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しおりを挟む週末、三毛猫さんとお城へ向かう。
あの下着の一件とノバルトの顔がみたかった発言の後だから少し気まずいような気もするけれど考えないようにしよう。
ゲートをくぐると目の前に王妃様。
「お帰りなさい、トーカさん、ミケネコサンも」
た……
「ただいまぁ……」
「ニャーー」
まだ慣れていない……なんか照れる。
「まずはお茶にしましょう」
王妃様がニコリと微笑み一緒にお部屋へ移動してお茶をいただく。
今日は他の皆さんは忙しいのかな、と思っていると王妃様がそろそろかしら……と
「トーカさん、今日はお話しの前にこのドレスに着替えてちょうだい」
そう言われて渡されたドレスはシンプルだけれど刺繍が素敵な一着だ。
何かするのかな? 何も聞いていないけれど今日着てきたワンピースではダメなのかな。
とりあえず着替えると
「素敵! やっぱり似合っているわ! でも少し痩せたのではなくて? コルセットを着けずにこの細さは羨ましいけれど……」
心配だわ、とこちらを見る王妃様。
「レクラスで嫌な思いはしていない?」
お母さんみたい……
「嫌な思いよりもいい人達に会う事の方が多いです」
もしかしたらあの二人組に襲われそうになった事を王妃様は知っているのかもしれない。
私が傷ついていないか心配してくれているみたい……嬉しい。……でも痩せたりはしていない……
ホッとしたような少し不満そうな表情でそぅ……と言うと少しだけ寂しそうに微笑む。
「さぁトーカさん、行きましょう」
「はい」
ってまだ何も聞いていないけれど……
三毛猫さんと私は結界を張ったまま移動する。
外へ出て庭をしばらく歩くと王妃様に付いていたメイドさんが下がっていく。
「ここから先は王族と限られた人しか入れないの。お茶の準備も済ませてあるから誰も来ないわ。結界を解いても大丈夫よ」
私と三毛猫さんの結界を解き進んでいくと軽食やお菓子、お茶がセットされたテーブルが見えてきた。
誰か……いる……王妃様をみると頷き微笑んでいる。
その人物がゆっくりとこちらを振り向く。
「トーカ、やっと会えたわ」
「シュゼット様!」
フワフワのココさんを抱っこしたシュゼット様!
三毛猫さんとココさんがトコトコと近づいてご挨拶をしている。
私もドレスをつまみ淑女の礼をする。シュゼット様とのご挨拶を終えると王妃様がお茶にしましょう、と言い席に着く。
「トーカさんがゲートでザイダイバとリアザイアのお城を繋げてくれたからエライラとも時々一緒にお茶を飲んでいるのよ。お互いの国の情報交換が早く出来るから新しい事業の話も進んで助かるわ」
お役に立てて良かったです。
「久しぶりに会ったのだし今日はたくさんお喋りをしてね」
そう言って王妃様は席を立った。
二人になるとシュゼット様が微笑む。
「トーカ、会えて嬉しいわ。ザイダイバではたくさん助けていただいたのにちゃんとお礼も出来ずにごめんなさい」
そんなことはない。
「シュゼット様、改めましてご結婚おめでとうございます。レクラス王国でも話題になっていますよ、ザイダイバの奇跡」
「あれはトーカが……本当にありがとう。私とても幸せよ」
そう言って微笑むシュゼット様は元から綺麗なのになんかこう…………キラキラしている。凄い……恋って愛って……
こんなに綺麗になるのっ!?
