16 / 20
ポータルビレッジ。
7.ちぢんでるぅ?
しおりを挟むオリーブは立ち上がってシルバーに覆い被らんばかりに詰め寄った。シルバーが珍しくたじたじとしている。
「今、なんて?」
「変態は……別物?」
「違う、名前みたいなの」
「……目黒?」
間違いない、と頷きながら、オリーブは椅子に掛け直し、脚と腕を組んだ。
まさか? オレは緊張して膝の上で拳を握る。
「通報があったのだよ。狭間で漂っている存在があるが、回収してくれないかとね。もちろん研究熱心なミーが断るはずなかろう? 回収したのは全身黒尽くめの人間だった」
「……黒尽くめ……っ」
オレはシルバーと顔を見合わせた。
「ほお、知り合いだったのかね。それは僥倖」
「いやいや、全然っ。そいつから逃げるために飛んだようなモノだからっ」
シルバーが手をぶんぶん振って否定した。
「アクシデントでというのは、そういう状況だったのですか」
「オレがなかなか戻れなかったの、そいつのせいっ。首だけ監禁されてたんだぞっ」
「そういえば、シルバーくん、身体はどうしたんですか」
「……どこかの狭間にある……はず……」
俯いて言うシルバーに、はっとして目を逸らした。そうだ。この身体は作り物だった。本当の自分の身体が、どこでどうなっているのか、不安でたまらないはずだ。
「だから、オリーブちゃんに会いたかったんだ。それっぽい報告は入ってねぇか?」
ふるふると頭を振るオリーブは、指を複雑に回して宙にスクリーンモニタのようなモノを浮き出させた。こいつら、なんでも自在だな。怖いくらいだ……怖い?
浮き出した空中ディスプレイには、部屋の隅で膝を抱えて丸くなっている男が映し出されていた。オレもいた、ああいう部屋だ。監視モニターのような映像だが、そこに映っていた男は確かに目黒のようだった。
だが。
「ちょ、なんかちっちぇえなっ」
そう、小さいのだ。服がだぶだふでおとなの服を着た小学生のようにすら見える。
別人のような変わりっぷりなのに、どうしてすぐに、間違いなく目黒だと思えたんだろう。黒尽くめだったという先入観?
「どうも飛ばされた時の衝撃のせいで、記憶が混濁しているようなのだよ。名前は聞き出せたのだがね。こういう場合、基本的には軸が判明したら治癒次第送り返す。ただ時折、シルバー、と探すように視線を泳がせながら呟いていた。それで、知り合いなのではと思ってな」
「イヤな知り合いだけどなっ」
「……あれ? ちょっと待って? 軸とかいう世界がわかったら、送り返せる?」
ふたりは、やや複雑さを含んだ目つきで、ゆっくりと、頷いた。
「もしかしなくても、オレのところから来る人、少なくない……?」
「比較的多いぞ。解析済みだ。言語コードも魔術や魔法も、原理は同じであるからな。魔法使いは言語を取り込むのが早いとの研究結果も出ておるのだ。シルバーくんはかなり優秀なのだぞ」
「優秀……だから態度でかいのか……」
「うるせえ」
変なところに納得してしまったが、それどころじゃない。
「……オレ、帰して貰える……んだろうか?」
ふたりは顔を見合わせると、首を横に振った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる