7 / 10
第7話 脅威の疫病の足音
しおりを挟む
「けほっ、けほっ」
鍛錬場で魔法の練習をしていると、騎士団の方で咳をしている音が耳についた。
「なんだ? 風邪か? 騎士のくせにだらしない」
「め、面目ないです」
「あー、悪化する前に今日は休め」
「すんません、隊長」
まあ、そういうこともあるか、なんて。
この日は気にも留めなかった。
*
「けほっ、けほっ」
その次の日もまた、鍛錬場で咳をしている騎士団の声が耳に入ってきた。
「なんだまだ治してねえのかぁ……っておいおい。今度はお前らそろいもそろってかよ」
「申し訳ございません。衛生面では気を付けていたのですが……」
「あーわかったわかった。他の奴らにうつす前に失せろ」
「すんません、隊長」
なんだか、嫌な胸騒ぎがする。
この状況に、既視感を覚える。
でも、まさか。
前世と比べて、早すぎる。
*
「……おいおい、まじかよ」
その翌日は、騎士団のほとんどがノックダウンしていた。死屍累々の兵士を前に、騎士団長が唖然としている。
「す、すみません。容体を確認させてください!」
「あんた……聖女候補の」
「アイーシャです。失礼いたします」
断りを入れ、患者の診察に取り掛かる。
開いた瞳孔、かなり早い脈拍、高熱。
そして何より、この感染力。
まさか、まさか。
「ルート・セプテム……!」
「な、ルート・セプテムだと!? ルート・セクスが60年前に起こったばかりじゃないか!」
ルートとは、およそ100年周期で流行する、この土地特有の病気である。その6回目は6と呼ばれ、7回目の今回は7と呼ばれる。
騎士団長が言った通り、前回のルート感染が起こったのがおよそ60年前。ルートの周期としてはあまりにも短い。
そして、それが原因で、前世では対応が遅れた。
本当にルートなのかどうかを議論している間に、国中に感染が広まってしまったのだ。
「っ、今すぐ患者の隔離を!」
まずい、まずいまずい。
ルートの流行まで、あと2年はあるものだと思っていた。
私はこの病を治癒するだけの癒術をまだ使えない。
どうする、どうすればいい。
……怠慢だ。
私の怠慢だ。
どうして前世と同じタイミングで発生するなんて楽観視していた。
政策をはじめとして、この世界は前世で私が体験したのと違う過去を辿っている。
前回起きたことが起こるとは限らないし、同じタイミングで起こるなんて保証はなおさらない!
今、私にできることは――
「陛下! ルート・セプテムが発生した可能性がございます!!」
私にできる、もっとも大事なことは情報の共有だ。
私がただの穢れた血なら、声を国の上層部に届けることはできなかった。
だけど今生では聖女としての地位がある。
「アイーシャ嬢? 何を言い出す。ルート・セクスが60年前。セプテムが来るにはまだ早い」
「しかし! 現に騎士団ではルートと同じ症状が起きています!!」
「ルートと似た症状の病は存在する。今回もおそらくそれじゃろうて」
「ち、違います! これは間違いなく――」
「……アイーシャ嬢よ。お主は聡明だ。現に、お主の言葉で国は何度も救われてきた」
「で、でしたら私の言葉に耳を傾け――」
「じゃが、アイーシャ嬢はルートの恐ろしさを見たことが無いじゃろう」
「……っ!!」
……そうか。
そうなるのか。
(違う、私は体験している。ルートの恐ろしさを、前世で知っている)
でもそれは、あくまで私の主観での話だ。
客観的に見れば私はたかが13の娘。
60年前に起きたルートの被害を知る由は無い。
どうする。
どうすればいい。
どうすればこの話を信じてもらえる。
「陛下! ご報告です!!」
その時だった。
銃声のような音とともに謁見の間の扉が開かれて、王家お抱えの飛脚が息を切らしてやってきた。
彼が息を切らしているところを、初めて見たかもしれない。
「何事じゃ!」
陛下もまた、彼が肩で息をする様子を見るのは初めてだったようで、声を荒げて詰問した。
