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第20話 クレーンゲーム
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「ほら、ぼさっとしてない! 私の時間を無駄にしないで!」
紅映は基本的に不機嫌だった。
かと言って近づこうとすれば。
「ちょっと、近寄り過ぎよ! 私の視界に映らないで」
どうしろと。
気配遮断スキルでもつけて出直して来いってか?
オレはできなくはないけど、一般モブ相手なら相当無茶な要求だからな?
「ん……くぅ……ふっ、いって……ああんっ」
紅映が一つのゲーム機の前で声を漏らす。
クレーンゲームだ。
中には大きめのぬいぐるみが入っていて、紅映はその中でも白色のウサギを狙っているようだった。
「なにこれ、壊れてんじゃないの?」
アームでぬいぐるみの頭を捕らえるまではうまくいくのに、まったく取れる気配のない状況に悪態をつく紅映。
「もう! どうしてよ!!」
紅映は何度かチャレンジしたが、ぬいぐるみは最初の位置から動いていない。紅映の機嫌が急降下していく。
「……そうだ。あんた、賭けをしない?」
「賭け?」
「そう。残りチャレンジ回数は1回。この1回であんたがウサちゃんを取れたら待遇をちょーっとくらい改善してあげるわ。その代わり、とれなかったら今日のお金は全部あんたが出しなさい!」
「いいけど」
「ふん! 怖いのかしら? お兄ちゃんがすごいすごいっていうからどんな奴かと思ったら……って、え? 今、なんて言ったの?」
「いいけどって言ったけど?」
【アドミニストレータ】のおかげでお金には困ってないし。ゲームで遊ぶだけで無限に金策できるって神だよな。
「い、言ったわね! 後でやっぱりなしって言っても許さないんだからね!」
「安心しろ。男に二言はないから」
「……っ!」
一度クレーンゲームを横方向含めてぐるりと見渡す。なるほどわからん。クレーンゲームとか遊んだことないし。
(ぶっちゃけ取れなかったら取れなかったでいいんだけど、どうせなら取りたいよな)
女の子の前ではカッコよくありたい。
それが男ってもんだと思うの。
(【ラプラス】――)
スキルを発動した瞬間、オレはクレーンゲームのすべてを把握した。
わかる、わかるぞ。
どのタイミングでどのボタンをどれだけ押せばいいのかが手に取るようにわかる。
さすが【ラプラス】先生だ。何ともないぜ。
「……え⁉」
紅映が声を上げる。
先ほどまでピクリとも動かなかったこれまでが嘘のように、あっさりと引き上げられてしまったからだ。
手前まで戻ってきたアームがぱかりと開き、ぬいぐるみが取り出し口に自由落下する。
「な、ななな、なんで⁉ おかしいじゃない!! 私の時はぴくりとも動かなかったのよ⁉」
「あはは、運がよかったよ。はいどうぞ」
ぬいぐるみを彼女に差し出す。
喜んでくれるといいなって思ってのことだったけど、彼女は顔を曇らせてしまった。
あれ? 自分、またなにかやっちゃいました?
「……いいの? 私、あんたにひどいこと言ったし、あんたがとったぬいぐるみなのに……」
「それをいうなら、お金を出したのは紅映さんじゃんか。それに、オレのとこにいるより、紅映さんのもとにいた方が、この子もきっと幸せだと思うから」
紅映はしばらくまごついた様子だったが、少ししておずおずと人形に手を伸ばし、オレから受け取った。
「あ……ありが、とう」
大きな人形に顔をうずめてしまう紅映。
隠された顔色をうかがうことはできない。
「どういたしまして」
紅映が人形をぎゅっと、強く抱きなおした。
「紅映さん?」
人形の上に顔を乗せた紅映が、オレの腕を引いた。
表情はぶすっとしたものだった。
「次、次のゲーム、行くわよ」
……おお。
この一件で、だいぶ心を開いてくれたのかな。
一緒に次の場所に行こうって誘ってくれるなんて。
「クレーンゲームはもういいの?」
「……うん。これ以上は、持ちきれないもの」
そして、オレたちは次のゲームを目指して歩くのだった。
紅映は基本的に不機嫌だった。
かと言って近づこうとすれば。
「ちょっと、近寄り過ぎよ! 私の視界に映らないで」
どうしろと。
気配遮断スキルでもつけて出直して来いってか?
