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48.リルルのおねだり

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「ご主人様ぁ~、夜でも明るく目立つぅ~、ネオン看板が欲しいんですよぉ~。お店の顔にもなりますしぃ~、お客さんの度肝を抜けると思うんですよぉ~」

 リルルの次のおねだりは、夜の街を彩る光り輝くネオン看板である。元の世界の歓楽街では、集客の看板として大いに活躍した代物だ。ランプやロウソク程度の灯りしかないこの世界では、人々にとてつもないインパクトを与えるだろう。

「う~ん、ネオン看板か……。いいアイデアだけど、ガスを使った昔ながらのネオン管は、色に味わいがあるけど火災や感電のトラブルが多い――と聞いたことがあるな。リルルや従業員に何かあったら困るし、LEDのネオン看板なら準備するよ」
「アハッ、ありがとうございますぅ~。あっ、それから花火の打ち上げもしたいんですよぉ~。この世界に花火は無いようなのでぇ~、夜空に咲く可憐な花とかハートマークを見せたらぁ~、感動と興奮の坩堝と化すと思うんですよねぇ~」
「分かった分かった! 両方とも用意しておくから、そろそろ部屋から出て行ってくれよ」
「あ~ん、そんなイジワルしないでくださいよぉ~。今から張遼ちゃんとエッチするつもりですよねぇ~。それなら私も混ぜてくださいよぉ~」
「はあ~っ」

 思わず溜息を吐いてしまった。最近、店舗の立ち上げ準備に忙しく、ようやく作った時間で張遼ちゃんとデートをしていたのだ。二人っきりの時間を取れたのは久しぶりで、上機嫌の張遼ちゃんは身体を密着させ積極的に腕を絡ませてきた。私としても、子猫のように甘えてくる張遼ちゃんが愛しくて仕方ないのである。そして、そんなイチャイチャデートの後は、言わずと知れたムフフな時間である。屋敷に戻るとすぐに食事や入浴を終え、これからだという時にリルルが部屋に突撃してきたのである。前にも似たような事をしでかしたので、本当に懲りないサキュバスであった。

「ちょっと待てぃ! リルルは、マリスばかり辛い思いをするの不公平だから禁欲する――って言ってたよな? 舌の根も乾かないうちに、そんなんでどうするんだ!」
「だってぇ~、ご主人様だけエッチするなんてズルイじゃないですかぁ~。混ぜてくれないならぁ~、私に合わせて禁欲してくれてもいいじゃないですかぁ~」
「言ってることは分からなくも無いが、だが断る! 私は、愛のままに我がままに生きるつもりなのだ」
「あ~ん、それなら私を傷つけないでくださいよぉ~。……アハッ、いい事を思いつきましたぁ~。スケベなご主人様が私に欲情してぇ~、ケダモノのように襲ってくれればいいんですよぉ~。私は約束を守るつもりだったのにぃ~、無理やりご主人様に×××な事とかぁ~、ピーーーな事をされたって事にすれば万事解決じゃないですかぁ~」
「そんな事をしたら、私がマリスからの信頼をなくすだろ! さあ、帰った帰った!」
「いや~ん、みんなで気持ちよく3Pしましょうよぉ~。アハッ、3Pだけにあるかも知れないけどぉ~……きゃ~~~、痛い痛いぃぃぃ」

 最低のオヤジギャグにキレたのだろうか、無言で立ち上がった張遼ちゃんが、リルルの顔面をがっしりと掴んでギリギリと締め上げていく。アイアン・クローが見事に炸裂し、リルルの頭蓋骨がミシミシと嫌な音を立てる。鉄の爪の異名取った――昔懐かしの某プロレスラーを彷彿させる破壊力である。

「もう、張遼ちゃんは色々と固すぎだよぉ~、もっと柔軟に生きていこうよぉ~。アハッ、でもご主人様のケダモノチ●ポはぁ~、固い方が張遼ちゃんもいいよねぇ~……ぎゃ~~~、本当に止めてぇ~、頭蓋骨割れて脳みそバーンしちゃうからぁ~」

 張遼ちゃんは顔面を掴んだまま、リルルの体を宙に吊り上げていく。リルルの続けざまの下ネタに憤慨しているようだ。しかしながら凄まじい怪力である。私は、張遼ちゃんを本気で怒らせないように、心に誓うのであった。

「ち、張遼ちゃん、そろそろ許してあげようよ。それ以上やるとリルルがアホになっちゃうよ!」
「アホォ? アホちゃいまんねん、パーで……ムギュ~~~」
「はいはい、いい子だからリルル君は少し黙ろうね!」

