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しおりを挟む「それじゃぁ早速一緒にお風呂に入ろうか!」
なぜそうなる……入りませんよ。
「今夜は二人の初めての夜だね……良ければ城に……俺の部屋に来ないか……」
うっすら頬を染めながら何か呟いている。
そうだ……ザイダイバにもゲートは繋がっているんだった。
ん? それならセオドアが夜はお城に帰ればいいんじゃ……
「セオドア、夜はお城に帰ろうか」
ゲートをセオドアにも見えるようにする。
「そうか、来てくれるか!」
「セオドアもいつものベッドの方が寝やすいでしょ? お風呂もお城で入ればいいし。私はここか私の家で寝るし」
…………セオドアが動きを止める…………
「別……別……だと……?」
「うん。朝になったら鍵を開けておくから……」
「ちょっと待てっ鍵もかけるのか!?」
「? うん。セオドアも言っていたよね、危機感を持てって」
セオドアが完全に動きを停止した……と思ったらフッと笑い
「わかったよ。俺もトーカもこの部屋で寝る事にしよう。嫌がる事はしないから、何もしないからっ」
……こういう時の何もしない、はどうしてこんなに信用できないのだろう……でも思わず笑ってしまう、しかたがない……
「うん。毎日は無理かもしれないけれど……まだあったら簡易ベッドを入れよう、私はそっちで寝るから。信用しているよ、セオドア」
ニコリと微笑みそう言うと……そう言われると手を出しにくくなるのだが……と何かぶつぶつ言っている。
「ずるいなぁ、トーカは」
そう言ってセオドアも笑う。
簡易ベッドがある場所は聞いていたので見に行くとまだあったのでセオドアに部屋に運んでもらった。これでよし。
王子にこんな重いもの運んでもらって……セオドアのあの近衛兵二人に見られたら牢屋行きだな…………
とにかく、ひとまずこれでしばらく過ごしてみよう、という事になった。
翌朝、セオドアは意外にも早く起きてテキパキと身支度を済ませていた。
「お城にいる時と全然違う……」
髪を整えているセオドアを見て呟くと
「? 当たり前だろう、城ではないのだから。仕事もあるしね」
「セオドアってこういう仕事も出来るの? いつもは仕えられる側なのに……」
「出来るさ。一通りの事は子供の頃に教えてもらっているし、街での仕事も大体は出来るぞ」
セオドアって…………
「無駄にフラフラしている訳じゃないんだね……」
「失礼な……」
フフフッと笑いあう。
そう言えば……
「日焼け戻っていないね」
元は色白なはず……
「あぁ、ずっと外の仕事を手伝っていたからね、またしばらくはこのままかな。トーカは……その髪は切ってしまったのかな……」
髪を元の長さと色に戻すとセオドアが驚いている。
「そんな事も出来るのか?」
伸ばしっぱなしの長い髪に触れながら良かった、と言う。
「綺麗だから切るのはもったいない……」
そう言いながら髪を一房手にとり口付けをする……
……何で朝からこんな鼻血の出そうな空気を出すの……
髪の長さと色を戻して私も身支度をして一階へいく。
寮の中は人が増えてバタバタとしている。
朝食後はセオドアとは別になる。また夜にね、と言って見送った。
セオドアを見送るとアルとイーサンに
「ノア、……大丈夫か? 昨夜部屋で物音がしていたが……」
「あ、簡易ベッドを部屋に運んでもらったんだよ。それで部屋の物を動かしたりしたから……ごめん、うるさかったよね」
「いや、それならいいんだ。知り合いのようだけどレオンとの相部屋は本当に大丈夫なのかなと思ったんだ……マーサ達にもノアの事を頼まれているしな」
心配してくれているのか。
「ありがとう、大丈夫だよ」
そう言うと二人もホッとしたように微笑む。
二人と別れて三毛猫さんとクルクスさんと庭に出る。
しばらく遊んでいるとテオとトマスがやって来た。
「よぉ、ノア。少し手伝ってもらえるか?」
「もちろん。クルクスさんが一緒にいても大丈夫?」
大丈夫だよ、と言うので二人についていく。
「ノア、大丈夫か? レオンとの相部屋……」
歩きながらトマスがアルとイーサンとまったく同じ事を聞いてくる。
「大丈夫だよ、ごめんね、昨日うるさかったよね。簡易ベッドを部屋に運んでもらったんだ」
「いや……ノアが大丈夫ならいいけど……本当に付き合っていたとかそういう事は無いのかな……と」
……珍しくトマスが言いにくそうに話してくる。
「レオンは人当たりも良くて良いヤツみたいだけどもし別れたのにノアを追いかけて来たとかそういう事なら相談に乗るぞ……と……その……体格差もあるし……な」
なるほど、やっぱり心配されている……力ずくで何かされたら私では敵わないと思うよね……
「ありがとう、大丈夫だよ」
そう言って微笑むとホッとしたようにトマスも微笑む。
それにしても、突然現れた事と相部屋騒動で聞いていなかったけれどセオドアは何をしに来たのだろう?