オレはできなくはないけど、一般モブ相手なら相当無茶な要求だからな?
「ん……くぅ……ふっ、いって……ああんっ」
紅映が一つのゲーム機の前で声を漏らす。
クレーンゲームだ。
中には大きめのぬいぐるみが入っていて、紅映はその中でも白色のウサギを狙っているようだった。
「なにこれ、壊れてんじゃないの?」
アームでぬいぐるみの頭を捕らえるまではうまくいくのに、まったく取れる気配のない状況に悪態をつく紅映。
「もう! どうしてよ!!」
紅映は何度かチャレンジしたが、ぬいぐるみは最初の位置から動いていない。紅映の機嫌が急降下していく。
「……そうだ。あんた、賭けをしない?」
「賭け?」
「そう。残りチャレンジ回数は1回。この1回であんたがウサちゃんを取れたら待遇をちょーっとくらい改善してあげるわ。その代わり、とれなかったら今日のお金は全部あんたが出しなさい!」
「いいけど」
「ふん! 怖いのかしら? お兄ちゃんがすごいすごいっていうからどんな奴かと思ったら……って、え? 今、なんて言ったの?」
「いいけどって言ったけど?」
【アドミニストレータ】のおかげでお金には困ってないし。ゲームで遊ぶだけで無限に金策できるって神だよな。
「い、言ったわね! 後でやっぱりなしって言っても許さないんだからね!」
「安心しろ。男に二言はないから」
「……っ!」
一度クレーンゲームを横方向含めてぐるりと見渡す。なるほどわからん。クレーンゲームとか遊んだことないし。
(ぶっちゃけ取れなかったら取れなかったでいいんだけど、どうせなら取りたいよな)
女の子の前ではカッコよくありたい。
それが男ってもんだと思うの。
(【ラプラス】――)
スキルを発動した瞬間、オレはクレーンゲームのすべてを把握した。
わかる、わかるぞ。
どのタイミングでどのボタンをどれだけ押せばいいのかが手に取るようにわかる。
さすが【ラプラス】先生だ。何ともないぜ。
「……え⁉」
紅映が声を上げる。
先ほどまでピクリとも動かなかったこれまでが嘘のように、あっさりと引き上げられてしまったからだ。
手前まで戻ってきたアームがぱかりと開き、ぬいぐるみが取り出し口に自由落下する。
「な、ななな、なんで⁉ おかしいじゃない!! 私の時はぴくりとも動かなかったのよ⁉」
「あはは、運がよかったよ。はいどうぞ」
ぬいぐるみを彼女に差し出す。
喜んでくれるといいなって思ってのことだったけど、彼女は顔を曇らせてしまった。
あれ? 自分、またなにかやっちゃいました?
「……いいの? 私、あんたにひどいこと言ったし、あんたがとったぬいぐるみなのに……」
「それをいうなら、お金を出したのは紅映さんじゃんか。それに、オレのとこにいるより、紅映さんのもとにいた方が、この子もきっと幸せだと思うから」
紅映はしばらくまごついた様子だったが、少ししておずおずと人形に手を伸ばし、オレから受け取った。
「あ……ありが、とう」
大きな人形に顔をうずめてしまう紅映。
隠された顔色をうかがうことはできない。
「どういたしまして」
紅映が人形をぎゅっと、強く抱きなおした。
「紅映さん?」
人形の上に顔を乗せた紅映が、オレの腕を引いた。
表情はぶすっとしたものだった。
「次、次のゲーム、行くわよ」
……おお。
この一件で、だいぶ心を開いてくれたのかな。
一緒に次の場所に行こうって誘ってくれるなんて。
「クレーンゲームはもういいの?」
「……うん。これ以上は、持ちきれないもの」
そして、オレたちは次のゲームを目指して歩くのだった。
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