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序章
追放と出会い
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「次の受験生、前へ」
「はい!」
とある魔法学園の入学試験を男は受けていた。
男が水晶に手をかざすと、水晶は黒い光を放った。
「こ、これは!」
試験官が驚きの声をあげる。
「貴様は不合格だ。そして二度とこの学園に立ち入るな!」
「……えーー!」
不合格を言い渡された男は、町から離れた道に座り込んでいた。
「俺が追放? 嘘だろ?」
彼は学園へ向かう前、親とこう話していた。
「アマナスもついに入試か」
「なーに。魔力を見せれば即合格! 簡単さ」
「うん。期待しているぞ」
「でも心配だわ。ウチは特別な家系だから」
自信に満ちた会話をする父と子の話に、母が冷静な視点を入れる。
「そんなの、圧倒的な魔力量で黙らせればいいんだよ」
彼は変わらず、自信満々に答える。
「じゃあ行ってくるね」
しかし現実は即不合格。
「どの面下げて帰ればいいんだよ。思わず遠くまで逃げちゃったけど、どうしよう」
その時近くの草むらからガサガサと音がした。ふと目をやると魔物が飛び出してきた。
反射で目を瞑り身を守ろうと手を前に伸ばした。
ボウッと音がした。
「大丈夫かい? 少年」
アマナスが顔を上げると銀髪の美しい女性がいた。彼女が魔物を倒したのだ。
「危ないところだったね」
彼は頬を赤くした。それが一目惚れからなのか、恥ずかしいところを見られたからなのか、彼には分からなかった。
「ありがとうございました。お陰で助かりました」
「うん。良かった。ところで君はこんな所で何をしてたの?」
「いやぁ、それがですね……」
彼はばつが悪そうに話した。
「そうだったのか。申し訳ないことを聞いたね」
黒光《こっこう》の魔力。不吉の象徴か。しかしこの莫大な魔力は無視出来ない。よし。と彼女は考えた。
「君、私についてこないかい?」
「え? 良いんですか?」
「うん。ただ……」
これやり方合ってるのかな?彼はテントを組み立てながらそう思った。
「テントなんて初めてで分かんらねーよ」
2時間前。
「私はメルリン学園のOGでね、今日の入学式で挨拶をすることになっているんだよ。」
「でも俺はあの学園には……」
アマナスは後ろめたそうに言った。
「だからここで野宿をしようと思うのね」
「⁉️」
彼は耳を疑った。出会ったばかりの自分のために、彼女は野宿すると決めたからだ。
「私が戻ってくるまでに、テントと食事の準備、お願いね」
そして今に至る。
「あーもーいーや。先に飯の支度しよう」
しかし彼は料理などしたことがない。結果、どんな料理が出来上がるか、言わなくても分かることだろう。
夜になり、オーメンはアマナスの元へ帰ってくる。
「ただいま。大丈夫だった?」
遅くなっちゃったな。彼、大丈夫かな。と考えていた彼女の目には無残な光景が写った。
「お帰りなさい」
ぐちゃぐちゃのテントに、見るからに不味そうな料理。いくら初めてといえど、酷い結果になった。
「何があったの?」
彼女は驚きながらも、先ずは経緯を聞いてみることにした。
「いやぁその、やるだけやろうとしたんですよ? けど初めてで分かんなくて。なんか気付いたらぐちゃぐちゃになっちゃってて」
彼は涙目になりながら説明をした。
「そっか。頑張ってくれたんだね。ありがとう」
そう言ってオーメンはアマナスを抱き締めた。
「説明もしてなかったもんね? ごめん。ご飯食べよっか。お腹空いちゃった」
彼女は優しくそう言った。
「はい」
アマナスは涙ながらに答えた。
うげっ、不味。こんなん食べんじゃねー。彼は自身が作った料理を口にし、そう思った。
彼は謝ろうと思い、彼女の方に目をやった。
彼女はというと、1口食べると、一瞬眉を動かしたが「うん。おいしい」と笑顔を浮かべた。