今夜聞いてみよう。
庭仕事を手伝うとテオとトマスがクルクスさんを見てくれると言うので、少し早めに昼食をとることにした。
食堂へ行くと珍しくハリスさんとセドリックさんが座っていた。私に気が付くと一緒に食べよう、と誘ってくれた。
私も席に着くとハリスさんが
「ノア、レオンとの相部屋は大丈夫か?」
……皆さん同じ事を聞いてくる……セオドア……信用されていないのかな……それとも私だからか……
「大丈夫ですよ。昨夜は簡易ベッドを運び込んだのでうるさかったですよね、すみません」
「そうか、いや、大丈夫ならいいのだが……何かあったら言うんだよ」
ありがとうございます、ハリスさん。
「ベッドを別々にしたのか? ノアとなら一緒でも問題無さそうだが……本当に何もないのか?」
セドリックさん、私は他の人とでもベッドは別々にしますよ……
「えーと……いきなり誰かと一緒には眠れなさそうだったので…………」
「私の腕の中では気持ち良さそうに寝ていたのに?」
言い方っ! ハリスさんが誤解するっ
「い、いやぁ……あの時はお酒を飲んで酔っていたし……」
あれ? これでは……余計に誤解されない……?
「違うんです、ハリスさんっ。ソファーで寝てしまった私をセドリックさんが抱えて部屋まで運んでくれようとしただけで、セドリックさんと一緒に寝た訳では……」
そこまで言って気が付いた……何か笑いを堪えている二人……からかわれたっ!
「そんなに必死に誤解を解こうとするなんて……私は少し傷付いたよ」
全然傷付いて無さそうにそう言うセドリックさん……
「とにかくっ、私は大丈夫です」
「ごめんね、ノア。からかい過ぎたよ。私の部屋にはいつでも来ていいから。気持ち良く眠らせてあげるよ」
……だからセドリックさんは何か危険な感じがする。
男性にも女性にもモテそうなこの色気……
「万が一行くとしてもハリスさんの部屋に行くと思います」
「それは光栄だな。でもねノア、君はもう少し自覚した方がいいよ。どれ程の者達が君をそういう目で見ているか……私も例外では無いかもしれないよ」
そう言って獲物を狙うような目をして微笑むハリスさんにゾクリとする。
「すまない、怖がらせてしまったかな?」
ニコリといつものように微笑むハリスさんにホッとする。
「まぁ……セドリックはともかく、困った事があったら私の所に来てくれて構わないからね」
行ってもいいのかダメなのか…………
「……ありがとうございます」
それから食事をしながら聞いてみる。
「そういえば、お二人揃って食事なんて珍しくないですか?」
「そうだな、午後からイアン様が城へ行く事になってね。私達もイアン様に付いて出掛けるから主が食事をしている間に私達も済ませておこうと思ってね」
へぇーお城へ行くのか……
「イアン様はお城へはよく行くのですか?」
「城で茶会や晩餐会があれば行くこともあるが……」
ハリスさんが何か考えている……
「今回はどちらでもないから何だろうね。ただ、ダンストン伯爵家で行う茶会の来客リストを持って来るように言われているね」
セドリックさんが教えてくれた。
お茶会の来客リスト……確か今回は高位貴族も多く来ると言っていたけれど……貴族達の動向を知りたいのかな……
そういうこともあるのかなぁ……後でセオドアに聞いてみよう。
その後はクルクスさんの話しや乗馬のコツなんかを聞きながら昼食を済ませてそれぞれ午後の仕事へと戻っていった。
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