飛脚の彼は手で汗を拭った後、息を一つ吸い、それから口を開いた。
「王都、およびキンペ村で、正体不明の疫病が流行り始めています!」
「なん……じゃと……?」
「特徴は開いた瞳孔、早い脈拍、高い体温。そして……強い感染力です」
「……まさか。ありえん。あれが流行するには早すぎる」
ダメだ。
陛下はルート感染の事実を受け入れられない。
国に任せていたら、手遅れになる。
「飛脚さん」
「あなたは……たしか聖女候補の」
「アイーシャと申します。飛脚さん、人を乗せて走ることはできますか?」
「できねえでもねえが、アイーシャ様、あんた何をする気でい?」
何って、決まってる。
「私を、キンペ村に連れて行ってください」
取り戻すんだ。
あの日失った、希望を。
「待つんじゃ! アイーシャ嬢! お主が行って何になる! もし本当にルートなら、お主にできることは何もない! 歴代聖女ですらどうすることもできなかったのじゃぞ!!」
「それが、どうしたんです?」
「わからぬわけではなかろう!! 聖女がいなければ国は立ち行かなくなる! 聖印を持つお主を失うわけには――」
「これはあくまで個人の意見ですが」
陛下の言葉を遮った。
私のささやかな反抗に陛下が瞠目する。
「わが身可愛さに国民を蔑ろにする国なんて、滅んでしまえばいい」
勘違いしないでほしいが、私はこの国が嫌いだ。
それでも国政に口を出していたのは、きっと生きているはずの母のためだ。
その母を見捨てようとするのなら、私はこの国を見捨てる。
「では飛脚さん。お願いします」
「ははっ、あんた、最高だな。よし! 竜より早いとうたわれた俺の足、とくと目に焼き付けな!!」
鍛錬場で魔法の練習をしていると、騎士団の方で咳をしている音が耳についた。
「なんだ? 風邪か? 騎士のくせにだらしない」
「め、面目ないです」
「あー、悪化する前に今日は休め」
「すんません、隊長」
まあ、そういうこともあるか、なんて。
この日は気にも留めなかった。
*
「けほっ、けほっ」
その次の日もまた、鍛錬場で咳をしている騎士団の声が耳に入ってきた。
「なんだまだ治してねえのかぁ……っておいおい。今度はお前らそろいもそろってかよ」
「申し訳ございません。衛生面では気を付けていたのですが……」
「あーわかったわかった。他の奴らにうつす前に失せろ」
「すんません、隊長」
なんだか、嫌な胸騒ぎがする。
この状況に、既視感を覚える。
でも、まさか。
前世と比べて、早すぎる。
*
「……おいおい、まじかよ」
その翌日は、騎士団のほとんどがノックダウンしていた。死屍累々の兵士を前に、騎士団長が唖然としている。
「す、すみません。容体を確認させてください!」
「あんた……聖女候補の」
「アイーシャです。失礼いたします」
断りを入れ、患者の診察に取り掛かる。
開いた瞳孔、かなり早い脈拍、高熱。
そして何より、この感染力。
まさか、まさか。
「ルート・セプテム……!」
「な、ルート・セプテムだと!? ルート・セクスが60年前に起こったばかりじゃないか!」
ルートとは、およそ100年周期で流行する、この土地特有の病気である。その6回目は6と呼ばれ、7回目の今回は7と呼ばれる。
騎士団長が言った通り、前回のルート感染が起こったのがおよそ60年前。ルートの周期としてはあまりにも短い。
そして、それが原因で、前世では対応が遅れた。
本当にルートなのかどうかを議論している間に、国中に感染が広まってしまったのだ。
「っ、今すぐ患者の隔離を!」
まずい、まずいまずい。
ルートの流行まで、あと2年はあるものだと思っていた。
私はこの病を治癒するだけの癒術をまだ使えない。
どうする、どうすればいい。
……怠慢だ。
私の怠慢だ。
どうして前世と同じタイミングで発生するなんて楽観視していた。
政策をはじめとして、この世界は前世で私が体験したのと違う過去を辿っている。
前回起きたことが起こるとは限らないし、同じタイミングで起こるなんて保証はなおさらない!
