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【PW】AD199905《氷の刃》
向く先 2
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『言葉の通りさ、アンタも見ていたあの一件、あれは蓮海を社会的に死んだと思わせる為に俺が仕組んだ事だ、岩倉の撃った銃は空砲でその音に合わせて蓮海が倒れただけだ、実際あの後も蓮海は生きていた』
その言葉に恵未の頭の中にあの日の出来事がフラッシュバックした。
鳴る銃声にその音ともに崩れ落ちる蓮海の姿。
唐突な吐き気に恵未は、口を手で閉じた。
『アンタはショックが強過ぎてその場で蹲り、岩倉は逃亡した。まぁみんな死んだと思い込んでたからな、だけど生きてた、なんせ俺がアンタの事を蓮海に頼まれたのその後だったんだからな』
「何で…そんな事をしたのよ…」
恵未がそう問うとハルは、押し黙った。
嬉しそうに彼にプロポーズをされた事を喜ぶ蓮海の笑顔を思い出し堪えていた涙がゆっくりと恵未の頬を伝った。
『俺のせいだよ…俺のせいで蓮海が命を狙われる様になった。最初は別れようしたが断られた…いや、違うな…俺は離れたくなかったんだ…アイツと…だから苦肉の策でその手を使った…』
先程までの軽々しい返事と違い、ハルの声は色んな重りを背負ったモノになっていた。
「それじゃあ、あの日まで彼女は生きていたの?」
恵未の問いに帰ってきたのは溜息と長い沈黙だった。
それだけで分かる。彼女は最後のあの日には、もうこの世に居なかった事を。
どうして?そう問おうとしたがその言葉は遂に恵未の口から出る事はなかった。
顔は知らない、だけど今ハルがどんな表情をしているか手に取る様にわかる気がした。
あの時もそうだ。岩倉を殺そうと自分の能力を消す為に手を掴んでいた時、マスクから覗くあの目。
似ていたのだ、蓮海が注意してきた時のあの目に…
「コラ、恵未?そんな風に考えたらダメだよ?」
どうしようも無く、落ちていたあの時。
優しく肩に触れながら彼女はそう言った。
優しく、何処か力強く暖かったあの目に。
「もういい、今度…落ち着いたら聞かせて、これからはお仲間になるんだし、会う事も話す事も増えるでしょ?」
『あぁ…まぁ会う回数的にはあんまり変わらないと思うがな』
恵未の切り替えの言葉にハルもまた一息つくと少しだけ軽い口調でそう言った。
後ろからチャイムの音が聞こえる。
『そろそろ、授業が始まるので切るな』
授業…会う回数が変わらない…まさか?
恵未がそう思うと同時に通話は、プツリと切れた。
「忘れてた、確か…ハルさんって結構せっかちだってよく愚痴ってたけっけ蓮海さん…」
恵未は、そっと独り言をボヤきながら携帯電話を鞄にしまうと空を見上げながら残りの紅茶をゆっくりと飲み始めた。
その言葉に恵未の頭の中にあの日の出来事がフラッシュバックした。
鳴る銃声にその音ともに崩れ落ちる蓮海の姿。
唐突な吐き気に恵未は、口を手で閉じた。
『アンタはショックが強過ぎてその場で蹲り、岩倉は逃亡した。まぁみんな死んだと思い込んでたからな、だけど生きてた、なんせ俺がアンタの事を蓮海に頼まれたのその後だったんだからな』
「何で…そんな事をしたのよ…」
恵未がそう問うとハルは、押し黙った。
嬉しそうに彼にプロポーズをされた事を喜ぶ蓮海の笑顔を思い出し堪えていた涙がゆっくりと恵未の頬を伝った。
『俺のせいだよ…俺のせいで蓮海が命を狙われる様になった。最初は別れようしたが断られた…いや、違うな…俺は離れたくなかったんだ…アイツと…だから苦肉の策でその手を使った…』
先程までの軽々しい返事と違い、ハルの声は色んな重りを背負ったモノになっていた。
「それじゃあ、あの日まで彼女は生きていたの?」
恵未の問いに帰ってきたのは溜息と長い沈黙だった。
それだけで分かる。彼女は最後のあの日には、もうこの世に居なかった事を。
どうして?そう問おうとしたがその言葉は遂に恵未の口から出る事はなかった。
顔は知らない、だけど今ハルがどんな表情をしているか手に取る様にわかる気がした。
あの時もそうだ。岩倉を殺そうと自分の能力を消す為に手を掴んでいた時、マスクから覗くあの目。
似ていたのだ、蓮海が注意してきた時のあの目に…
「コラ、恵未?そんな風に考えたらダメだよ?」
どうしようも無く、落ちていたあの時。
優しく肩に触れながら彼女はそう言った。
優しく、何処か力強く暖かったあの目に。
「もういい、今度…落ち着いたら聞かせて、これからはお仲間になるんだし、会う事も話す事も増えるでしょ?」
『あぁ…まぁ会う回数的にはあんまり変わらないと思うがな』
恵未の切り替えの言葉にハルもまた一息つくと少しだけ軽い口調でそう言った。
後ろからチャイムの音が聞こえる。
『そろそろ、授業が始まるので切るな』
授業…会う回数が変わらない…まさか?
恵未がそう思うと同時に通話は、プツリと切れた。
「忘れてた、確か…ハルさんって結構せっかちだってよく愚痴ってたけっけ蓮海さん…」
恵未は、そっと独り言をボヤきながら携帯電話を鞄にしまうと空を見上げながら残りの紅茶をゆっくりと飲み始めた。
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