それを見たアマナスは決意した。
何があっても彼女に着いていくと、そしていつかこの優しさに応えられる人になりたいと。
「はい!」
とある魔法学園の入学試験を男は受けていた。
男が水晶に手をかざすと、水晶は黒い光を放った。
「こ、これは!」
試験官が驚きの声をあげる。
「貴様は不合格だ。そして二度とこの学園に立ち入るな!」
「……えーー!」
不合格を言い渡された男は、町から離れた道に座り込んでいた。
「俺が追放? 嘘だろ?」
彼は学園へ向かう前、親とこう話していた。
「アマナスもついに入試か」
「なーに。魔力を見せれば即合格! 簡単さ」
「うん。期待しているぞ」
「でも心配だわ。ウチは特別な家系だから」
自信に満ちた会話をする父と子の話に、母が冷静な視点を入れる。
「そんなの、圧倒的な魔力量で黙らせればいいんだよ」
彼は変わらず、自信満々に答える。
「じゃあ行ってくるね」
しかし現実は即不合格。
「どの面下げて帰ればいいんだよ。思わず遠くまで逃げちゃったけど、どうしよう」
その時近くの草むらからガサガサと音がした。ふと目をやると魔物が飛び出してきた。
反射で目を瞑り身を守ろうと手を前に伸ばした。
ボウッと音がした。
「大丈夫かい? 少年」
アマナスが顔を上げると銀髪の美しい女性がいた。彼女が魔物を倒したのだ。
「危ないところだったね」
彼は頬を赤くした。それが一目惚れからなのか、恥ずかしいところを見られたからなのか、彼には分からなかった。
「ありがとうございました。お陰で助かりました」
「うん。良かった。ところで君はこんな所で何をしてたの?」
「いやぁ、それがですね……」
彼はばつが悪そうに話した。
「そうだったのか。申し訳ないことを聞いたね」
黒光《こっこう》の魔力。不吉の象徴か。しかしこの莫大な魔力は無視出来ない。よし。と彼女は考えた。
「君、私についてこないかい?」
「え? 良いんですか?」
「うん。ただ……」
これやり方合ってるのかな?彼はテントを組み立てながらそう思った。
「テントなんて初めてで分かんらねーよ」
2時間前。
「私はメルリン学園のOGでね、今日の入学式で挨拶をすることになっているんだよ。」
「でも俺はあの学園には……」
アマナスは後ろめたそうに言った。
「だからここで野宿をしようと思うのね」
「⁉️」
彼は耳を疑った。出会ったばかりの自分のために、彼女は野宿すると決めたからだ。
「私が戻ってくるまでに、テントと食事の準備、お願いね」
そして今に至る。
「あーもーいーや。先に飯の支度しよう」
しかし彼は料理などしたことがない。結果、どんな料理が出来上がるか、言わなくても分かることだろう。
夜になり、オーメンはアマナスの元へ帰ってくる。
「ただいま。大丈夫だった?」
遅くなっちゃったな。彼、大丈夫かな。と考えていた彼女の目には無残な光景が写った。
「お帰りなさい」
ぐちゃぐちゃのテントに、見るからに不味そうな料理。いくら初めてといえど、酷い結果になった。
「何があったの?」
彼女は驚きながらも、先ずは経緯を聞いてみることにした。
「いやぁその、やるだけやろうとしたんですよ? けど初めてで分かんなくて。なんか気付いたらぐちゃぐちゃになっちゃってて」
彼は涙目になりながら説明をした。
「そっか。頑張ってくれたんだね。ありがとう」
そう言ってオーメンはアマナスを抱き締めた。
「説明もしてなかったもんね? ごめん。ご飯食べよっか。お腹空いちゃった」
彼女は優しくそう言った。
「はい」
アマナスは涙ながらに答えた。
うげっ、不味。こんなん食べんじゃねー。彼は自身が作った料理を口にし、そう思った。
彼は謝ろうと思い、彼女の方に目をやった。
彼女はというと、1口食べると、一瞬眉を動かしたが「うん。おいしい」と笑顔を浮かべた。
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