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 二人が帰った後、三毛猫さんにまだ使ったことのないリボンを見せながらお城でのパーティーの事を話してみる。


まだ着けたことのないリボンを見つめながらニャン、と返事をしてくれる三毛猫さん。ありがとう、来てくれるんだね。ナデナデ。

三毛猫さんが来てくれるとわかると私の気持ちにも余裕ができる。

とりあえず、パーティーはまだ先だと思うからダンストン伯爵家のお仕事に戻ろう。

それから……ルークには大丈夫、とは言ったけれどマーサのことも気になる。

心は……心の傷は時間が経てば癒えるものなのか……
それとも……私にできることはあるのかな……

三毛猫さんが私の手におでこをスリスリしてくる。
私の癒し……可愛すぎっ……抱き上げてギュッとする。
いつも側にいてくれてありがとう。

動物が側にいることで癒される人も多いと思う。もしかしたらマーサにもいい影響を与えられるのかもしれない。

宿屋でマーサの好きな動物を迎えることはできるだろうか……そんなことを考えながら眠りにつく……


それから数日後、ウィルがマーサにプロポーズをしたこと、マーサがウィルのプロポーズを受けたことを寮に届いたルークからの手紙で知ることとなる。

「ウィル!」

休日、ウィルに会いおめでとう、と伝えると

「ありがとう、ノア。もう後悔しないようにすると言っただろう?」

嬉しすぎる! ウィル……幸せそう……
それから一緒に鉄の鍵へ向かいマーサとルークにも会いに行く。

「マーサ、おめでとう」

幸せそうなマーサ……

「ありがとう、ノア。何だか恥ずかしいわね」

そう言いながらも可愛く微笑むマーサはキラキラしていて……
これは生きていてくれたからある未来だ……

「あら……ノア、泣いているの? もうっ、それうちの両親と同じ反応よ」

フフフッと笑い私を抱きしめてからマーサはウィルのところへ行き話し始めた。
ルークが私の側へやってくる。

「マーサは……ウィルに結婚を申し込まれてからうなされることが少なくなった。もう大丈夫なのだろう……」

呟くようにそう言ってからすまない、と

「ノアに……俺達の知らない何かを……知られたくない何かを背負わせているんじゃないか……?」

ルーク……意外と鋭い……

「俺は……それを聞く勇気がない」

無いんだ……と小さく呟く。
もとより話すつもりはない。だから

「そんなものはないよ。今のマーサを見てよ。すごく幸せそう。私はそれが嬉しい」

ルークもマーサを見る。

「そう……だな」

そう言って泣きそうな顔で笑う。

ルークはウィルがマーサにプロポーズをする前にこの漠然とした不安を伝えたらしい。

話さない方がいいに決まっているとわかっていても万が一マーサの身体に何かあったのならウィルは知っておかなければならないと……

そして夜、うなされるマーサの声を聞くたびに膨らむ不安を一人では抱えきれなくなったのだとも言っていた。

ルークも一人で悩んでいたのか……

ウィルはこの話を聞いても気持ちは変わらなかった。むしろマーサへの思いは強くなったと言っていたと……

マーサとルークの不安は俺が預かる。

「俺はマーサが不安に思う暇がないくらい愛して愛して大切にする」

俺に任せておけ、と……ウィルーーッ!! 
なんていい男なんだっ……最初は軽い人だと思ってごめんなさい。マーサは男を見る目があるね……

「マーサの事はウィルに任せておけば大丈夫そうだね」

ルークにそう言って微笑むとあぁ、と微笑み返してくれた。

それからマーサにこっそりローズ様から今度三人でお茶会をしようと誘われた事を伝えた。
マーサも結婚式の日取りが決まったら二人にもお知らせするわね、と言ってくれた。

お姫様としてローズ様と会った後も変わらない付き合い方をするつもりのマーサ……ローズ様も嬉しいと思う……

それから、この日もみんなで楽しく食事をして私は寮へ戻った。


翌日、いつも通りクルクスさんを預りリアム様を見送る。

クルクスさんはだいぶ他の人にも馴れてメイドさん達にも可愛がられるようになっていた。

リアム様が学園から戻りクルクスさんをお渡しすると

「ノア……少し話がある」

とお部屋に呼ばれた。
かけてくれ、とソファーを勧められたのでリアム様がかけてから座る。

話って何だろう……? 

「茶会で会ったローガンを覚えているか?」

「はい」

私がひっぱたいた男の子だ。何か言われたのかな……

「その兄のカイル様も覚えているか?」

「はい」

あの笑っているのにちょっと怖い感じがする……

「今日、ローガンがカイル様からだと手紙を渡してきたのだが……」

なんか言いにくそう……

「……帰りの馬車で手紙を読んだのだがノアをクレメン侯爵家の使用人としてしばらくの間雇いたい、と……」

……え?

「もちろん断るつもりだが……」

私がローガン様をビンタしたから断りにくいのか……
これは……自分で撒いた種だな……

「この話はローガンも知らないらしい……秘密のまま来て欲しいと書いてあった」

サプライズでもする気なのかな……喜ばないと思うけれど……どちらにしろ断る訳にはいかない。

「リアム様、そのお話お受けします」

仕方がない。

「しかし……」

「大丈夫ですよ、しばらくの間ですから」

しばらくってどれくらいだろう?

「ノア……すまない、兄上にも話してはいるのだが……」

家格が上だもの……そう簡単にはいかないだろう……私に非があるのだし……
こんな事で優しいお二人を煩わせてしまった。
私が行くと言えば済む話だ。

「大丈夫です。クルクスさんもだいぶ人に馴れてくれましたし、ちょっと行ってくるだけです」

そう言って微笑む私に悔しそうな顔をするリアム様。

「なるべく……早く戻れるようにするから……」

キュン……リアム様が可愛い……

「リアム様……そんなに私の事を……」

嬉しいですっ、と手を握ると

「っな……ちがっ!」

はぁ……とため息をつき

「おまえはすぐにふざける……」

そう言って呆れた後、辛いことがあったらすぐに知らせて欲しい、と言ってくれたのではいっ、と元気よく返事をした。


そんな訳で……やって参りました、クレメン侯爵家。

ダンストン伯爵家の寮のみんなは行く必要はない、俺達も抗議するぞ、と言ってくれた。嬉しい……

でもみんなの仕事が失くなったら大変だからね、しばらくの間だからまた戻ってくるよ、大丈夫だからと言って三毛猫さんと一緒に出てきた。

それにしても……カイル様からの手紙にはカイル様に会うまではなるべく人目につかないようにって書いてあった。
だからフード付きのローブに身をくるんでフードもちゃんとかぶっているのだけれど……なんで?

屋敷には使用人の入り口があるから指定した時間ぴったりに必ずそこに来ること、とも書いてあった。

時間は守るけれど何なんだろう?

お屋敷の造りはだいたい似たようなものだから使用人用の入り口もすぐにわかった。
勝手に入るわけにもいかないし見られる訳にもいかないしで私はドアの前に立ち尽くしている……ちょっと早かったかな……?

バンッ

突然ドアが開き

「ノアか?」

「はい」

って……えっ? カイル様? なんでこんなところに?

驚いているとバサッと布にくるまれて担がれてしまった……

「大人しくしていろ」


って……えぇー…………何なの…………?


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