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 夜会当日。


三毛猫さんとココさんにリボンをつけてあげて鏡を置いておくと、三毛猫さんは毛繕いをしながらも鏡をチラッチラッとみている。フフフッ

ココさんは鏡の前に座ってゆっくりと尻尾を振ってじっとリボンを見つめながら顔の角度を変えたりしている。可愛い。

「とっても似合っているよ!」

「「ニャ――」」

か、可愛っ! みんなにも見て欲しいけれど……

結界張りま――す……

夜会が始まる前に三毛猫さん達を迎えに来ようと思ったけれど、私が家を出る時間に一緒に行きたがったからザイダイバのお城にはみんなで向かった。

お城の探検でもするのかな? と思ったけれど三毛猫さん達は私の側にいてくれた。

お風呂で丸洗いされたりマッサージされたりしている私を見て三毛猫さんはソワソワと行ったり来たりして大丈夫なの? という視線を送ってくれる。

ココさんはシュゼット様で見慣れているのか落ち着いている……こんなところでセレブを感じるとは……

そして今回もコルセットは辞退させていただく。

「元々細くていらっしゃるので問題ありませんが更に細く美しく見せられるのですよ? よろしいのですか?」

いいのです。メイドさん達の腕とドレスとアクセサリーで充分変われるので私はそれで満足です。

そうメイドさん達に伝えると諦めてくれた。

今回は夜の空の様に深い青色のドレスに小さな……宝石かなぁ……ガラスだと思おう……カラフルなキラキラしたキレイな石が散りばめられている素敵なドレス。

メイドさん達とドレスを見てキャーキャーと盛り上がる。

なんか……ドレスってどんどん増えていくなぁ……

前に晩餐会やお茶会で頂いたドレスを着回してはいけないのかなと思っていたらメイドさんにドレスはそれぞれシチュエーションにあったものがありますから、と言われた。

あれ……声に出ちゃってたかな。それにしても……

「胸元と背中開きすぎじゃない?」 

「夜会だからこれくらい普通ですよ」

そうらしいです……お喋りをしながらドレスを着させてもらい姿見を見せられてまたしてもメイドさん達の腕に驚く。

三毛猫さんとココさんがトコトコとやってきて私を見つめてニャ――と鳴く。キレイだよ、と言われた気がして嬉しくなる。

メイドさん達には見えていないし聞こえてもいないからあまり変な動きは出来ないけれど……激しくナデナデしたいっ。


私の大変身が終わる頃には日が沈み着飾った貴族達が集まり始める。

コン コン コン

ノックがしたのでセオドアが来たのかと思いどうぞと言う。

「トウカとても綺麗だよ。ドレスもよく似合っている」

入って来たのはノバルトだった。

今回のドレスはノバルトが用意してくれたらしい。

「ノバルト、素敵なドレスをありがとう。ノバルトも凄く素敵だよ」

ただでさえ派手な容姿にビシッと正装をしてマントまで着けていて……全身で王子です、と自己紹介しているよう。

そんなノバルトに耳元で

「トウカの元の髪色と瞳の色にも似合うと思う。後で見せて欲しい」

そう囁かれて顔が熱くなる。

ニコリと微笑むノバルト。

「今日は私がエスコートするよ」

そう言って肘を曲げて私が手を添えるのを待っている。

今日は三毛猫さんとココさんもいるし何だか恥ずかしい。

けれどもあまりお待たせするわけにもいかないからノバルトの腕にそっと手を添える。

こちらを見てニコリと微笑むノバルトがまぶしい。

三毛猫さんそんなにじっと見つめないで、照れちゃう。

ノバルトと三毛猫さん達と部屋を出て会場へ向かう。


扉が開くと広いホールの両サイドには食べ物や飲み物、テーブルと椅子が数ヶ所に置いてあり、皆さんは飲み物を片手に楽しそうにお喋りをしている。

華やかな空間に華やかな男女……と、突き刺さる視線。

でも今日の私には三毛猫さんが付いている。

背筋を伸ばして堂々とする。三毛猫さんをチラッ。

三毛猫さんも胸元のリボンを皆さんに見せるように堂々と歩いているけれど……誰にも見えてないんだなぁ……そんな三毛猫さんが可愛いよ。

ココさんはシュゼット様を見つけてそちらへ走って行ってしまった。

シュゼット様にも見える様に出来るけれどこの可愛さに耐えられるかな……ポーカーフェイス……王妃教育も受けているから大丈夫かな。

とりあえずまずはエリアス陛下にご挨拶をする。今日もお顔を隠していらっしゃる。

それからノバルトにシュゼット様とご挨拶がしたいと言うと一緒に来てくれた。

シュゼット様は今日もお美しい。

深紅のドレスがとてもよく似合っている。

ティナ様は柔らかいクリーム色のドレスで可愛らしい顔立ちによく似合っている。

シュゼット様がノバルトにご挨拶をすると続いてティナ様もご挨拶をする。コリンヌさんは……やっぱりいつの間にかいなくなっている。

ティナ様がノバルトにご挨拶をしている間にシュゼット様にそっと伝える。

「実はココさんと三毛猫さんも一緒に来ているのです」

そう言ってシュゼット様にも見える様にすると、ピシッと一瞬硬直した後いつも通りの振るまいに戻る。

耐えたのですね……シュゼット様。さすがです。

お互いコクリと頷きあう。

ココさんはその後シュゼット様に付いて行くことにしたらしく三毛猫さんと鼻先を合わせてから私の足元にスリスリして、いってきますをして行ってしまった。

シュゼット様とティナ様と別れた後は怒涛の挨拶ラッシュッ。王子様って凄いんだなぁ……さらに独身ともなると……ノクトとノシュカトにもたどり着けない。

華やかで綺麗なドレスに囲まれた王子様……皆さん慣れたもので笑顔で次々と挨拶をこなしている。ノシュカトだけ少しずつ目が……頑張ってと応援したくなる。

私はノバルトの隣にいるとお隣の方は……と必ず聞かれてしまうと思い、シュゼット様とのご挨拶の後は囲まれる前にそっとノバルトの側から離れておいた。

音楽も流れてきて挨拶の終わった方々は皆さんお喋りに花を咲かせている。

私も何か飲み物を頂こうかと思い移動しようとした瞬間、ホールの扉がバンッと乱暴に開かれた。


みんなが静まり帰り注目するなか、1人の騎士様が息も絶え絶えに言った。


「リアザイア王国が……落ちましたっ……」


リアザイア王国が落ちた…………?


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