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しおりを挟むアルバートとイーサンが私を見つめて……
クルクスは……と話し出す。
「リアム様がいないとご飯も食べなくなってしまうしリアム様が戻るまで姿を隠してしまうし……そんな事が続くとリアム様も外には出たくないと言い出すし……」
……思っていた以上に困っているみたい。
「リアム様は外でも色々と学ばなければいけないのに……この事はリアム様のご両親である伯爵夫妻も良くは思っていない。元々クルクスを引き取る事もリアム様が説得してようやくという感じだったから……このままではおそらくリアム様とクルクスは一緒にはいられなくなるだろう」
そうなの!? そんなこととは知らず……
「その仕事は伯爵家に住み込みなのよね?」
マーサが聞いてくれる。
「あぁ、お屋敷のすぐ隣に使用人用の寮がある。男女別で二棟ね。基本は一人部屋だ」
マーサとルークが顔を見合せてから私をみる。
「ノア、動物は好き?」
コクリ。
「貴族のお屋敷で働いたことはある?」
コクリ。
皆さん少し驚いている。
今度はマーサとルークがアルバートとイーサンをみる。
「お前達の好みのタイプは?」
「何だ? ルーク、突然」
アルバートとイーサンは戸惑いながらもそれぞれ答える。
「俺は昔から年上が好きだ」 アルバート。
「僕はふくよかな人が好きだな」 イーサン。
それを聞いたアルバートが胸の大きな、だろ? とからかっている。
マーサとルークが頷きあう。
「ノア、どうかしら?」
あんな事情を聞いたら断われない。とりあえずはクルクスさんにリアム様以外にも慣れてもらって、私が必要なくなった時また仕事探しをすればいいかな。
「お引き受けします。ただ、宿代を七日分すでに払っているのでお屋敷に伺うのは八日後でも大丈夫かな?」
「本当かっ!?」
すごく喜んでくれている。
「こちらも明日リアム様に話してリアム様から旦那様と奥様に話して頂いてからになるから八日後からということはお伝えしておく」
「もしかしたら旦那様と奥様がノアに一度お会いになるかもしれないからその時はお屋敷に来てもらえるかな」
アルバートとイーサンが嬉しそう。
リアム様の事が大切なんだね。生意気そうと思ったけれど、使用人とはいい関係を築けているみたいだ。
「うん。大丈夫だよ」
私が微笑むとアルバートとイーサンも嬉しそうに微笑む。
「二人ともノアの事、気を付けてあげてね」
マーサがそう言って街での出来事を二人に話している。
「ノア、良かったな」
ルークも嬉しそう。街に着いて絡まれたりもしたけれどいい人達にも出会えて良かった。
それからみんなで乾杯をしてお酒も飲んでいい気分で宿へ戻った。
マーサとルークはこれから帰って来る宿泊客の対応をするために仕事に戻っていった。
部屋に入ると三毛猫さんがベッドから降りてお出迎えしてくれた。
ただいま、と言い三毛猫さんを抱き上げて早速報告をする。
「クルクスさんのお世話係としてダンストン伯爵家で働くことにしたよ」
「ニャン」
「三毛猫さんも新しいお友達ができるね」
「ニャーー」
三毛猫さん可愛い。
よし、温泉に行こうかな。
一旦山の家に帰って三毛猫さんをキャットタワーに乗せて着替えを持って温泉に向かう。
サラシを取って髪を元の長さに戻す。
解放感…………!
