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 山の家に戻り三毛猫さんはやっぱり行かないらしいので一人で山の温泉へ向かう。

お湯に浸かり夜空を見上げる。


はぁぁ――――――――・・・・・・


ザイダイバに温泉を! と話をした後セオドアに俺達だけの温泉ではなくなるな、とコッソリ言われたけれど……ここは私だけの温泉になるかもしれない。

セオドアはわざわざ山を登らなくても入れるようになるからね。

この温泉を見つけた時、興味本位で土魔法を使い水脈を辿ってみた。
国境の街へ流れザイダイバの王都へ向かっていた。

その時はあんなに大きな争いが起こるなんて思っていなかったから、北国、温泉、お酒、最高! くらいにしか思わなかったけれど……


ザイダイバから戻る前にエリアス陛下とシュゼット様にお願い事を二つしてきたけれど大丈夫だったかな。


フゥ……身体の力が抜けてリラックスする。

今日は早めに休むため、温泉から家に戻って早めに布団に入った。

そして翌日。

私はトンネルの入り口から森を抜けてリアザイアの王都へ向かう道を整備しながら王城へ向かった。
こちら側でも王都へ向かう魔獣達を食い止めるために戦った後がある……

王城に着くとザイダイバから戻っていないノクト以外の王族の皆さんが揃っている。

「トウカ、よく来てくれたね」

先にリアザイアへ戻っていたノバルトが迎えてくれる。
私は早速気になっていた動物の子供達についてきいてみた。

「魔獣化してしまった動物達が多かったからその子供を保護する施設が足りなくてね」

やっぱり……

「だから教会に……孤児院の皆さんにもお願いをして教会の隣に保護施設を作ることにした。小型の動物達をそちらにお願いして、これまであった施設も広げてそちらで大型の動物の子供を保護することにしたのだよ」

孤児院の子供達にも手伝ってもらい、農家や街の皆さんにも協力してもらって余った野菜や果物など動物達が食べられる物を持って来てもらうらしい。

そうなんだ……良かった……

それからノシュカトに、リアザイアにはザイダイバ側で戦った騎士団ほどの大ケガをした者はいなかったけれどケガをした者はたくさんいる。

だからリライの雫を飲み水に入れてケガの治りを早めたと言われた。
リライの扱いはノシュカトにお任せしているからいいと思う。彼なら使い方を間違う事はないだろう。

それから私に手伝える事があれば何でもお手伝いさせて下さい、とお伝えした。

明日から……もうすでに皆さんにバレバレなお城のメイド、ノアに戻ろうと思う。

「ザイダイバから結婚式の招待状が届いたらお知らせするわね。トーカさんのドレスや必要なものは一緒に選ばせてちょうだい」

娘がいたらやってみたかったの、と嬉しそうに言われては断れない……というか結婚式とかどういう物を選べばいいのかわからないので助かります。


翌日、久しぶりのメイド服に着替えてメリッサメイド長にご挨拶に向かうとメアリも一緒にいた。

「長期休暇ありがとうございました。ただいま戻りました」

「お帰りなさい」

そう言って微笑む二人に何だか安心してしまった。
やっぱりここが落ち着く。

メアリが抱きついてきてメリッサメイド長に、はしたないですよ、と叱られエヘヘと笑う。
私も嬉しくなりメアリを抱きしめメリッサメイド長に呆れられる。

ザイダイバへ行く前の日常が戻りメイドの仕事をこなしていく。

ノクトとオリバー、騎士団の皆さんも無事に戻ってきた。

私は時々教会へお菓子を持って行き子供達と動物達に会いに行く。

教会では一応毎回神様に話しかけて見てるけれどやっぱりお返事はない……長期休暇か?

今回のことでジェイドの頑張りや我慢強さを認めたオリバーがもし興味があるのなら成人したら騎士団の入団試験を受けるよう声をかけているらしい。

これからは入団試験を受ける平民が増えていくかもしれない。

ザイダイバから結婚式の招待状が届いて、王妃様と結婚式に必要な物の買い物をした。

週末にはマナー教室やダンスレッスンも継続して学ばせて頂いて何だかんだ忙しく過ごしているとあっという間に結婚式の日が近づいてきた。

リアザイアからザイダイバまではトンネルを使い馬車で向かうと山を抜けるのに2日、国境の街からザイダイバの王都まで3日。道を整備したからもしかしたらもう少し短縮できているかもしれないけれど最短で5日程あれば着くようになった。

今回は、トンネルやザイダイバが温泉をどのようにしたのかを見ながら向かいたいと言うことで王族の皆さんはゲートは使わずに結婚式の1ヶ月前に馬車でザイダイバへ向かい出発していった。

私も結婚式の1週間前に三毛猫さんと一緒に空からザイダイバへ向かう。トンネルの中も通ってみたけれどラムパはちゃんと明るい。

私が温泉を掘った場所はどちらも街になっていた。

降りて見ると宿屋に食べ物屋、服屋に雑貨屋などが建ち並びそれぞれ高級からカジュアルまで取り揃えている。
貴族も平民も滞在できる観光地として申し分ない感じ。

温泉の説明の看板も出ていてわかりやすい。

この短期間で街を完成させるなんて凄い! 街の人達の話を聞いているとどうやら騎士団の皆さんや領主や他の貴族も積極的に手伝っていたみたい。

エリアス陛下が言っていた通りあの争いの後、国中の団結力が高まっている。

再び三毛猫さんとザイダイバの王城へ向かい、到着後リアザイアの皆さんと合流する。

ザイダイバの王族の皆さんとシュゼット様にもご挨拶をする。
今回はセオドアの弟、第三王子のルシエル殿下もご一緒で初めましてとご挨拶をする。
私のことは陛下からも聞いているようですぐに受け入れてもらえた。
三毛猫さんもココさんとご挨拶をして遊んでいる。

「トーカ、よく来てくれたわ」

シュゼット様が微笑む。

「温泉の街を見て来ました。とても素晴らしかったです」

「ありがとう、トーカにそう言ってもらえて嬉しいわ」

「来てくれてありがとう。君の願い通りあれから今まで顔は隠さずに過ごしていたよ」

と、エリアス陛下。


そう、これが私がリアザイアに帰る前にお二人にお願いした事の一つ目…………



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