください」
「マジでちょっとだけ?」
「はい。できませんか? 男の子でしょ?」
「オレ我慢できる! やってくれ」
男の子らしいところを見せたいようだ。
なかなか返事がこないので、再び桜が問いかける。
「どうしましたか? もう終わりですか?」
「……いや、まだだ。さっきお前、言ったよな?」
「お前とはなんですか、失礼でしょ?」
「いや、名前知らねえし」
「吉兆寺ですよ」
「そうか、じゃあ吉兆寺、さっき言ったよな?」
「呼び捨てですか、失礼でしょ?」
「わかったよ。くそ!」
「くそとはなんですか、失礼でしょ? しかも下品よ」
「スマン、悪かった。けど今のくそは、オレ自身に言ったんだ」
「そうですか。紛らわしい」
「もーいちいち、やりにくいんだよ!」
「もうやめますか?」
明らかに桜が優勢だ。
これは正男をイラつかせる、いわば心理作戦なのである。
「やめねえし!」
「そうですか。ではさっさと続けてください」
「わかってるよ。そっちが止めてるんだろ!」
「では止めません。それで、私がなにを言ったというのですか?」
「吉兆寺さんのいる宇宙では、あらゆる宇宙に起こり得る、すべての物理現象を検証済みだって話だ。けどなあ、そんな超弩級なこと、マジでできんのかよ。それこそ、無限に存在する一つ一つの宇宙に行って確かめたのか?」
正男の語気が強くなっている。言葉に自信があるようだ。
それでも、桜はまだ余裕でいる。一貫して冷静なのだ。
「では、逆にお尋ねします。実数を定義域とする2次関数yイコールxの2乗についてです。あなたはyの最小値を答えられますか?」
「yイコール0だ」
「正解です。さて、あなたは無限に存在する実数に対して、関数値を一つ一つ確かめて答えたのですか?」
「いや違う。高校レベルの、数学の解法を使って答えた。くそ!」
「下品です」
「スマン!」
「私の宇宙でも、事象を一つ一つ確かめなくても検証が可能となるような理論と実験方法が確立されているのです。それらについて詳しくご説明いたしましょうか?」
「いいえ、結構」
「まだ続けますか?」
「いいえ、もう結構」
正男は弾を撃ち尽くしたようだ。
「では逮捕して、直ちに刑務所へお送りします」
「マジ?」
「はい」
「裁判とかは?」
「私が行います」
「??」
桜が、ジャケットの胸ポケットからボールペンのようなものを取り出した。
それを垂直に立てて、正男の顔へ近づける。
「大森正男さん、これの先端を見てください」
「なっ、なんだ、どうするつもりだ!? まさか、光線とか出るのか?」
「正解です。チカチカと点滅します」
「いやいや、クイズやってんじゃねえし! というか、チカチカしたらオレどうなるよ? それなんなんだ!?」
「ペガサス級のハッカーが開発した超高性能ウソ発見器です」
「はあ?」
あたふたしていた正男が、今度は呆れ顔になって脱力した。
そして少しばかりの安堵の表情を見せ、すぐに不服そうな表情に変わる。
「おいおい吉兆寺さん、それはないだろ!」
「あります。ここに実在しているのです。あなたには見えませんか?」
「いやいや、そういう意味じゃねえよ! そんなもの、今さら出すのかって言いたいんだ、オレは。それさえありゃ、オレがウソついてないことなんか、速攻わかることじゃんか。だったら最初から出してくれって話だよ! 今までさんざん数学問答とかやらせやがって、あんなのいらねえし!」
「まず一つ指摘しておきます。これは、あなたがウソをついていないことではなく、ウソをついていることを証明する測定装置です」
「あはは、そうかそうか、そんじゃやってみろよ。オレはウソついてねえ。論より証拠だ、さあやれ!」
どうやら正男は、そうとう自信があるようだ。
そういう態度を見せられても、桜はまったく動じない。
「では始めます」
「あ、やっぱ、ちょ、タイム!」
「いいえダメよ。800分の1秒のタイムすら認めるわけにはいきませんから」
「いやいや、もう800分の1秒すぎたし」
「ではタイム終了ですね?」
「いやいや、タイムできてねえし! 念のために確認しときたいんだよ!」
「なにを?」
「その装置がチカチカしたら、オレの頭に激痛が走ったりするのか?」
「ちょっと痛いですけど我慢してください」
「マジでちょっとだけ?」
「はい。できませんか? 男の子でしょ?」
「オレ我慢できる! やってくれ」
男の子らしいところを見せたいようだ。
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