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逢瀬の約束(5)
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そのドアを開けてみると、目の前に人ひとりどうにか昇れるような、木造りの階段が現れた。
シルヴァリエは階段に足をかけ、昇り始めた。
上から、はっきりと、ガタガタッ、という物音が聞こえたが、今度は足を止めない。
案の定――上はちょっとした小部屋になっているようだ。
訓練用の木剣や先に重りをつけた棒がいくつか端に寄せられている他は、読みすぎてぼろぼろになったと思しき子供向けの本が数冊積み上がり、あとは休憩用らしい簡易ベットと毛布。
そして――頭から足の先まで毛布をすっぽり被り、藁の上にシーツを被せただけの、ベッドとも呼べないようなベッドの上で膝を抱えているのは――カルナスだ。
「――カルナス団長」
「し……シルヴァリエ……」
「なにをしてらっしゃるんですか」
「な……なにも……」
カルナスが怯えている。
自分に。
シルヴァリエは、背中がゾクゾクした。
「く、くるな! ここへ何をしに来た、帰れ!」
「僕がどこにいようと何をしようと何も言わないじゃないですか、普段は。どうしたっていうんですか、カルナス団長。そこ、何か隠してるんですか?」
シルヴァリエはカルナスのほうへ近づくと、カルナスが頭からかぶっている毛布の端を掴み、思い切りひっぱった。しかし、カルナスが毛布をぎゅっと掴んで掴んで離さないので、ひきはがすことはできない。シルヴァリエはなおも緩急をつけて毛布を引っ張りながら言った。
「ねえ、見せてくださいよ」
「や、やめろっ! こっちへ来るな! 向こうへ行けっ……出て行け!!」
「大きな声を出すと馬がびっくりしちゃいますよ、カルナス団長」
「……っ!」
カルナスの意識が一瞬階下の馬のほうへ行った瞬間を逃さず、シルヴァリエは渾身の力をこめて毛布を引っ張った。カルナスの手から毛布が離れ、隠していたものが露わになった。
「あっ……!」
「ほら、いけないもの隠してた」
「……っ」
「めちゃくちゃ勃起してますね。大丈夫ですか?」
「……お前に心配されるいわれはない」
さきほどシルヴァリエに馬のことを言われたのがきいたのか、カルナスは囁くような声で、憎々しげに言い返した。体を前かがみにして、自分の股間を両手で隠しながら。
「淫紋、まだ消えてないんですか」
「お前には関係ない」
「消えてないんですね」
「関係ないと……」
「いつからそんなになってたんですか? 今日の訓練中からずっと? みんなが一生懸命訓練してる姿を、おちんぽ勃てながら見てたんですか?」
「ば、ばかっ! そんなわけがあるか! さっき急に――」
「声が大きいですってば。さっきまで、ノルダ・ロウと一緒でしたね。勃起したところ、見られたんですか」
「見られてたまるか……!」
「見せたらどうにかしてくれたんじゃないんですか。見られたかったから勃起したのでは?」
「馬鹿が、いい加減にしろ!」
「団長は、あのノルダ・ロウとはそういう関係じゃないんですね?」
「そういう関係……?」
想像すらしていなかったことを言われた、と言わんばかりのカルナスのきょとんとした表情を見たら、急にかっとなって――シルヴァリエはカルナスをベッドに押し倒し、口付けた。
シルヴァリエは階段に足をかけ、昇り始めた。
上から、はっきりと、ガタガタッ、という物音が聞こえたが、今度は足を止めない。
案の定――上はちょっとした小部屋になっているようだ。
訓練用の木剣や先に重りをつけた棒がいくつか端に寄せられている他は、読みすぎてぼろぼろになったと思しき子供向けの本が数冊積み上がり、あとは休憩用らしい簡易ベットと毛布。
そして――頭から足の先まで毛布をすっぽり被り、藁の上にシーツを被せただけの、ベッドとも呼べないようなベッドの上で膝を抱えているのは――カルナスだ。
「――カルナス団長」
「し……シルヴァリエ……」
「なにをしてらっしゃるんですか」
「な……なにも……」
カルナスが怯えている。
自分に。
シルヴァリエは、背中がゾクゾクした。
「く、くるな! ここへ何をしに来た、帰れ!」
「僕がどこにいようと何をしようと何も言わないじゃないですか、普段は。どうしたっていうんですか、カルナス団長。そこ、何か隠してるんですか?」
シルヴァリエはカルナスのほうへ近づくと、カルナスが頭からかぶっている毛布の端を掴み、思い切りひっぱった。しかし、カルナスが毛布をぎゅっと掴んで掴んで離さないので、ひきはがすことはできない。シルヴァリエはなおも緩急をつけて毛布を引っ張りながら言った。
「ねえ、見せてくださいよ」
「や、やめろっ! こっちへ来るな! 向こうへ行けっ……出て行け!!」
「大きな声を出すと馬がびっくりしちゃいますよ、カルナス団長」
「……っ!」
カルナスの意識が一瞬階下の馬のほうへ行った瞬間を逃さず、シルヴァリエは渾身の力をこめて毛布を引っ張った。カルナスの手から毛布が離れ、隠していたものが露わになった。
「あっ……!」
「ほら、いけないもの隠してた」
「……っ」
「めちゃくちゃ勃起してますね。大丈夫ですか?」
「……お前に心配されるいわれはない」
さきほどシルヴァリエに馬のことを言われたのがきいたのか、カルナスは囁くような声で、憎々しげに言い返した。体を前かがみにして、自分の股間を両手で隠しながら。
「淫紋、まだ消えてないんですか」
「お前には関係ない」
「消えてないんですね」
「関係ないと……」
「いつからそんなになってたんですか? 今日の訓練中からずっと? みんなが一生懸命訓練してる姿を、おちんぽ勃てながら見てたんですか?」
「ば、ばかっ! そんなわけがあるか! さっき急に――」
「声が大きいですってば。さっきまで、ノルダ・ロウと一緒でしたね。勃起したところ、見られたんですか」
「見られてたまるか……!」
「見せたらどうにかしてくれたんじゃないんですか。見られたかったから勃起したのでは?」
「馬鹿が、いい加減にしろ!」
「団長は、あのノルダ・ロウとはそういう関係じゃないんですね?」
「そういう関係……?」
想像すらしていなかったことを言われた、と言わんばかりのカルナスのきょとんとした表情を見たら、急にかっとなって――シルヴァリエはカルナスをベッドに押し倒し、口付けた。
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