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ドォォォ――――――ン!!
ドドォォォ――ン!!
温泉、掘り当てちゃいました!
そう。これがお二人への……ザイダイバ王国への贈り物。
温泉があれば最初は小さいかもしれないけれどここにも街が出来るだろう。
宿泊施設も出来てトンネルを……この道を利用する人達が休んでいく。
ザイダイバにも薬草は生えているから植物の研究者と協力して薬湯にするのもいいと思う。
湯治と言う言葉も広まれば長期で滞在する人達も増えるかもしれない。
リアザイアの皆さんからザイダイバの事を教えてもらった時、北に位置するザイダイバは他の国よりも土地が痩せているのか作物が育ちにくく貿易となると立場が弱くなる。
だから兵を派遣する事で他国からのお金の流れを作っているときいた。
私はザイダイバを温泉と薬、癒しの国として評判を広めていくのはどうかな、と思った。
寒くなり雪が降るなら雪の中で入る温泉の良さも知ってもらえるし、雪まつりというイベントを行えば子供達も楽しめるだろう。
温泉たまごが名物になるかもしれないし、美容にいいと聞けば女性にも人気が出ると思う。
温泉成分の化粧水やクリームなども開発出来たら売れるかもしれない。
これからは危険な場所に兵を派遣するのではなくこの国に人を呼び込んでいく事が出来るのではないかという風に皆さんにお話をした。
温泉の無限の可能性に興奮して話してしまったから少し引かれてしまったかもしれないけれど、ザイダイバの皆さんは喜んでくれた。
私は温泉を掘り当てるので、掘る位置とそこをどうするのかはエリアス陛下にお任せする事にした。
エリアス陛下が決めたこの場所にあといくつか温泉を掘りさらに王都に向かったところにもう一ヶ所同じような場所を作る。
国境の街にも後で温泉を掘り、宿を経営している方や街の住人に管理をしてもらおうと思っている。
これでトンネルを利用してザイダイバへ向かう人やザイダイバからリアザイアへ向かう人達がゆっくりと旅を楽しむことも出来るようになる。
東西の国からの商人も増えると思う。彼らがザイダイバの商品を買い付け広めてくれるだろう。温泉の評判も。
結婚式の準備と平行して温泉周りの整備は大変だけれど、他国の方々も集まる結婚式に間に合えばいい宣伝にもなる。
国民の力も借りて進めていくとエリアス陛下は言っていた。その場所で商売を始めたい人達も募集して街作りの意見も出してもらうみたい。
そして一仕事を終えた私はリアザイアの王妃エイベル様とザイダイバの前王妃エライラ様とシュゼット様と一緒にお茶を飲んでいる。いわゆる女子会である。
リアザイアの陛下とノバルトはゲートで先にリアザイアへ帰りノクトはオリバーと騎士団の元へ行きノシュカトは植物研究室へ向かった。
「エイベル、トーカさん、改めてこの国の危機を救ってくれてありがとう」
エライラ様とシュゼット様が頭を下げる。
「エライラ、私達は今でも感謝しているのよ。20年程前ザイダイバが私達を救ってくれた事を。あの時の魔獣の大発生で皆本当に疲れきっていたの。そんな状態で他国から攻められたら確実にリアザイアは滅んでしまうと思い、どこにも助けを求めることが出来なかったわ」
それなのに……
「エライラ、貴方と当時の国王だったエリオット様が貴族や国民にお願いしてくれたのでしょう?」
確か王妃様とエライラ様は親戚だと言っていた。
けれど国同士の事となるとそれだけでは弱いとも……
エライラ様がニコリと微笑み私とシュゼット様に昔話をするわといい話始めた。
「私がリアザイアに住んでいた頃……エリオット様と結婚をする前、私には親同士が決めた婚約者がいたわ。貴族にはよくある話だしそういうものだと思っていたの」
両親はとても条件のいい人を探してくれたのだと思うわ……
少し寂しそうに話すエライラ様。
「王城に勤める父に届け物をする事があってね……いいえ、本当は私が王城の図書館に行きたがっている事を知っていて父がわざと私に届け物を頼んでいたのだと思うわ」
そう言って懐かしそうに微笑む。
「そこで私はリアザイアに外遊に来ていた……エリオット様と出会ったの。衝撃的だったわ、フフフッ男性を美しいと思った事は初めてだったのだもの。それに読んでいる本も同じだったのよ」
確かに、私もエリアス陛下をエルフかと思ったくらいだ。
「私達は恋をしたの。けれどまさかお互いの大切な人達にあんなに反対されるとは思っていなかったわ」
よりにもよってザイダイバ! こんなに恵まれたリアザイアからあんな国へ行ったら苦労するのは目に見えている!
大人しく婚約者と結婚した方が幸せになれるのだぞ!
他国から来た妃が真剣に国民を思ってくれるとは思えない! 目を覚まして下さい! きっと我が国の金を使い尽くされるに違いない!
「皆さん心配して言ってくれたのでしょうけれど当時はとても傷ついたわ。けれどもエイベル、貴方だけは私達の味方でいてくれた」
他国から妃を迎える事は確かに不安もあるでしょう。
けれどもエライラは他国について学んでいるし、ザイダイバに関してはより深く考えていくわ。
愛がないのならお金も使い尽くすでしょうけれど、愛する人の愛する国を傾けるような事をするでしょうか。
それに、恵まれた国にいる事と愛する人の側にいる事、どちらが幸せかは本人が決めることよ。
ザイダイバが恵まれていないというのなら恵まれているこの国が手を差しのべたらよろしいのではなくて?
わかっていて何もしないような国の民に私はなりたくはないわ。私もエライラと一緒にザイダイバに行こうかしら?
「エイベルあなた、王族や大勢の貴族の前でそう言ったわね」
あの時の皆さんの慌てよう……クスクスと笑うエライラ様。
「エイベルには先読みの力があると今でも信じている貴族がいるくらいですもの。当時から貴方の発言力はかなりあったわ」
ちなみに後のリアザイア国王となるノイガルト陛下はこの時エイベル様に惚れたらしい。
「私達はね、あれからずっと幸せなのよ、エイベル。だから何かあった時は必ず力になろうと夫と決めていたのよ」
この言葉……エイベル様も言っていた……
「あら、それを言うなら子供の頃…………」
お話が続く中、私とシュゼット様は顔を見合わせてクスリと笑う。
大切な思いはこうして繋がっていくんだね。
私もこれまで助けてくれた人やこれから出会う人達ともこんな関係が築いていけたらいいなぁ。
素敵なお話をたくさん聞いてお茶会はお開きになった。
王妃様とノシュカトはゲートで一足先にリアザイアへ戻ることになった。
ノクトはオリバーと共に騎士団と一緒に帰ることにしたらしい。
私は三毛猫さんと空から山の家に帰ることにした。
結婚式の時にまた会う約束をして、私達はザイダイバ王国を後にした。
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