全身洗って温泉に浸かり明日は何をしようかと考える。
そういえばレクラスの街で女性用の服を買っていなかったな。
明日は街に買い物に行こう。
そう決めて今夜は山の家のベッドで三毛猫さんと一緒に眠りについた。
翌朝、三毛猫さんと庭に遊びに来た熊さん親子とキツネさん親子と一緒に朝ごはんを食べてからゲートで宿に戻った。
三毛猫さんは今日は来ないみたい。
女性用の服を買いにいくと決めたので女性の姿で出掛けたいところだけれど、宿を出るときは鍵を預けて行かなければならない。
だから私は部屋の窓の鍵を開けたまま部屋を出て一階へ降りた。
朝はマーサとルークのご両親がカウンターにいるので鍵を預けて外へでた。
それからすぐに宿の裏に回り物陰に隠れて人がいないことを確認する。
結界で姿を消してフライで二階の部屋へ窓から入る。
この国の女性の服はまだ持っていないので外に出たらまた絡まれるかもしれない……
出来るだけ地味な感じで……髪も一つにギュッとまとめて前髪も少し長めにおろしてメガネも掛けておこう。
昨日の感じではこれだけではまた絡まれそうだけれど仕方がない。
準備をして窓に鍵を掛けられないので一応結界を張っておく。
窓から外に出て人気のない物陰で結界を解き歩き出す。
服装が他の国の物だからかやっぱりチラチラと視線は感じる。
前から歩いて来た男性がニコリと微笑み
「君、可愛いね。どこから来たの?」
やっぱり声を掛けられてしまった……と思ったら
「えっ……えーと」
私の後ろを歩いていた女性に声を掛けたみたい。
恥ずかしい。自意識過剰になっているのかも……
それから何人かそんな人達をやり過ごし気づいた事がある。
…………男装していた時の方がモテてたっ!
誰からも声をかけられなかった……何なら昨日しつこく声を掛けて来た人達ともすれ違ったのに素通りされた。
あれ? 見えていないのかな? 私結界解いているよね?
ま、まぁ? 面倒だからいいんだけどさ、かなり覚悟していたから肩透かしを食らった感じ。
人生で一番のモテ期が男装している時に男性からなんてどうしたらいいの……
フゥ……とりあえず買い物を楽しもう。
昨日行ったルークの友達のウィルのお店に行こう。女性の服も置いてあったし。
お店のドアを開けるといらっしゃい、とウィルが微笑む。
知っている人がいて少しホッとする。
お店の中をぐるりと見回しているとウィルが側に来て
「こんにちはお嬢さん。この街には着いたばかりかな?」
「はい。あの……服を何着か見繕っていただけますか?」
ウィルが一瞬ん? という顔をした。
昨日のルークを真似して頼んでみたから既視感を覚えているのかも……バレなきゃいいけど……
「きみ、兄弟と一緒に来ていたりする?」
? どうしてだろう? 首を傾げていると
「あぁ、いや、一人旅って言っていたしな……ごめん、気のせいだったみたいだ」
ウィルはニコリと笑って服だね、と言い
「りょーかいっ。少し待っていてね」
と服を探しに行ってくれた。
街を歩いている人達をみていると、男女共にゆったりとしたワンピースに腰帯を結んでいるスタイルが多い。
男性はズボンを中にはいていて女性もワンピースの他に上下に別れている服があったりする。
夜の街でみたセクシーなお姉さん達の服はやっぱり衣裳だったのかも。
お店の服をみて回りながらそんなことを考えているとウィルが服を何着か持って戻って来た。
今回は子供用のものはなかった。
試着をしてみるかい? と聞かれたので試着室に案内してもらった。
ワンピースを3着選んで他の服はウィルにお礼を言ってお返しした。
一着は着ていきたいと言い着替えてからお会計をして、残りの二着と着てきた服を袋に入れてもらいお礼を言う。
「ありがとうございます」
「こちらこそ、どうもありがとう。また来てね」
ヒラヒラと手を振り見送られる。軽い接客だなぁ……有難いけれど。
着替えをして外をブラブラしていると下着屋さんがあったので入ってみる。
可愛いデザインからセクシーな物まで……綿からシルクまで……女性って結構こういうので気分が上がったりするからなぁ……肌触りの良さそうな商品を目の前にして買わないなんてあり得ない。
一応私にとってはセクシーなデザインの部類のものを買っておこう。一応ね三セットくらい。腐るものでもないし。
別に今女としての自信を失くしているからではない……決して……
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