今、私にできることは――
「陛下! ルート・セプテムが発生した可能性がございます!!」
私にできる、もっとも大事なことは情報の共有だ。
私がただの穢れた血なら、声を国の上層部に届けることはできなかった。
だけど今生では聖女としての地位がある。
「アイーシャ嬢? 何を言い出す。ルート・セクスが60年前。セプテムが来るにはまだ早い」
「しかし! 現に騎士団ではルートと同じ症状が起きています!!」
「ルートと似た症状の病は存在する。今回もおそらくそれじゃろうて」
「ち、違います! これは間違いなく――」
「……アイーシャ嬢よ。お主は聡明だ。現に、お主の言葉で国は何度も救われてきた」
「で、でしたら私の言葉に耳を傾け――」
「じゃが、アイーシャ嬢はルートの恐ろしさを見たことが無いじゃろう」
「……っ!!」
……そうか。
そうなるのか。
(違う、私は体験している。ルートの恐ろしさを、前世で知っている)
でもそれは、あくまで私の主観での話だ。
客観的に見れば私はたかが13の娘。
60年前に起きたルートの被害を知る由は無い。
どうする。
どうすればいい。
どうすればこの話を信じてもらえる。
「陛下! ご報告です!!」
その時だった。
銃声のような音とともに謁見の間の扉が開かれて、王家お抱えの飛脚が息を切らしてやってきた。
彼が息を切らしているところを、初めて見たかもしれない。
「何事じゃ!」
陛下もまた、彼が肩で息をする様子を見るのは初めてだったようで、声を荒げて詰問した。
飛脚の彼は手で汗を拭った後、息を一つ吸い、それから口を開いた。
「王都、およびキンペ村で、正体不明の疫病が流行り始めています!」
「なん……じゃと……?」
「特徴は開いた瞳孔、早い脈拍、高い体温。そして……強い感染力です」
「……まさか。ありえん。あれが流行するには早すぎる」
ダメだ。
陛下はルート感染の事実を受け入れられない。
国に任せていたら、手遅れになる。
「飛脚さん」
「あなたは……たしか聖女候補の」
「アイーシャと申します。飛脚さん、人を乗せて走ることはできますか?」
「できねえでもねえが、アイーシャ様、あんた何をする気でい?」
何って、決まってる。
「私を、キンペ村に連れて行ってください」
取り戻すんだ。
あの日失った、希望を。
「待つんじゃ! アイーシャ嬢! お主が行って何になる! もし本当にルートなら、お主にできることは何もない! 歴代聖女ですらどうすることもできなかったのじゃぞ!!」
「それが、どうしたんです?」
「わからぬわけではなかろう!! 聖女がいなければ国は立ち行かなくなる! 聖印を持つお主を失うわけには――」
「これはあくまで個人の意見ですが」
陛下の言葉を遮った。
私のささやかな反抗に陛下が瞠目する。
「わが身可愛さに国民を蔑ろにする国なんて、滅んでしまえばいい」
勘違いしないでほしいが、私はこの国が嫌いだ。
それでも国政に口を出していたのは、きっと生きているはずの母のためだ。
その母を見捨てようとするのなら、私はこの国を見捨てる。
「では飛脚さん。お願いします」
「ははっ、あんた、最高だな。よし! 竜より早いとうたわれた俺の足、とくと目に焼き付けな!!」
1
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
義妹に苛められているらしいのですが・・・
天海月
恋愛
穏やかだった男爵令嬢エレーヌの日常は、崩れ去ってしまった。
その原因は、最近屋敷にやってきた義妹のカノンだった。
彼女は遠縁の娘で、両親を亡くした後、親類中をたらい回しにされていたという。
それを不憫に思ったエレーヌの父が、彼女を引き取ると申し出たらしい。
儚げな美しさを持ち、常に柔和な笑みを湛えているカノンに、いつしか皆エレーヌのことなど忘れ、夢中になってしまい、気が付くと、婚約者までも彼女の虜だった。
そして、エレーヌが持っていた高価なドレスや宝飾品の殆どもカノンのものになってしまい、彼女の侍女だけはあんな義妹は許せないと憤慨するが・・・。
欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~
バナナマヨネーズ
恋愛
メローズ王国の姫として生まれたミリアリアだったが、国王がメイドに手を出した末に誕生したこともあり、冷遇されて育った。そんなある時、テンペランス帝国から花嫁候補として王家の娘を差し出すように要求されたのだ。弱小国家であるメローズ王国が、大陸一の国力を持つテンペランス帝国に逆らえる訳もなく、国王は娘を差し出すことを決めた。
しかし、テンペランス帝国の皇帝は、銀狼と恐れられる存在だった。そんな恐ろしい男の元に可愛い娘を差し出すことに抵抗があったメローズ王国は、何かあったときの予備として手元に置いていたミリアリアを差し出すことにしたのだ。
ミリアリアは、テンペランス帝国で花嫁候補の一人として暮らすことに中、一人の騎士と出会うのだった。
これは、残酷な運命に翻弄されるミリアリアが幸せを掴むまでの物語。
本編74話
番外編15話 ※番外編は、『ジークフリートとシューニャ』以外ノリと思い付きで書いているところがあるので時系列がバラバラになっています。
乙女ゲームのヒロインが純潔を重んじる聖女とか終わってません?
