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しおりを挟むセオドアと話をした翌日、エリアス陛下とシュゼット様がお見舞いに来てくれた。
エリアス陛下は顔を隠さず、シュゼット様はココさんを抱っこしている。
「トーカ、体調はどう? いろいろと無理をさせてしまってごめんなさい」
「私からも礼を言うよ。君のお陰でシュゼットのご両親も私の両親も元通り回復したよ。ありがとう」
お二人に頭を下げられて慌てる。
「こちらこそ、いろいろとお世話になりました。体調はもう大丈夫です。ゆっくりと休ませていただきました。ありがとうございます」
と私も頭を下げる。
「シュゼット様、ココさんも元通り元気になりましたし、シュゼット様のお屋敷ももう安全なのでこのままココさんをお返ししますね」
ちょっと寂しいけれど……三毛猫さんもココさんにご挨拶している。
ノックが聞こえて、エリアス陛下のご両親とセオドア、リアザイアの皆さんとオリバーも来てくれた。
「オリバー…………お帰りなさい」
「ただいま、トーカ」
優しく微笑むオリバー…………ちゃんと帰って来てくれた……よかった……
「騎士団にリライのあめ玉を配って全員の回復を確認してから王都へ戻ってきたんだよ。リライの事は口外しないよう約束してもらったし、トーカのことも話してはいないよ」
ノシュカトが教えてくれた。
まだ騎士でいられる……と皆に泣いて感謝されたけれど何だか居心地が悪くて……
「本当ならトーカが感謝されるはずなのに……」
ノシュカトにはそう言われたけれど……
「それでいいと思う。私がいなくてもいずれノシュカトがリライを見つけて研究をしていたでしょう? これからも研究を続けていくのだし……少しだけ実用化が早まっただけだよ」
ありがとう、と儚げに微笑むノシュカト……
「トーカ、我々両国の王族間でトーカに関する事の秘密保持誓約書を交わしたよ」
陛下……そんなことをしなくても皆さんの事は信用しているけれど、私の事以外にもこういう事はいくつかあるみたい。
口約束だけでは受け継がれていくうちにうっかり……なんてこともあるかもしれないからこういう事はちゃんと書面でも残して王族のみが出入りできる秘密の書斎的なところにしまっておくらしい。
それから私は私と三毛猫さんが別の世界から来たことや魔法が使えるようになった事など全て話した。
リアザイアの皆さんもそれぞれ私の事を話してくれて、最後はやっぱり魔法を見せた。
ゲートの説明もしてココさんのお部屋とシュゼット様のご両親のお部屋、使用人部屋とお城でも勝手につくったゲートは全て閉じた事を伝えた。
リアザイアの皆さんのお陰で驚かれはしたけれど、怖がられることも警戒されることもなくてホッとする。地味に傷つくのよ……
シュゼット様がエリアス陛下とセオドア、先王ご夫妻と何かお話をしてからこちらを向く。
「トーカ、もし良ければこのお城とトーカのお家もリアザイア王国のお城と同じようにゲートで繋いでもらえないかしら……その……お友達としていつでも会えるようにしてくれると嬉しいのだけれど……」
凛とした表情から恥じらうような表情に変わっていく……何だこれ……可愛過ぎかっ!
このお城とっていう事は、王妃様になってもお友達として会えるということか……嬉しい。
それならば……と
「もし良ければザイダイバとリアザイアのお城もゲートで繋ぎましょうか」
そう言うと両国とも喜んでくれた。
それから
「あのトンネルの整備を私にさせてもらえませんか。かなり大きくて長いトンネルなのでしっかり補強した方がいいと思います」
きっとこれから先ずっと両国を繋いでいくトンネルだからしっかりと補強しておいた方がいいと思う。
「こちらはありがたいけれどトーカの負担にはならないのか? シュゼットの大切な友人に無理はさせられないのだが……」
大切なシュゼットの、では? 思わずにやけそうになる。
「私は大丈夫です。今回は魔法ではなくおそらく精神的な疲れから熱が出たのだと思うので」
それと
「トンネルは長くて暗いのですが、何か明るく出来るものはありますか?」
皆さんが考え込んでいると
「あ。ラムパ」
ラムパ? ノシュカトが言った事が何なのかわからなくて聞いてみると
「ラムパは暗闇で発光する植物だよ。街でも加工して明かりとして使っているけれど、たくさん植えれば十分な明るさになる。元々暗いところに一年中生えている植物だしね」
皆さんが頷く。
「それではトンネルの整備補強をするときにその植物も天井と道の左右に植えていきますね」
明日にでも早速やってみよう。
それからもう一つ。
「エリアス陛下、シュゼット様、ご婚約おめでとうございます」
エリアス陛下とシュゼット様は幸せそうに微笑んでいる。
「ありがとう、トーカ」
優しい笑顔……きっとこの国は良くなっていくと予感させてくれる……
よしっ! 決めた! 婚約祝いを贈ろう。というかずっと考えていた事を婚約祝いとして贈らせてもらおう。
そう決めて話した内容にエリアス陛下とシュゼット様は驚いて絶句。
セオドアとノクトは爆笑。
ノシュカトとオリバーは少し心配そう。
両国のご両親はまぁ、と驚き、素敵ね、と喜んでくれた。
それぞれさまざまな反応を見せてくれて私は満足。
そういう訳で翌日、私は結界を張りフライで三毛猫さんと共にトンネルへ向かった。
これまでたくさんの人達が堀り続けてきたトンネル。
いろいろな思惑はあったかもしれないけれど、これからは両国を繋ぐ大切なトンネルだ。しっかりと作っていこう。
トンネル内部の歪な部分を綺麗にしていく。道路も平らに整えながらラムパを植えて増やしていく。
今凄く異世界で活躍している気がする。誰も見ていないけれどっ! いいんだ……三毛猫さんが見てくれているもん。
三毛猫さんはラムパの葉にじゃれついている……おーーい……
…………よしっ! 先へ進もう。
全てのトンネルの整備補強が終わる。
この先このトンネルを使いたくさんの人達が行き来する。
今回は私が補強したけれど、この先私がいなくなっても大丈夫なように皆さんに考えてもらわないと……でも……皆さんならもう考えているかな……三毛猫さんを撫でながらそんなことを思う。
そしてもう一仕事。
お二人への、この国への贈り物。
国境の街から王都へ向かう道も整備しながら進み途中で止まり三毛猫さんと地上に降り立つ。
意識を集中して探る。そして……みつけた。
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