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ポータルビレッジ。

7.ちぢんでるぅ?

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 オリーブは立ち上がってシルバーに覆い被らんばかりに詰め寄った。シルバーが珍しくたじたじとしている。

「今、なんて?」
「変態は……別物?」
「違う、名前みたいなの」
「……目黒?」

 間違いない、と頷きながら、オリーブは椅子に掛け直し、脚と腕を組んだ。
 まさか? オレは緊張して膝の上で拳を握る。

「通報があったのだよ。狭間で漂っている存在があるが、回収してくれないかとね。もちろん研究熱心なミーが断るはずなかろう? 回収したのは全身黒尽くめの人間だった」
「……黒尽くめ……っ」

 オレはシルバーと顔を見合わせた。

「ほお、知り合いだったのかね。それは僥倖」
「いやいや、全然っ。そいつから逃げるために飛んだようなモノだからっ」

 シルバーが手をぶんぶん振って否定した。

「アクシデントでというのは、そういう状況だったのですか」
「オレがなかなか戻れなかったの、そいつのせいっ。首だけ監禁されてたんだぞっ」
「そういえば、シルバーくん、身体はどうしたんですか」
「……どこかの狭間にある……はず……」

 俯いて言うシルバーに、はっとして目を逸らした。そうだ。この身体は作り物だった。本当の自分の身体が、どこでどうなっているのか、不安でたまらないはずだ。

「だから、オリーブちゃんに会いたかったんだ。それっぽい報告は入ってねぇか?」

 ふるふると頭を振るオリーブは、指を複雑に回して宙にスクリーンモニタのようなモノを浮き出させた。こいつら、なんでも自在だな。怖いくらいだ……怖い?
 浮き出した空中ディスプレイには、部屋の隅で膝を抱えて丸くなっている男が映し出されていた。オレもいた、ああいう部屋だ。監視モニターのような映像だが、そこに映っていた男は確かに目黒のようだった。
 だが。

「ちょ、なんかちっちぇえなっ」

 そう、小さいのだ。服がだぶだふでおとなの服を着た小学生のようにすら見える。
 別人のような変わりっぷりなのに、どうしてすぐに、間違いなく目黒だと思えたんだろう。黒尽くめだったという先入観?

「どうも飛ばされた時の衝撃のせいで、記憶が混濁しているようなのだよ。名前は聞き出せたのだがね。こういう場合、基本的には軸が判明したら治癒次第送り返す。ただ時折、シルバー、と探すように視線を泳がせながら呟いていた。それで、知り合いなのではと思ってな」
「イヤな知り合いだけどなっ」
「……あれ? ちょっと待って? 軸とかいう世界がわかったら、送り返せる?」

 ふたりは、やや複雑さを含んだ目つきで、ゆっくりと、頷いた。

「もしかしなくても、オレのところから来る人、少なくない……?」
「比較的多いぞ。解析済みだ。言語コードも魔術や魔法も、原理は同じであるからな。魔法使いは言語を取り込むのが早いとの研究結果も出ておるのだ。シルバーくんはかなり優秀なのだぞ」
「優秀……だから態度でかいのか……」
「うるせえ」

 変なところに納得してしまったが、それどころじゃない。

「……オレ、帰して貰える……んだろうか?」

 ふたりは顔を見合わせると、首を横に振った。

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