 暴走の止まらないリルルを何とか部屋から追い出すと、私は大きな溜息を吐くのであった。

「張遼ちゃん、ゴメンね。最近のリルルは色々と多忙で、ストレスが溜まっているんだよ。思うところもあるだろうけど、許してあげてよ」
「主がそうおっしゃるならば許しますけど、リルル殿と随分仲がいいみたいですね。この前も、二人っきりで楽しそうにしているのを見ました」
「うっ! そんな事はないと思うよ。店舗の立ち上げ準備で色々とあって、問題解決で打ち合わせをしているだけだからね」
「……ダメですからね」
「えっ?」
「で、ですから、リルル殿ばかり構っているのはズルいです。もっと私の相手をしてくれないとダメですから……」

 唇を尖らした張遼ちゃんが、拗ねるように視線をそらす。普段とのギャップがあり過ぎる仕草が可愛らしくて、愛しさが込み上げてくる。私は張遼ちゃんを抱き締めると熱いキスを交わすのであった。


 その後も店舗のオープンに向けて多忙の日々が続いた。リルルの集めた職人たちが、大声を上げながら辺りに指示を出し、獣人たちが重そうな荷物を次々と運び入れていく。建物のリフォームも進んでいき、テュケー様から授かった元の世界の映画館は、今やバーを兼ねた立派な劇場へと変貌を遂げていた。入口は西部劇でお馴染みのウエスタンドアであり、建物の中にはお洒落なバーカウンターやテーブル席が並んでいる。そして奥にあるステージから客席に向かって花道が伸びており、所々にスポットライトや間接照明が取り付けられている。華やかな色や煽情的なライトが辺りを照らし、ゴージャス兼エロティックな雰囲気が漂っている。元々あった娼館も綺麗にリフォームされており、劇場でのショーが終了後、この建屋でムフフな事ができるようになっているのだ。

「う~ん、さすがリルルはセンスがいいな。だけど庶民には高級過ぎて、少しハードルが高いんじゃないか?」
「アハッ、他の娼館よりも割高にするつもりですけどぉ~、サービスが段違いなんですよぉ~。この世界では前代未聞のエッチなサービスもそうですけどぉ~、ハッキリ言って他店とは比べ物にならないぐらいにぃ~、酒は美味いしねえちゃんは綺麗だ――ってことですかねぇ~♪ それにエッチなショーを見るだけなら料金も安いですしぃ~、普通の娼妓なら手が届く料金設定ですよぉ~。あっ、それからエッチをする部屋も色々とこだわりましたぁ~。勿論、普通の部屋もありますけどぉ~、ペルシア風、和風、中国風の部屋もあるんですよぉ~。他にも変わり種で牢獄風とかぁ~、SM部屋もありますからねぇ~」
「う~む、リルルはエロに関しては非の打ち所が無いな……正に完璧の母」
「アハッ、ありがとうございますぅ~。ところでご主人様の方はどうですかぁ~」
「商館の方は、珍しい品物をそれなりに集めれば事足りるからね。リルルと比べると随分と楽だよ。それに道路の舗装や街路灯の設置も終わったし、リルルに頼まれた時計台ももうすぐ完成するからね。後は景気づけで、オープニングセレモニーで屋台や投げ餅もやろうと思っているんだよ」
「いいですねぇ~。屋台は私も便乗させてくださいよぉ~。あっ、それなら夕方までは商館のセレモニーを開催してぇ~、夕方から深夜は娼館のセレモニーを開催するのはどうですかぁ~?」
「それが無難かな。娼館のセレモニーを昼間やると、エッチなイベントに子供たちが紛れ込んで大問題になりそうだな。よし、それで行こう」
「アハッ、でも可愛い男の子だったらぁ~、私が筆おろししてあげてもいいんですけどねぇ~♡ 」
「……リルルには恥じらいと言うモノが無いのか?」
「クスクス、女というものはぁ~、下着とともに恥じらいの心をも脱ぎ去るものなんですよぉ~」
「やれやれ、エロに極振りされているリルルにも困ったものだな」
「あ~ん、そんなに褒めないでくださいよぉ~」
「褒めてないからね」
「あっ、忘れてましたぁ~、大事な報告があるんですよぉ~。マリスちゃんの研修が終了したのでぇ~、近いうちに会えますよぉ~。二人とも再会を待ちわびていたのでよかったですねぇ~。それから彼女には秘伝の淫技をタップリと仕込んだのでぇ~、約束通り実体験してもらいますからねぇ~♡ 勿論、私とのエッチも忘れてませんよねぇ~。アハッ、ノンストップで朝までエッチしてぇ~、溜まりに溜まった性欲の捌け口になってもらいますからぁ~♡ 」
「うぐっ! お手柔らかに頼むよ」
「ご主人様ぁ~、ヤッていいのはヤラれる覚悟のある奴だけですよぉ~。この前、ご主人様にギャグボールを嵌められてぇ~、両手を拘束されていいように弄ばれましたからねぇ~。次は私のターンですよぉ~♪ 楽しみにしていてくださいねぇ~。チュッ♡ 」

 リルルは妖艶に微笑むと、投げキッスをして立ち去っていった。残された私は、エロい期待に胸を躍らせながらも、一抹の不安を覚えるのであった。

 

 
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