ほぇーっとシュゼット様に見とれているとフフフッと笑われた。
「トーカは今レクラス王国に滞在しているのよね。そちらでの生活はどう?」
私はこれまでの事をお話しした。
男装したらなぜか男性にモテていることも……女性の姿では誰にも声をかけられなかったことも……
シュゼット様はお茶を一口飲みそれから……
「トーカ……好きな人はいる?」
シュゼット様がまぶしい……
「レクラス王国で声を掛けてきた方々が好きな訳ではないのでしょう? 確かにたくさんの人にアプローチされると自信にもなるかもしれないわ……」
でもね、と頬をうっすら染めて続けるシュゼット様。
「私も知らなかったのだけれど……自分が大切に思う人と……そのたった一人と思いあえるとそれ以上の自信で満たされるみたい……なの……」
可愛すぎか…………
「トーカに大切な方がいるのならその気持ちを大切に……今はまだわからないのならきっとこれから気がつくのかもしれないし……トーカの大切に思う方と幸せになって欲しいわ」
だから街での事を気にする必要はないわ、と。
人妻と……王妃様となったシュゼット様。さらに魅力的になられて……
そうだ、シュゼット様にも恋愛や結婚のことを聞いてみよう。
「ザイダイバでも一夫多妻や一妻多夫、同性婚もあるわよ。けれど、レクラス王国ほど多くはないわね」
やっぱりこの世界では当たり前の事みたい。
それからいろいろとお話しをしてザイダイバの皆さんも元気な事と近いうちに皆さんとお茶をしましょう、と言われた。
「セオドア様がトーカに会いたがっているわ」
事後処理と新しく観光地としての事業でエリアス陛下を手伝って忙しくしているみたい。
「うん。私も皆さんにお会いしたいです」
数ヶ月しか経っていないけれどとてもたくさんの事があったから何だか少し懐かしく感じる。
シュゼット様とたくさんお話しをしているとだんだんとうちの子自慢になる。
三毛猫さんとココさんを見ると聞き耳をたてているように見えてシュゼット様と笑いあう。
そうして楽しい時間を過ごしていると王妃様がノバルト達と一緒に戻ってきた。
シュゼット様と皆さんが挨拶をして
「私はそろそろ戻らなければなりませんわ。トーカ、ザイダイバへも遊びに来てね。あなたの為にお城はいつでも開かれているわ」
お城は閉めといてください。いや……きっと以前よりも国民の為に開かれたお城になっているのだろう。
三毛猫さんとココさんもお別れの挨拶をしているみたい。
王妃様がシュゼット様をゲートへ案内するために一緒にいなくなってしまった。
さてとっ! クルリと振り返りニコリと微笑み皆さんにご挨拶をする。
「トウカ、そのドレス良く似合っているよ」
ノバルト……ありがとう。
「また肌が綺麗になったんじゃないか? 髪も艶やかだな」
ノクト……あ、ありがとう。
「トーカの魅力はあんなのに頼らなくてもわかってしまうからね」
ノシュカト……あんなのとはアレの事かな?
「俺は……あんなのもいいと思う……」
オリバー……恥ずかしいなら無理しなくても……
みんな足並み揃えていこうぜっ!
ノバルト以外からは私に自信を持たせようといつもと違う思惑が感じられる…………気を遣わせてしまってごめんよ。
でも、もう大丈夫。
シュゼット様にいいお話しを聞いたし私の事を気に掛けてくれている人達もたくさんいる。
胸の奥が温かくなる。
「あのね、私幸せみたい」
エヘヘ、と笑う。
そうか、とノクトが言い皆さんも微笑む。
「それではお姫様、お茶会の続きをいたしましょう」
それから私は本物の王子様達と騎士団長様にお姫様扱いをされてめちゃくちゃ褒められ照れながらも、男性の仕草や男装した時に気を付けた方がいいことを聞いたりして楽しい時間を過ごした。
そろそろ帰ろうかと三毛猫さんを探すとノバルトに抱っこされていた。
三毛猫さんを抱いたままノバルトが私の側へ来ると髪に触れる。
「やはりトウカの色は美しい」
……ノバルトも美しいです。
私の髪を耳にかけその手を頬に添えながら
「ひとり占めしたいくらいだ……」
そう囁いて微笑むノバルト……
あ…………なんか満たされて…………
「ニャン」
ハッとして三毛猫さんを見るとノバルトの腕から私の方へ両前足を伸ばしている。可愛い。
ノバルトから三毛猫さんを受け取る。
「皆さん今日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「私達も楽しかったよ。またたくさん話を聞かせて」
そう言って微笑むみんなの顔を見るとジワリと胸が温かく……けれども少しだけ寂しいような……
そんな気持ちを悟られないように私もニコリと微笑みまた来ます、と言い三毛猫さんと一緒にお城を後にした……
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