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プロローグ
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夕方になっても照りつける日差しがまぶしい。
「……暑い。」
パタパタと重ねている布を扇ぐ。日本の夏でもこんなに暑くなったことがないだろうけど。
『トイ、水浴びでもするか?俺に願えばいつでも清めた水をだしてやるぞ?どうだ?』
「断る。」
『ククッ…やせ我慢するな、暑いんだろ?』
自分に使役している魔神、アークはニヤニヤと背後から抱きつき耳元に囁く。
「邪魔だ、暑苦しい。抱きつくなって。」
アークの腕を払いのけ、新たに日陰になった場所へ移動する。
番人としてムルーク王子と妃ら(契りを交わしていない者は姫と呼ぶ)が住む後宮の警護しているが昼間は滅多に刺客が来ない。つまり暇している。
コソコソとこちらの様子を伺っていた姫のうち、一人が顔を出した。
「あの、番人様?お願いしたいことがありますの…。」
「…お伺いしても宜しいでしょうか、姫君。」
「貴方の音笛をまた聴きたいの、やって下さいますよね?」
上目遣いでこちらを見ておねだりされる。しかし、トイは顔色一つ変えずにお決まりの台詞を口にする。
「姫様のお望みであれば。」
自分は懐に差していた横笛をくわえ、ゆったりとした曲を奏でる。
~~♪…~♪♪~~♪……
その瞬間、あれ程暑かった空気が嘘の様に涼しい風をおこす。
姫達はうっとりとした眼差しで彼を見つめるもトイは演奏に集中しており見ていない。
演奏を終え顔を上げるといつの間にか沢山の姫達に囲まれていた。
「何て素敵な音色なのでしょう…!」
「ねぇ、今度は違う音色を私の為に弾いて下さらない?」
「まぁ図々しいですわっ!」
「番人様はどこで覚えられたのですか?わたくしに弾き方を教えなさいな。」
「ウフフっ、番人さまぁ~♪私とイイコトしてあげるからねぇ~いいでしょお~?」
後からワラワラと集まって来れば言い合い合戦。
聞いているこっちの身にもなってくれないかな。
ここに住む女性はムルーク王子からお相手に呼ばれる以外、皆ここで生活を送る。
王子にいつ呼ばれてもいいように常に己を磨いていると風の噂で聞いていた。
同時に暇を持て余しているとも。
だからこそ、楽器が扱える一風変わった自分がさぞかし不思議の塊何だろう。
「姫君方、どうかお静まり下さい。
交代の時間になりましたので戻ります。
私は王子よりお相手するよう言いつかっております故、願いを叶えたまでの事。
これ以上を望まれるならば王子の反感を買われてしまわれますが如何でしょう?
戯れは程々になさいませ。」
そう言って引き下がる…優雅にかつ全速力で後退する。
なぜなら…。
「はぁんっ、声が…凄く……イイ。」
「今日こそ逃がしませんわよっ、わたくしのお話相手をなさい!」
「順番を守りなさいよっ貴女退いて!!」
「番人様は私とお茶をするの、貴女こそ図々しいわね。」
「「「貴女に言われたくない(ですわ)」」」
「もぅ、番人様のいけずぅ♪」
ここの女性達は引き下がるどころか迫ってくる。諦めてくれない。
踵を返し目的地へ向かう。
その後ろを早歩きで追いかけている女性達。
女性が走るのははしたない行為とされているらしいけどこっちとしては好都合。
171㎝の身長もあれば歩幅も大きく、その差は徐々に開く。
ある場所まで行くと女性達は残念そうに足を止めた。
「くっ…。次こそ捕まえますわ。」
「いやんっ、ますます燃えたきたぁ♥」
「ふんっ、次の機会を狙えば良いことよ。」
ー今、若干寒気がした気がするよ?
つい先程いた場所は護衛と王子以外の男性が立ち入りを禁止されているエリアで、今いる場所は逆に女性が立ち入りを禁止とされている。
交代相手の部屋へ行きドアをノックする。
「…………。」
返事がない。
「バラル、交代だよ。」
「………。」
返事がない…な。仕方ない、アーク。
アークは水魔法でドアを破壊。
「うわっ、びっくりしたじゃねーか!」
「起きないお前が悪いんじゃないか。」
「しかも毎度毎度ドアを破壊するの止めてくれませんかねトイさんよ…。
あーまたアイツに頼むしか―。」
『貴方という人は…また寝坊ですか。
情けないですね。次がないと申したは…一旦戻ります。』
「うわぁっ!いたのかよウィルス…って何でもどくぅ!?!??!」
ブツブツ文句言うバラルにもう一度水をぶっかける。
「ぶはぁっ!?
おいお前の魔神何とかしろよっ!」
「今ので起きた?ならさっさと支度してよ。」
「命令したんかいっ!
え、あ、いやっ、もうちょいだからその手構えるの止めてお願いだから。」
バラルはそう言ってすぐ奥の部屋に消えた。
起きるのは遅いがやる事が早い。真面目で面白い良い奴。
起きるのは遅いけど。
「よしっ、詫びにお前の部屋まで一緒に行くぞ。」
「悪い、バラル。」
「気にすんな。ここから反対のエリアに行くとなればまた姫さん達がどやどや集まるだろ?
男なら誰もが羨ましがるのにお前、表情一つ変えないとかすげぇよ、だからこそ王子が昼間の警護をお前に頼むんだけどさ。」
「……はぁ。羨ましい、か。」
部屋に戻る途中、色んな視線を集めるものの追いかけて話そうとする者はいない。
バラルと別れ、鍵を閉める。更に結界魔法と厳重な戸締まりをして床に座り込む。
「やっと休める…。」
『お疲れだな、トイ。風呂、沸かしとくか??』
「ん、よろしく。」
カーペットに寝そべり窓から空を見る。
日が沈んでいく…。
そして、月が登ったその時――
自分の体に異変が起きた。
『…準備は出来たぞ、ト…、本来の姿に戻ったか糸』
「そうだね。
これからお風呂に入る。」
『結界を張り直したから大丈夫だ、行ってこい。』
「ありがと。」
何事もなかったように浴室向かう。
着ていた服を脱ぎ捨て、ふと鏡を見つめる。 鏡に映った女性は悩ましそうにため息をついた。
(なんか、凄く違和感が…あるんだよね…。)
自分は白澤 糸。
ある事情で昼間は男のふりをして生活をする、れっきとした女性だ。
少し憂鬱な気持ちでシャワーを浴びる。
自分が何故こうなってしまったのか改めて経緯を振り返ろうか。
「……暑い。」
パタパタと重ねている布を扇ぐ。日本の夏でもこんなに暑くなったことがないだろうけど。
『トイ、水浴びでもするか?俺に願えばいつでも清めた水をだしてやるぞ?どうだ?』
「断る。」
『ククッ…やせ我慢するな、暑いんだろ?』
自分に使役している魔神、アークはニヤニヤと背後から抱きつき耳元に囁く。
「邪魔だ、暑苦しい。抱きつくなって。」
アークの腕を払いのけ、新たに日陰になった場所へ移動する。
番人としてムルーク王子と妃ら(契りを交わしていない者は姫と呼ぶ)が住む後宮の警護しているが昼間は滅多に刺客が来ない。つまり暇している。
コソコソとこちらの様子を伺っていた姫のうち、一人が顔を出した。
「あの、番人様?お願いしたいことがありますの…。」
「…お伺いしても宜しいでしょうか、姫君。」
「貴方の音笛をまた聴きたいの、やって下さいますよね?」
上目遣いでこちらを見ておねだりされる。しかし、トイは顔色一つ変えずにお決まりの台詞を口にする。
「姫様のお望みであれば。」
自分は懐に差していた横笛をくわえ、ゆったりとした曲を奏でる。
~~♪…~♪♪~~♪……
その瞬間、あれ程暑かった空気が嘘の様に涼しい風をおこす。
姫達はうっとりとした眼差しで彼を見つめるもトイは演奏に集中しており見ていない。
演奏を終え顔を上げるといつの間にか沢山の姫達に囲まれていた。
「何て素敵な音色なのでしょう…!」
「ねぇ、今度は違う音色を私の為に弾いて下さらない?」
「まぁ図々しいですわっ!」
「番人様はどこで覚えられたのですか?わたくしに弾き方を教えなさいな。」
「ウフフっ、番人さまぁ~♪私とイイコトしてあげるからねぇ~いいでしょお~?」
後からワラワラと集まって来れば言い合い合戦。
聞いているこっちの身にもなってくれないかな。
ここに住む女性はムルーク王子からお相手に呼ばれる以外、皆ここで生活を送る。
王子にいつ呼ばれてもいいように常に己を磨いていると風の噂で聞いていた。
同時に暇を持て余しているとも。
だからこそ、楽器が扱える一風変わった自分がさぞかし不思議の塊何だろう。
「姫君方、どうかお静まり下さい。
交代の時間になりましたので戻ります。
私は王子よりお相手するよう言いつかっております故、願いを叶えたまでの事。
これ以上を望まれるならば王子の反感を買われてしまわれますが如何でしょう?
戯れは程々になさいませ。」
そう言って引き下がる…優雅にかつ全速力で後退する。
なぜなら…。
「はぁんっ、声が…凄く……イイ。」
「今日こそ逃がしませんわよっ、わたくしのお話相手をなさい!」
「順番を守りなさいよっ貴女退いて!!」
「番人様は私とお茶をするの、貴女こそ図々しいわね。」
「「「貴女に言われたくない(ですわ)」」」
「もぅ、番人様のいけずぅ♪」
ここの女性達は引き下がるどころか迫ってくる。諦めてくれない。
踵を返し目的地へ向かう。
その後ろを早歩きで追いかけている女性達。
女性が走るのははしたない行為とされているらしいけどこっちとしては好都合。
171㎝の身長もあれば歩幅も大きく、その差は徐々に開く。
ある場所まで行くと女性達は残念そうに足を止めた。
「くっ…。次こそ捕まえますわ。」
「いやんっ、ますます燃えたきたぁ♥」
「ふんっ、次の機会を狙えば良いことよ。」
ー今、若干寒気がした気がするよ?
つい先程いた場所は護衛と王子以外の男性が立ち入りを禁止されているエリアで、今いる場所は逆に女性が立ち入りを禁止とされている。
交代相手の部屋へ行きドアをノックする。
「…………。」
返事がない。
「バラル、交代だよ。」
「………。」
返事がない…な。仕方ない、アーク。
アークは水魔法でドアを破壊。
「うわっ、びっくりしたじゃねーか!」
「起きないお前が悪いんじゃないか。」
「しかも毎度毎度ドアを破壊するの止めてくれませんかねトイさんよ…。
あーまたアイツに頼むしか―。」
『貴方という人は…また寝坊ですか。
情けないですね。次がないと申したは…一旦戻ります。』
「うわぁっ!いたのかよウィルス…って何でもどくぅ!?!??!」
ブツブツ文句言うバラルにもう一度水をぶっかける。
「ぶはぁっ!?
おいお前の魔神何とかしろよっ!」
「今ので起きた?ならさっさと支度してよ。」
「命令したんかいっ!
え、あ、いやっ、もうちょいだからその手構えるの止めてお願いだから。」
バラルはそう言ってすぐ奥の部屋に消えた。
起きるのは遅いがやる事が早い。真面目で面白い良い奴。
起きるのは遅いけど。
「よしっ、詫びにお前の部屋まで一緒に行くぞ。」
「悪い、バラル。」
「気にすんな。ここから反対のエリアに行くとなればまた姫さん達がどやどや集まるだろ?
男なら誰もが羨ましがるのにお前、表情一つ変えないとかすげぇよ、だからこそ王子が昼間の警護をお前に頼むんだけどさ。」
「……はぁ。羨ましい、か。」
部屋に戻る途中、色んな視線を集めるものの追いかけて話そうとする者はいない。
バラルと別れ、鍵を閉める。更に結界魔法と厳重な戸締まりをして床に座り込む。
「やっと休める…。」
『お疲れだな、トイ。風呂、沸かしとくか??』
「ん、よろしく。」
カーペットに寝そべり窓から空を見る。
日が沈んでいく…。
そして、月が登ったその時――
自分の体に異変が起きた。
『…準備は出来たぞ、ト…、本来の姿に戻ったか糸』
「そうだね。
これからお風呂に入る。」
『結界を張り直したから大丈夫だ、行ってこい。』
「ありがと。」
何事もなかったように浴室向かう。
着ていた服を脱ぎ捨て、ふと鏡を見つめる。 鏡に映った女性は悩ましそうにため息をついた。
(なんか、凄く違和感が…あるんだよね…。)
自分は白澤 糸。
ある事情で昼間は男のふりをして生活をする、れっきとした女性だ。
少し憂鬱な気持ちでシャワーを浴びる。
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