ララ
恋愛
私は侯爵令嬢のフレイヤ。
前世の記憶を持っている。
その記憶によるとどうやら私の生きるこの世界は乙女ゲームの世界らしい。
乙女ゲームのヒロインは聖女でさまざまな困難を乗り越えながら攻略対象と絆を深め愛し合っていくらしい。
最後には大勢から祝福を受けて結婚するハッピーエンドが待っている。
子宝にも恵まれて平民出身のヒロインが王子と身分差の恋に落ち、その恋がみのるシンデレラストーリーだ。
そして私はそんな2人を邪魔する悪役令嬢。
途中でヒロインに嫉妬に狂い危害を加えようとした罪により断罪される。
今日は断罪の日。
けれど私はヒロインに危害を加えようとしたことなんてない。
それなのに断罪は始まった。
まあそれは別にいいとして‥‥。
現実を見ましょう?
聖女たる資格は純潔無垢。
つまり恋愛はもちろん結婚なんてできないのよ?
むしろそんなことしたら資格は失われる。
ただの容姿のいい平民になるのよ?
誰も気づいていないみたいだけど‥‥。
うん、よく考えたらこの乙女ゲームの設定終わってません??
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
家族と移住した先で隠しキャラ拾いました
狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」
ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。
「「「やっぱりかー」」」
すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。
日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。
しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。
ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。
前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。
「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」
前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。
そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。
まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――
聖女の代役の私がなぜか追放宣言されました。今まで全部私に仕事を任せていたけど大丈夫なんですか?
水垣するめ
恋愛
伯爵家のオリヴィア・エバンスは『聖女』の代理をしてきた。
理由は本物の聖女であるセレナ・デブリーズ公爵令嬢が聖女の仕事を面倒臭がったためだ。
本物と言っても、家の権力をたてにして無理やり押し通した聖女だが。
無理やりセレナが押し込まれる前は、本来ならオリヴィアが聖女に選ばれるはずだった。
そういうこともあって、オリヴィアが聖女の代理として選ばれた。
セレナは最初は公務などにはきちんと出ていたが、次第に私に全て任せるようになった。
幸い、オリヴィアとセレナはそこそこ似ていたので、聖女のベールを被ってしまえば顔はあまり確認できず、バレる心配は無かった。
こうしてセレナは名誉と富だけを取り、オリヴィアには働かさせて自分は毎晩パーティーへ出席していた。
そして、ある日突然セレナからこう言われた。
「あー、あんた、もうクビにするから」
「え?」
「それと教会から追放するわ。理由はもう分かってるでしょ?」
「いえ、全くわかりませんけど……」
「私に成り代わって聖女になろうとしたでしょ?」
「いえ、してないんですけど……」
「馬鹿ねぇ。理由なんてどうでもいいのよ。私がそういう気分だからそうするのよ。私の偽物で伯爵家のあんたは大人しく聞いとけばいいの」
「……わかりました」
オリヴィアは一礼して部屋を出ようとする。
その時後ろから馬鹿にしたような笑い声が聞こえた。
「あはは! 本当に無様ね! ここまで頑張って成果も何もかも奪われるなんて! けど伯爵家のあんたは何の仕返しも出来ないのよ!」
セレナがオリヴィアを馬鹿にしている。
しかしオリヴィアは特に気にすることなく部屋出た。
(馬鹿ね、今まで聖女の仕事をしていたのは私なのよ? 後悔するのはどちらなんでしょうね?)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる